送信者: Shin'ichirou Koubuchi 宛先: 件名 : [klingon 601] Kronos Chronicle 2000.04.26 日時 : 2000年4月25日 21:59 ◆◆◆ クロノス・クロニクル 2000.04.26号 ◆◆◆ Qo'noS QonoS: tera' DIS 2000 jar 4 jaj 26 ◆◆◆ Kronos Chronicle, Apr. 26th., 2000     電子メールによるクリンゴン語情報誌(不定期刊行) 究極のスタートレック専門誌「STAR TREK: THE MAGAZINE」第13号にクリンゴン語 の記事が掲載されていたので、ここに紹介します。クリンゴン語の現実世界での歴史 を概観するもので、大変参考になります。知らなかった人は、よく読んでしっかり勉 強しましょう。とっくに知ってたよ、という人はこの機会に今までの知識を整理しま しょう。記事は当然ながら英語なので、私が訳しました。素人の訳なので拙いところ もありますが、内容は伝わると思います。 <−−−−−− 以下記事 −−−−−−> クリンゴン語 クリンゴン語の歴史 特別記事シリーズの第1弾として、クリンゴン語学会のローレンス・M・ショーエン 博士がクリンゴン語の現実世界での歴史を、旧スタートレックから今日まで探検しま す。 クリンゴン語は今ではとても人気がありますが、常にそうだったわけではありませ ん。実際のところ、3年続いたスタートレックのオリジナル・シリーズ中では、クリ ンゴン語は1単語たりとも話されませんでした。クリンゴン人がはっきりと登場する エピソードはいくつかありますが、言語的に最も踏み込んだヒントは「新種クアドロ トリティケール」(The Trouble With Tribble)におけるぞんざいな意見表明が1つ あるだけです。このエピソードでは、あるクリンゴン人が「だからこそ、誰もがみん なクリンゴン語を学んでいるのだ」(That's why they're all learning to speak Klingonese.)と言います。これだけでした。実際にクリンゴン語を聞くことになる のは、映画第1作「スター・トレック:モーションピクチャー」(STAR TREK: THE MOTION PICTURE)からで、1979年のことです。 ■最初の単語 でも1977年に戻って映画の2年前、パラマウント社(Paramaount)は新しいテレ ビ番組「スタートレック2」(STAR TREK II)の可能性を模索しました。俳優が当て られて脚本も書かれましたが、結局このシリーズは棚上げにされ、映画化の方が選ば れました。登場人物の何人かは映画に登場しました。そして脚本のうちのいくつかは 書き直されて、「新スタートレック:ネクストジェネレーション」(STAR TREK: THE NEXT GENERATION)のエピソードとしてついに陽の目を見ます。再利用されなかった 脚本のなかにクリンゴン関連のエピソードが1つありました。ジョン・メレディス・ ルーカスの書いた「キトゥンバ」(Kitumba)は初めてクリンゴン語の単語を提供し ます。「キトゥンバ」は「力」(the power)という意味です。それだけなのです が、オリジナル・シリーズで得た以上のものではあります。残念なことに、誰もこの 語を聞くことはありませんでしたが。 ■喉から出る音 2年進んで映画の話です。冒頭で、何隻かのクリンゴン艦がヴィージャー(V'Ger) の攻撃に遭うのが見られます。旗艦の司令官がクリンゴン語(英語字幕付き)で命令 を叫び、この時初めてクリンゴン語の喉から出るような荒々しい音にさらされること になります。しかし多くは得られません。ヴィージャーはすぐさまクリンゴン艦を片 付けてしまいます。そして映画3作目までは、他の語を聞くことはありませんでし た。 先に進む前に、あまり知られていない雑学が2つほどあります。1つ目は、初めてク リンゴン語の台詞を話した俳優はマーク・レナードです。スタートレックにデビュー したのはロミュラン人役ですが、スポックの父親、バルカンのサレクを演じたことで よく知られています。この場面でレナードは、スタートレックで初めて異なる3種類 のエイリアン種族を演じた俳優になりました。2つ目は、初めて話されたクリンゴン 語を創ったのは、映画の共同制作者ジョン・ポーヴィル(John Povill)と、方言の 名人で機関主任モンゴメリー・スコット役でお馴染みのジェームズ・ドゥーハン (James Doohan)です。数年後、「スター・トレック4−故郷への長い道−」(STAR TREK IV: THE VOYAGE HOME)では、スコッティは「せしめた」バード・オブ・プレイ の制御装置の翻訳に格闘しましたが(...クリンゴン語を読むのは厄介でしてね! (... reading Klingon, that's hard!))、ドゥーハン自身は問題なく話したわけで す。 ■クリンゴンの精神構造 1984年、ポケット・ブックスはスタートレック小説の第16巻、ジョン・M・ フォード著 Tha Final Reflection(未邦訳)を出版しました。これは今のところス ター・トレック小説の中で唯一、全編クリンゴンの視点から書かれたものです。この 本の大部分はある種のクリンゴンのチェス・ゲームを中心に展開します。そして フォードが提示した語彙はゲーム用語だけにとどまらず、その他一通りの語や尊称・ 階級名にも及びました。フォードは自身の創造物を「クリンゴナーズ」 (Klingonaase)と呼び、彼の説明によれば、言語の創造というより人類とは違った 精神構造の創造を読者のために試みたのだそうです。これらの単語や文章はクリンゴ ン・ファンの間で人気でしたが、言語的には行き詰まっています。 ■変わった依頼 クリンゴン語が真に言語として出発したのは、「スター・トレック3−ミスター・ス ポックを探せ!−」(STAR TREK III: THE SEARCH FOR SPOCK)の公開された198 4年後半でした。パラマウント社は言語学者のマーク・オクランド博士(Dr. Marc Okrand)を雇って言語を創りましたが、これは背景を描くために美術家を雇い、大道 具セットを建てるために大工を雇うのと同じことでした。オクランドの仕事はいくぶ ん難題で、奇妙で異世界的な音でありながら、同時に俳優が発音可能な音の言語を創 り出すというものでした。 ■言語の創造 オクランドは「スター・トレック:モーションピクチャー」の冒頭場面で聞こえるク リンゴン語の断片の見直しから始めて、各発話を転写しました。ここで収集した音声 がクリンゴン語音声の出発点になりました。オクランドはこの言語に取り組みなが ら、他の音素も加えました。たとえば、アメリカ先住民の言語のいくつかでは馴染み のある /tlh/ や、従来の音素よりも音の止め方が強い声門閉鎖音 /'/ などです。し かし、ドゥーハンとポーヴィルが創り、レナードが発した音が、すべての始まりなの です。台詞に付けられた字幕も、とても重要な役を果たしました。この字幕から、オ クランドは与えられた発話が特定の文章に訳されるべきだと考えたのです。そこで、 彼に残されていたのは、どの音節がどの単語あるいは単語の一部を形成するのかを決 めることでした。こうしてクリンゴン語の文法が生まれました。 ■多くの起源 オクランドは次にオリジナル・シリーズの各エピソードを通じて作業を進めました。 クリンゴン人が(英語で)話した台詞を抜き出して、その訳を書き、必要なら新しい 語彙を創りました。地球上の広範囲な言語から借りた文法的特徴や発音が意のままに 追加されました。結果として、クリンゴン語の様相に親しみを感じる言語話者はおそ らく多いのではないでしょうか。驚くことではありませんが、クリンゴン語はよく、 ある1つの特定の言語を基にしているのではないかと考えられています。本当のとこ ろは、オクランドによれば、途中で1つの言語あるいは語族から取り入れ過ぎている ことに気付いて、根本から違う源に切り替えてから作業を続けたとのことです。した がって、クリンゴン語には世界中に見られる非常に多くの文法的特徴がうかがえます (たとえば、ドイツ語のような膠着性、日本語のような主題化表示の使用)が、この 特徴の組み合わせは独特です。その音声にも同じような独自性があります。音はどれ も他の言語に見られるものですが、地球上の言語にはそのすべてを含んでいるものは 他にありません。 ■言語の発展 1985年にオクランドの The Klingon Dictionary(未邦訳)が出版されました が、ちょっと実体とは違った題名です。この本は言語学者のフィールド・ノート(現 地調査記録)を編集したものにより近いです。クリンゴン語の入門書であり、最終決 定版というわけではありませんが、詳細な文法記述と2千語の用語集が収録されてい ます。1989年と1991年に、パラマウント社はスタートレック映画の5作目と 6作目を公開しました。再び、オクランドが主要な撮影に立ち会って、クリンゴン俳 優の台詞を訳し、正しい発音を指導し、重要な場面のために監督に助言しました。こ の辞書のちょっとした増補版が1992年に出版され、オクランドはこれでお終いだ ろうと決め込みました。しかし、実際には終わりとはほど遠かったのです。 最初の辞書は実によく売れて、アメリカ中の人が徹底的に学習し、創造者以上にクリ ンゴン語を習得していました。インターネットの初期の頃で、これら初代クリンゴン 語話者の多くはコンピューターにとても習熟していて、プロのプログラマーとして働 いていた人も少なくありませんでした。メーリング・リストが数年間存在し、この言 語について議論していました。1992年1月には、クリンゴン語学会(Klingon Language Institute)が創設されました。その目的は、クリンゴン語話者(電子メー ルにアクセスできない人も含めて)を集めて、クリンゴン語を研究するための共通の 場をつくることでした。会員数が増えるにつれて、KLIはその興味を広げていき、 クリンゴン語を発展させ始めました。シェイクスピアや聖書の翻訳計画やクリンゴン 語によるオリジナルの創作文や詩などがあります。マーク・オクランドとKLIとの 間に絆ができて、以来この言語創造者はこの組織の季刊誌を通じて新しい知識や語彙 をクリンゴン語学習者に提供しています。 ■クリンゴン語の諸企画 尽きない興味のおかげで、オクランドはオーディオ・カセットを2本、書籍をさらに 2冊発表することができ、クリンゴン語をいっそう詳しく解説しました。いちばん最 近では、ポケット・ブックスがKLIの訳した「ハムレット」(Hamlet, Prince of Denmark)の版権を取得しました。そして、全編クリンゴン語のオリジナル短編が、 新しいスター・トレック選集の中に近刊予定です。 他の人工言語と違って、クリンゴン語は人気があり、スター・トレック現象そのもの の幅広さという恩恵もあり、ファンやまったく違う分野からの新しい支持者を惹きつ けます。クリンゴン語がよく銀河で最も成長の早い言語と評されることに、何の疑問 があるでしょうか? <−−−−−− 以上記事 −−−−−−> 他にはコロースでお馴染みのウィリアム・キャンベルの記事も載っています(まだ読 んでない)。さらに当誌第12号には「バトラフのデザイン」「クリンゴン防衛艦 隊」そして「クリンゴン語版ハムレット」とクリンゴン関連記事満載で、クリンゴン ・ファンにはうれしい構成でした(伝えるの遅かった?)。余裕があったらこれらの 記事も紹介します。 Qapla’! 発行者:コウブチ(vz4s-kubc@asahi-net.or.jp)