2011年 仙人の会5月例会発表


発表者:持田 洋平氏(慶應義塾大学大学院文学研究科史学専攻(東洋史) 博士後期課程)

日時:5月15日(日) 14:00〜18:00

場所:法政大学大学院棟 6階601号室
 JR中央線・地下鉄南北線飯田橋あるいは市ヶ谷駅または  JR中央線・地下鉄南北線/有楽町線/東西線飯田橋駅下車、徒歩約10分
 現地へのアクセスについては、こちらをご覧ください。
   交通アクセス(市ケ谷)(Copyright (c) Hosei University)
   キャンパスマップ(市ヶ谷)(Copyright (c) Hosei University)
 ※今月の例会の会場は、予定通り、法政大学大学院棟となりました。

発表題目
 近代シンガポール華人社会と孔廟学堂設立運動 ―華人の「中国帰属意識」を中心として―

要旨
 華人史の中で近代は特に様々な点で大きな変化を迎える時期であるが、十九世紀後半から二十世紀初頭において華人が国家、民族、文化など様々な次元で自らが中国に帰属するという意識(以下「中国帰属意識」と略す)を深めていくという傾向はその中でも最も大きな変化の一つである。これらの変化は、従来の研究では多くの場合、中国の近代化に従い華人が国家としての中国(具体的には清朝)の保護や統治の対象となった事により由来するものであると認識されている。
 しかしこのような認識には幾つかの問題が存在する。その問題とは、第一に華人を保護や統治を受ける対象としてしか捉えていないという点であり、第二に華人の「中国帰属意識」の増加の原因が中国という国家による保護や統治の対象となる事であると見なす点である。この二つの問題は、華人の「中国帰属意識」という問題を扱いながら、それを国家からの干渉という観点から考察しようとするのみであり、華人が自身の帰属意識に関してどのように考え、どのように行動していたのかという華人自身の主体性・能動性を無視しているという事に起因する。中国という国家からの影響と並行して、華人が帰属意識の問題をどのように認識し、それに対してどのように反応し行動していったのかという点を考察する事によって、はじめて華人の「中国帰属意識」の深化という問題を根底から明らかにする事が出来るのではないだろうか。
 今回の私の発表は、シンガポール華人社会において「中国帰属意識」の獲得を宣伝した最初期の社会的運動である孔廟学堂(孔子廟を伴う学校)の設立運動を具体的な対象として扱う。この運動は先行研究においては保皇派の思想家・政治活動家であった康有為の影響を強く受けた運動である事が強調されているが、しかし実際には運動は華人社会に対して自らが康有為の影響下にあるものではないという事を公的に主張しており、また運動を主導した華人にも康有為とは異なる独自の関心と問題意識を有する人間が存在していた。強い「中国帰属意識」を持った少数の華人がこの運動を成功させるために行った主張や活動、また運動が華人社会へ与えた影響と成果といった点を現地の史料から考察する事により、十九世紀後半から二十世紀初頭におけるシンガポール華人の「中国帰属意識」の深化とその華人社会への影響という問題を考察する。

※例会終了後には、会場近くで懇親会を予定しております。

 本会では発表希望者を募集しております。
 発表者には懇親会費無料の特典つき。
 発表希望または例会についての問い合わせは幹事までお願いします。
 sennin.no.kai@gmail.com(←@を半角にしてください)

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