2006年 仙人の会6月例会発表


発表者:高山陽子氏(東北大学)

日時:6月18日(日) 14:00−18:00頃まで

場所:法政大学 92年館(大学院棟) 6階601号教室

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 JR中央線・地下鉄南北線飯田橋あるいは市ヶ谷下車、徒歩約10分
 交通機関については、こちらをご覧ください。
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発表題目 
歴史文化と民族風情の共存―鳳凰古城の事例から

要旨
 本報告の目的は、中国湖南省西部の鳳凰古城の観光化を事例として、歴史文化と民族風情について検討し、現代における「漢化」の意味を考えることである。
 近年、古鎮游という古い町並みをめぐる観光が都市住民の間で流行している。古鎮とは、古い町全般を指すが、石畳や古民家、拱橋がある周荘や鵜鎮、同里などの江南水郷がその典型として挙げられる。北部にも古い町並みは残るが、主として大院と呼ばれる。また、西南地域においては、大理や麗江のように、かつて政庁のあった町は古城と呼ばれ、広い意味では少数民族の寨(村)も古鎮に含まれることもある。古鎮・古城・寨に共通するのは、古民家や古建築物、伝統的な習俗や生活様式など古いものが残ることである。これらの古い文化は、歴史文化や民俗風情、民族風情と呼ばれ、古鎮游の宣伝文句として頻繁に使用されている。
 大理や麗江、鳳凰などの古城は、漢族文化の受容地点という役割を担ってきた。それゆえに、ペー族やナシ族、ミャオ族などの古城の住民は「漢化」した民族であるといわれる。これらの「漢化」した民族は、現代の観光の文化表象において二つの方向性を示しうる。第一は、漢族文化という正統性であり、第二は、個々の民族文化という独自性である。この二つのベクトルは、それぞれ歴史文化と民族風情といい換えることができる。古い風俗習慣すべてが古鎮游において同じように価値があると見なされているわけではなく、伝統的な漢族文化という歴史文化と、少数民族文化という民族風情は明確に区別されている。その区別は、歴史文化と民族風情が共存する町が古城であり、民族風情のみが見られる町あるいは村が塞であるという名称の違いにも反映されている。1980年代以降、西南地域で古城を中心に観光開発が進んだのは、古城が歴史文化という正統性と、民族風情という異国情緒を有していたためなのである。

※ご出席の方は、ご面倒ですが清水享(qingshui@chs.nihon-u.ac.jp)までお知らせ下さい。