発表者:佐々木 聡氏 (東北大学大学院文学研究科博士後期課程)
日時:4月18日(土) 14:00〜18:00ごろ
場所:慶應義塾大学三田キャンパス 大学院校舎5階352教室
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発表題目
中国中世の鬼神観と却鬼書―『女青鬼律』と『白澤圖』の比較を通して―
要旨
鬼神とは、狭義には死者の霊魂や神々、さらに広義には冥界の鬼官、山野に跋扈する悪鬼・精怪といったモノをも包括する概念であり、その鬼神に対する観念を鬼神観と呼ぶ。そもそも怪力乱神を語らずと言った孔子にさえ、鬼神について滔々と語った説話が残るほど、中国文化は鬼神・怪異譚と馴染み深い。そこで鬼神観に関する資料を渉猟してみれば、思想書・宗教経典・小説・詩文などの文献資料のみならず、各民族が保有する膨大な口碑、さらには美術や考古文物など実に多岐に亘り、それに比例して研究史も重厚である。
その中で、本発表で扱う資料は、「南斗三台鬼、姓溟、名温夫」「玉之精名曰委然」などというように鬼神の姓名録の体裁を取る資料群である。これらの資料が同様に多数の鬼神・精怪を列記する『玄中記』などの同時期の博物書と明確に異なる点は、「鬼の名前を呼べば、鬼を撃退使役できる」という理念を基底とした却鬼書の性質を持つ点である。従来、これらの資料は、個別的に検討されたり、或いは、道教思想史の一環として研究される場合が多かったが、そこに描かれる鬼神観自体を体系的に捉え、比較検討するような研究は、これまで十分には行われてこなかった。
この状況を踏まえ、本発表では、共に六朝初期に成立したとされる『女青鬼律』と『白沢図』という二つの系統の異なる資料を取り上げる。前者は初期天師道の経典として道教信仰の中に取り込まれ、後者は『隋書』経籍志以降、子部五行類に分類され、雑占書と結びついていくなど、異なる受容史をたどる資料であるが、共に「鬼の名前を呼べば、鬼を撃退・使役できる」という却鬼理念を下敷きにする書物であり、その共通性も既に指摘されている。しかし、その鬼神記述の検討、両者の持つ鬼神観体系の比較を通して、それぞれの鬼神観の相違点もまた浮かび上がってきた。そこから、本発表では、両書の持つ背景の違いを踏まえながら、鬼神・精怪、そして怪異に対する当代人の営為を描写してみたい。
また、『白沢図』及び白沢の信仰は、時代と場所を隔てた江戸期の日本でも流行したことが知られている。無論、発表者にはこの問題を論じる技量はないが、これと関連して、日本文化史や民俗学における妖怪研究と中国学における鬼神研究の関連性についても、いささか言及してみたいと思う。
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