クレヨン






たとえばクレヨンで線路を描いたとして、
それが現実になるなんて、あり得ないんだ。


クレヨンで描いた線路に君と僕が並んで、
「君が車掌、僕が乗客」
なんて言って、その線路を渡ったところで、
世界には全くお荷物な出来事でしかないんだ。


そして君は、クレヨンを握りしめることを止めてしまった。
「くだらない」なんて言って、僕の持つクレヨンを、僕の書く線路を、笑うようになった。


僕は別に待ってる訳じゃない。君が戻ってくるのを待ってる訳じゃない。ただ、僕はバカだから、こうやってクレヨンで線路を描くことしかできないんだ。

いっそ君を殺してしまえばいいのだろうだけれど、変わってしまった君をどうにかしたところで、それは仕方のないことだ。


君を連れ戻す権利は、僕にはない。



僕は今日もクレヨンを握る。そして線路をまた、長く伸ばしてゆく。

でもそれは、世界には全くお荷物な出来事でしかないんだ。




少し涙を流した。