2012年 仙人の会4月例会発表


日時:4月28日(日)  14:00〜18:00

場所:早稲田大学戸山キャンパス31号館302教室
・JR山手線・西武新宿線高田馬場駅より
都営バス「早大正門行き」、馬場下町下車 徒歩2分
・地下鉄東西線早稲田駅下車 徒歩5分
・都電荒川線早稲田駅 徒歩9分
※例会会場がいつもと異なっておりますのでご注意ください。
 現地へのアクセスについては、こちらをご覧ください。
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発表者1:高 塔娜氏(早稲田大学文学研究科 博士後期課程)

発表題目
 多元的医療システムにおける患者の「受療行為」−中国内モンゴルフルンボイル地域を事例に−

要旨
 現在、内モンゴル地域は多くの社会と同様に複数の医療システムが並存している。すなわち、 西洋医学に基づく近代医療と、古くから営む伝統医療学である。政治制度によって、近代的な 医療機構が医療システムに優先的、あるいは独占的に位置づけられることはしばしば見られるが、 伝統医療が完全に社会から駆逐されることはない。中国の場合、伝統医療は正規な医療システムとして存在し、人々に医療サービスを提供している。
 医療システムの多元性が見られる内モンゴル 社会において、近代医学・伝統モンゴル医学・中医学・民間医学など複数の医療体系が絡み合って存在し、人々に多くの治療する選択肢を提供している。その一方、 経済発展による医療設備の改善と個人収入の増加に伴い、医療費を年々増加させる傾向がある。安価な医療費で効果的治療を受け ることが社会の人々にとって切実なことである。こうしたことを背景に本発表では、現地の人々の「受療行為」に着目し、彼らがいかに治療方法を選択し、医療システムを利用していることを関心テーマにした。人間の「受療行為」は 病気概念を依拠する行為である。患者である利用者が医療システムをいかに使用することは、性別・年齢・民族・社会階層・経済収入・医療保険制度・文化的アイデンティティ等多くの社会的要素に左右されると考えられる。しかし医療人類学の先行研究では、患者の医療システムの利用パターンに関してまだランダムされていないのは現状である。内モンゴルの人々の「受療行為」を影響する要素を明らかにすることは、医療、保険システムの組織や体系のあり方を明確にすることばかりではなく、患者の健康と文化的アイデンティティの問題を探ることにも繋がるだろう。本発表は、主に 2011年7月から9 月にかけて、発表者が調査地の患者対象をインタビューしたデータに基づいたものであり、フルンボイル地域の医療システムのあり方を整理しながら、人々の病の発生と治癒過程に注目し、多元的医療システムにおける患者の「受療行為」、つまり医療システムの利用パターを探ることを試みた。


発表者2:寺尾 萌氏(首都大学東京大学院 博士前期課程)

発表題目
 モンゴル国における伝統的歌謡実践の変容と歌のポリティクスに関する一考察

要旨
 今日、「民族音楽」や「民謡」といった語で表されるような伝統的な歌謡実践は、社会が変化するとともにそのあり方やかたちは変化している。モンゴル国においては、社会主義時代に急速に国民国家としてのモンゴル国を建設しようとした文化政策や、社会主義時代の終焉を経た今日新たに「モンゴル性」を「取り戻そう」とするナショナリズムが、新しい歌謡のあり方を生みだし、またローカルレベルでの伝統的な歌謡実践のあり方にも大きな影響を及ぼしている。このような動向に対して、モンゴルの歌研究においては特定の歌謡実践から「モンゴル性」を見出そうとする研究と、ローカルレベルの歌謡実践における独自のアイデンティティを強調する研究が並行して蓄積されてきた。そもそも、歌を扱う人類学的研究においては特定のフィールドにおける歌謡実践の内にある様々な「美学」や「文化的コード」を解明するものが中心的な位置にあり、モンゴルにおいても歌謡の内部にみられる「モンゴル的」あるいは「民族的」な「美学」という問題が相対化されず異なる地域間での理論上の対話が成立しにくい傾向がみられる。本論では、上記のようなモンゴルにおける歌研究および歌をあつかう人類学的研究の動向に対するひとつの試みとして、多くの歌謡実践および歌研究に共通する「われわれの歌」への愛着に注目し、歌が孕むポリティクスという問題についてモンゴルの事例から検討する。本発表は、中国広東省広州市の日系旅行会社J社の職場を事例として、サービスが商品化される過程を考察することで、それに関わる種々組織やそこで働く人々が、日常的業務の中で導き出す「合理性」に対する文化人類学的考察を行うことを目的とする。


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