2012年 仙人の会5月例会発表


日時:5月20日(日)  14:00〜18:00

場所:法政大学大学院棟(92年館)3階301号室
 JR中央線・地下鉄南北線飯田橋あるいは市ヶ谷駅または  JR中央線・地下鉄南北線/有楽町線/東西線飯田橋駅下車、徒歩約10分
 現地へのアクセスについては、こちらをご覧ください。
   交通アクセス(市ケ谷)(Copyright (c) Hosei University)

発表者:吉田 佳世涼氏(首都大学東京大学院 人文科学研究科 博士後期課程)

発表題目
 沖縄本島・金武町の軍用地料配分闘争における女性たちの戦略

要旨
 沖縄本島北部金武町金武区では、2002年、区在住の女性26名が、村落共有地である杣山(そまやま)の入会権を求めて那覇市地方裁判所に訴訟を起こした。杣山訴訟と呼ばれるこの裁判の背景には、共有地のうえに建てられた米軍基地から生じる莫大な軍用地料が関係している。当時、共有地の軍用地料は、共有地の財産を管理する部落民会の入会権会則に基づき、戦前の金武区民の男子孫が戸主となる世帯に配分されており、他方、他地域出身の男性と婚姻を結んだ女子孫はこの配分金をえることができなかった。この会則は、民法における「慣習」にあたるものとして位置づけられており、沖縄の祖先祭祀における財産継承制度や性役割を利用したものであるといえる。それは、位牌・地位・家名・土地などの財産が男性ラインをつうじて継承されることによって集団が維持される一方、女性は継承者にはなりえず各種儀礼の実質的運営を担う存在として位置づけられるというものである。
 しかし、この杣山訴訟は、入会権会則を“伝統的”制度――いわばその地域の本質的なもの――として位置づけた上で、それに対して男女平等という近代的価値観を身につけた女性たちが批判を加えるという、いわば近代化のプロジェクトとして一面的に理解されてきたという問題点がある。そこでは入会権会則が果たして民法における慣習に該当するものであったのかという問いや、当事者女性たちの訴訟の動機や会則の根拠となってきた祖先祭祀をどのように捉えているかという問題はほとんど触れられてこなかった。そこで、本発表では、関係資料と聞き取り調査で得た資料をもとに、当事者女性たちの“伝統”に対する意識を明らかにするとともに、その後の金武町に暮らす女性たちの軍用地料配分での戦略的実践をみることで、訴訟という枠組みの中で行われた社会運動の功罪を考察していくことにしたい。

※6月例会は、加藤敦典さん(東京大学)と伊藤未帆さん(日本学術振興会特別研究員PD)にご発表いただくことを予定しております。
 詳細につきましては決まり次第お知らせいたします。

 本会では発表希望者を募集しております。
 発表者には懇親会費無料の特典つき。
 発表希望または例会についての問い合わせは幹事までお願いします。
 sennin.no.kai@gmail.com(←@を半角にしてください)

なお、メーリングリストで送られてきたメッセージにそのまま返信しますと、 会員全員に配信されてしまいますのでご注意ください。