○映画「タイタニック」”乗船記”
○”タイタニック2”制作というガセネタには驚くというよりあきれる。それを伝えるマスコミのなんといかがわしいことか。ジャックがイルカか何かに助けられてローズと再会だと!そんなストーリが成り立ってしまうなら、映画のラストに涙した観客を馬鹿にするにも程がある、と怒らなければならないはずなのに。商魂たくましいハリウッドとどんな形であれディカプリオが見られれば良いというミーハーの利益が一致すればなんでも有りという事でしょうか。(1998.8.17)
○第70回アカデミー賞において14部門ノミネート中11部門で受賞!。70回という節目の年だからこそこういう大作が作品賞や監督賞を取れたという見方もあるし、脚本賞や主演男優賞にノミネートさえされなかったという旧体質をあらわにした今回のアカデミー賞。まあわかりやすくてかつ良い映画なのだから単純にその受賞をお祝いしたいと思う。24日夜のNHK-BS2の授賞式のハイライトは癖のある司会にゲスト陣で私にはツボでした。(1998.3.25)
○ついに全世界トータルで史上最大の興行収入記録をうち立てた”タイタニック”。”鳴り物入り超大作ずっこけの法則”で危惧したのも余計なお世話だったようで、キャメロン監督には大変失礼なことをしました。ここにお詫びを述べると共にさらなるヒットをお祈りしたいと思います。ぜひ、ゴールデングローブに続き、アカデミー賞も総なめにしてください。それにしてもレオ君が主演男優賞にノミネートされなかったのは何故?(1998.3.2)
○97.12.24 新宿は伊勢丹前の新宿スカラ座にて”タイタニック”を観た。新宿スカラ座は大作がかかる映画館で上京以来数々の思い出がある。昨今、新作映画のビデオ化が早く、またレンタルビデオ屋の価格を考えるとどうしても映画館から足が遠のくが、今回はやはり見逃せず出向いた訳である。
3時間を超えるこの映画は通常\1800が\2000だがしっかり前売り券を買い\1600。平日の初回ということで普段は指定席(\3000)が開放され、さらにはレトルトカレーのプレゼントもあって、既に元をとった気分。
そういえば前回ここで観た映画はジェームズ・キャメロンの”トウルーライズ”。隣に居たあの娘は人妻に。イブの日に一人寂しく席に着く。US版”ゴジラ”や”エイリアン4”などの予告編を経て本編が始まる。
現代。タイタニック号に残された財宝の引上げをもくろむグループが見つけたのは1枚のデッサン画。若い女性の裸体の胸に輝くのはめざすお宝のひとつ”碧洋のハート”と呼ばれる青いダイヤ。テレビ放映されたその絵を見た老婆が連絡をしてくる。”モデルは私。”碧洋のハート”は見つかったの?”と。
現場にやってきた老婆は引き上げられた品々をいとおしそうにながめると、タイタニックにまつわる物語を語り始める。
時に1912年4月10日。史上最大の豪華客船タイタニック号の処女航海の日。出航を目前にポーカーの賭で3等客室の乗船券を得たジャック(レオナルド・ディカプリオ)。画家を目指してヨーロッパに渡ったものの目が出ず、アメリカに戻り再出発を切ろうと決意を新たに乗船する。甲板で見かけた1等船客のローズ(ケイト・ウィンスレット:”Xファイル”のスカリーを若くしたような)に惹かれるものの高嶺の花と友に諭される。その晩、財産目当ての結婚に絶望し身投げしようとするローズを止めることから2人は知り合う。海の冷たさを説明し引き留めるジャックのセリフが悲劇の伏線になっていて既にウルウルくる。
命の恩人となったジャックはローズの婚約者キャルに翌日のディナーに招待される。昼間甲板で散歩し互いに惹かれ合う2人。”不沈の”モリー夫人(”ミザリー”の主人公)の助けで正装したジャックは1等客室のディナーを無事こなすと3等客室のパーティにローズを連れ出す。婚約者の不審な行動に見張りをつけるキャル。一度は実母に諭されてあきらめるローズだが想いは断ち切れず、3等客室の甲板へ。船首で抱き合う2人。
4月14日。運命の日。ローズは自室にジャックを誘い、自分のデッサン画を描かせる。そこへ踏み込むキャルの召使い。追われる2人は貨物室の1台の車の中で肌を重ねる。やがて甲板に出た2人は船が氷山に接触する様を目撃する。
軽微と思われた船体の損傷は実は致命的なもので、船の設計者トーマスは1、2時間のうちには沈没するとスミス船長に伝える。パニックを未然に防ごうと軽快な曲を楽団が演奏する中、救命ボートが降ろされ始める。1等船客の女子供から順番に避難。しかし、救命ボートの定員は乗客の半分に満たない。一方、宝石泥棒の濡れ衣で甲板下の船員室に拘束されたジャック。一度はボートに乗ったローズは船に戻り、ジャックの元へ。間一髪脱出した2人はやっとの思いで甲板へ。ジャックとキャルが見守る中ボートに乗るローズだがジャックと運命を共にしようと船に飛び移る。2人を追うキャルの銃弾から逃れると、もたげ上げられた船尾にしがみつき船の剪断、沈没の衝撃に耐える。海に放り出された人々の悲鳴。しかし徐々に静寂になっていく。漂う船の破片にローズを乗せ、自分は海中に身をさらすジャックは次第に体力を失う。”ここで死んじゃだめだ。子供をもうけて長生きして暖かいベットの中で死ぬんだ。”ローズがふと気がつくとジャックはもう返事をしない。静かに海の底へ沈んでいく。場内に鼻をすすり上げる音が響く。
救助されたローズはジャックと語り合った夢を一生をかけて実現する。”碧洋のハート”をタイタニックの沈没場所に投げ、思い出の写真に囲まれる中、ローズは息を引き取る。彼女が帰っていくのはタイタニック。海底で朽ちた船内が絢爛豪華によみがえり、かつて待ち合わせた階段の時計の前にはジャックの姿。2人が抱き合い乗客たちが祝福の拍手を送り幕は降りる。
2億ドルの制作費やらレオの人気やらで話題が先行したが、観て損はしない作品、というよりカンパのつもり(これで赤字に終わると今後大作映画は作りにくくなるから)ででも観るべき。前半は若い2人のラブストーリー、後半はほぼリアルタイムでタイタニックが沈んでいくパニックを描き3時間の長さもだれることがない。わかりやすいが決して安っぽくない。食後にブランデーと葉巻で歓談する1等船客の足下では労働者が真っ黒になってボイラーに石炭をくべているといった史実に基づいた描写は胸を打つ。しかしなにぶんにも長い映画。寒い時期だけに直前の水物は控えた方が。
そもそもキャメロン監督は”エイリアン2”や”ターミネータ”シリーズといったヒット作を連発し、レオ君は人気に恥じない実力の持ち主。弱冠22歳ながらあのロバート・デ・ニーロやメリル・ストリープをもうならせている。確かに”ギルバート・グレイプ”の知恵遅れの少年も”バスケットボール・ダイアリーズ”のヤク中の高校生も”太陽と月に背いて”の詩人ランボーも見事に役を自分のものにしていた。リバー・フェニックス亡き後若手の1番手だ。
それにひきかえ日本映画界のなんと貧弱なこと。中年オヤジの何を考えているんだかわからない表情や演技が絶賛され、一方では子供だましが横行している。
そして”不沈の豪華客船”タイタニックと”日出づる国”日本が重なって仕方がない。経済至上、近代化を押し進めてきた無理が、今この国をまっぷたつにへし折り奈落の底へ引きずり落とそうとしているのではないか。もしかすると舵をとる立場にいる者はそれに気づいていて、懸命に陽気な音楽でごまかしつつ、自分たちだけ助かろうとしているのではないだろうか。乗客を救う努力をせず船と心中する船長は決してほめられたものではないが、その潔さだけはどこぞの国の政治家よりはましか。(1997.12.25)
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