2011年 仙人の会3月例会発表


日時:3月5日(土) 14:30〜18:00

場所:早稲田大学戸山キャンパス36号館3703教室

 ※JR山手線・西武新宿線高田馬場駅より都営バス「早大正門行き」、馬場下町下車 徒歩2分
 ※地下鉄東西線早稲田駅下車 徒歩5分
 ※都電荒川線早稲田駅 徒歩9分

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発表者:渡邉 英幸氏(東北学院大学非常勤講師)

発表題目
 古代〈中華〉の分析視角

要旨
 現代中国の「中華民族」アイデンティティの中核には「華夏族」という古代の 民族集団の記憶がある。一般的に「華夏族」は伝説上の黄帝・炎帝の子孫であり 、また黄河中下流域を中心とする「中原地域」において夏・殷・周王朝を建設し た人々の集合体であって、のちの「漢族」の原型となったと考えられている。こ のような「華夏族」の存在を論ずるとき、その根拠となるのが、古代漢語テキス ト中に見える〈中華〉観念である。
 〈中華〉は、「中国」や「夏・華」といった一連の語句で表現される観念であ り、それは西周時代以降の文字資料に確認できる。それは文明世界・秩序体系の 「中心」や「内側」を意味し、その指し示す内容には一定の連続性と共通性があ る。だがその反面、先秦時代のテキスト中の〈中華〉観念に、かなりの多様性が 認められることも事実である。とくに近年の出土資料は、中原地域のみに限定で きない〈中華〉の事例が存在したことを明らかにしている。これは「華夏族」の 単系的な拡大を論ずる従来の歴史観に、大きな見直しを迫るものである。
 このような〈中華〉観念を、どのように理解すべきなのであろうか。これは「 中国史」の枠組みや「中華民族」論との向き合い方に直結する課題であると言え よう。しかし従来、研究者の立場や前提の違いによって異なる問題系が設定され 、相互に参照し合う研究史が構築されてきたとは言い難い経緯がある。例えば中 国・台湾では「国号」の起源を論ずる名号論、少数民族の淵源や民族関係を論ず る民族史などに加え、近年ではエスニシティ論の成果を踏まえた「華夏辺縁」論 が登場している。また日本では、早くから「華夷思想」研究が進められてきたの に加え、近年では戦国時代における複数の〈中華〉の併存と対立を想定する「正 統抗争」論などの視座も提示されている。本報告では、こうした研究状況を踏ま えつつ、報告者の視座をあらためて位置づけ直してみたいと考える。


※例会終了後には、会場近くで懇親会を予定しております。

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