発表者:森田健嗣氏(東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程)
日時:1月11日(日) 14:00〜18:00ごろ
場所: 東京大学駒場キャンパス18号館2階院生作業室(京王井の頭線 駒場東大前駅下車)
(当日は入り口が施錠されておりますので、遅れてお越しの際は恐れ入りますが入り口横に幹事携帯電話番号を張り出しておきますのでそちらまでお知らせください。)
交通:京王井の頭線 駒場東大前駅下車
(JR山手線渋谷駅/小田急線下北沢駅/京王線明大前駅より京王井の頭線乗換)
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発表題目
脱植民地化後の台湾における言語−「国語」を軸とした「中国化」の展開を中心として−
要旨
近年の台湾において、統合理念としての力を失った国民党一党支配時期の公定中国ナショナリズムに代わって登場したのが、定着の歴史が
異なる台湾社会の諸文化集団(族群)の文化は価値において平等であり、国家も族群相互間でもこの文化多元性を尊重しなければならないとす
る、一種の多文化主義的な統合理念である。これまでのところ、達成されたものは、民主化期に台頭した台湾ナショナリズムの一部の論調が
期待するような「台湾文化」でこれまでの国民統合の結果を置き換えるという新たな文化覇権の確立ではなくて、多文化主義的国民統合政策
により、かつての国民党政権の公定中国ナショナリズムの覇権下の不平等と行き過ぎた一元化の是正であるとされている。台湾の多文化主義
的な文化政策の顕著な表現は、1990年代以降、小学校における母語教育などの形で実施されるようになった、多文化主義的言語教育政策であ
ろう。その実施までの前史には公定中国ナショナリズムにより台湾を「中国」とし、台湾の人々を「中国人」にする国民統合が進められてい
た。この「中国化」「中国人化」とはいかなるものだったのか。
本報告ではこういった問題意識を、「国語」という軸で検討する。本報告では(1)どのようにして「方言」が劣った言語として認識され
るようになったのか。換言すれば、いかにして「国語」が絶対的な地位となり、普及されたのか。(2)どのようにして台湾の人々が「国語」
を用いる「中国人」になったのか、「中国人」であることが内面化していったのか。(3)その上で、台湾社会において「国語」が用いられ
る空間がどのように広がっていったのか。(4)しかしながらなぜ近年の郷土言語教育実施のように母語が復権していったのか、換言すれば、
復権する「空間」はいかにして生まれてきたのか。こうした問いを投げかけながら、上記問題意識に答えていくこととする。そしてこのよう
な作業を進めることで、近年の母語復権の動きやその意義をも把握していくことをも目指す。
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仙人の会 幹事(メーリングリスト管理者)08年度幹事 稲澤 努・娜荷芽(ナヒヤ)
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