送信者: Shin'ichirou Koubuchi 宛先: Cc: Shin'ichirou Koubuchi 件名 : [klingon 141] Kronos Chronicle #8 日時 : 1997年6月15日 17:12 Eメールによるクリンゴン語情報誌 【クロノス・クロニクル】 第八号 - Qo'noS QonoS 8-DIch - - Kronos Chronicle #8 - 発行者:コウブチ・シンイチロウ 発行日:1997年6月15日 【トレーディング・カード】 お馴染みとなりました、スカイボックス社のトレーディング・カードです。 原文の改行位置は [<] で示します。  STAR TREK: THE NEXT GENERATION  THE EPISODE COLLECTION: SEASON SIX より  - S32 -  'oy'naQ  nentay loptaHvIS tlhIngan potlh tlhIngan 'oy'naQ'e'.  SIQwI' lu'oy'moHmeH juppu'Daj 'oy'naQmey lo' chaH. SuvwI' [<]  qa' patlh veb chavlaHmeH tlhIngan lo'chu' chaH.  toDujDaj toblu'. wej 'uymey 'ab 'oy'naQ. chIch vay' 'oy'moHmeH [<]  'oy'naQ 'ul law' tlhuD 'oH.  Painstik  The Klingon Painstik is an important part of a Klingon's Age of  Ascension ceremony. The Painstik is employed by friends [<]  of the recipient who use the devices to inflict pain in a manner  which will allow the Klingon to attain a higher state of [<]  spirituality as a warrior, proving his mettle. Painstiks are  a little over one meter long and emit a highly-charged shock [<]  for the express purpose of inflicting pain.  - S33 -  So'wI'  Hoch tlhIngan DujDaq So'wI' jomlu'.  puvtaHbogh DujngabmoHlaw' So'wI'.  boq lucherDI' tlhIngan wo' romuluS [<]  Hov wo' je So'wI' cham Suqpu' tlhIngan wo'.  chaq tampu'. chaq romulu Snganpu'vaD pIvghor cham lunobpu' [<]  tlhInganpu'. HoS law'qu' natlhmo' So'wI' QaptaHvIS So'wI'  QaplaHbe' nuHmey. ngongmeH wa' DujDaq [<]  nuHmey nISbe'bogh So'wI' jomlu'pu'.  HovpoH Hut vagh cha' wa' vI' jav Dujvam 'aghlu'pu' 'ach Qaw'lu'pu'.  Cloaking Device  All Klingon vessels are equipped with a cloaking device,  allowing the ship to fly in a [<]  state of practical invisibility. Cloaking technology was gained  through an alliance with[<]  the Romulan Star Empire, possibly in exchange for Warp Drive  technology. Due to the [<]  tremendous energy drain of a cloaking device, weapons cannot be  discharged while the [<]  cloak is in operation. さて、今回でTNGのエピソード・シリーズ・カードも第6シーズンを迎え、 いよいよ残すところ1シーズン分となりました。もう放映が終了しているのに カードの発行が続くというのは日本では考えられないことです。今回は例文が 長いのがとてもうれしいことです。しかし、長いだけあって誤植の数も多いで す。また、新出単語のオンパレードであることも見逃せません。解説したいこ とは沢山あるのですが、まずはみなさん自身で解読する楽しみを残すため、解 説は最小限に留めておきます。もちろんメーリングリスト宛の質問に遠慮は要 りません。 S32は、ペインスティックについてです。英語の綴りは painstick だと思 うのですがカード上ではpainstik という綴りが使われています。 S33は、クローキング・デバイスについてです。この訳語は定まっておらず、 透明装置、隠蔽装置、遮蔽装置などと呼ばれています。こちらには誤植が目立 ちます。2番目の文の DujngabmoHlaw' は Duj ngabmoHlaw' と空白が入るは ずです。何と第2回作文大会で yoHnIS さんの使った表現と全く同じものです。 batlh ghItlh yoHnIS. yoHnISDaq yInbej qeylIS qa'! 次に5番目の文のromulu Snganpu'vaD もカードのままです。そして驚いたこ とに最後の2つの文が、英文の方にはありません。これも私の間違いではなく、 カードのままです。解読に挑戦してみて下さい。 【第9類動詞接尾辞−ghach】 以前当メーリングリストでも話題になった第9類動詞接尾辞 -ghach の用法に ついて、オクランド博士へのインタビューがKLIの機関紙に記載されていま したので、ここに要約してお伝えします。 ◆ -ghach は動詞を名詞に変える働きを持ちます。-ghach について考える前 に、まずクリンゴン語の動詞と名詞の関係を見てみましょう。ご存じの通り、 クリンゴン語では互いに関連する意味を持った動詞と名詞で同じ形のものが多 数存在します。しかし、意味上の関係は各ペアによってまちまちで一定してい ません。オクランド博士もまだ規則性を見い出していないそうです。 ◆ それでは、各ペアの関係を見ておきましょう。    bach:(動) shoot 撃つ、(名) shot 弾丸、砲弾。    nob:(動) give 与える、(名) gift 贈り物。    ここでは、名詞は動詞で示される動作のための手段・道具を表わします。    上の例では名詞はそれぞれ「撃つもの」「与えるもの」と言い替えるこ    とが出来ます。    quv:(動) be honored 名誉がある/を受ける、(名) honor 名誉。    これは状態を示す動詞の場合です。ここでは動詞で示される状態のため    の手段・道具を表わします。感覚的には上の bach, nob と同じだと思    います。    leH:(動) maintain 維持する、(名) maintenance 維持。    ここでは、名詞は動詞で示される動作そのものや結果を表わします。    上の例では名詞は「維持すること・維持された結果」と言い替えること    が出来ます。(維持された結果というのは日本語では理解しにくいとは    思いますが。)    bel:(動) be pleased 喜ぶ、(名) pleasure 喜び。    これは状態を示す動詞の場合です。ここでは動詞で示される状態そのも    のや結果を表わします。感覚的には上の leH と同じだと思います。    boQ:(動) assist 手助けする、(名) aide 助手。    ここでは名詞は動詞で示される動作をする者を表わします。上の例では    名詞は「手助けする者」と言い替えることが出来ます。    助手を表わすのに boQwI' とはならない点に注意が必要です。    nov:(動) be alien 外国/異星のものである、       (名) alien 外国人、異星人。    これは状態を示す動詞の場合です。ここでは動詞で示される状態の者を    表わします。感覚的には上の boQ と同じだと思います。 ◆ -ghach は基本的には英語の -ness, -tion に相当する接尾辞です。 -ness は主に形容詞に付いて「〜な状態・性質など」を、-tion は主に動詞に 付いて「行為・過程・結果など」を表わします。クリンゴン語の -ghach を使 う時に、状態を表わす動詞であれば -ness、動作を表わす動詞であれば -tion にほぼ対応します。    lo'laHbe': be worthless 無価値    lo'laHbe'ghach: worthless"ness" 価値が無い    naDHa': discommend 非難する    naDHa'ghach: discommenda"tion" 非難 ◆ 「接尾辞なしの動詞 + -ghach」は、オクランド博士によればこの件に関 しては研究中でまだ詳しくはわかっていないそうですが、一般的には不可とい うことです。「〜すること」を表現したい時には -taH を挿入すれば問題ない とのことです。    tlhutlhghach 普通は不可    tlhutlhtaHghach 可能 tlhutlhtaHghach は英訳すると、ongoing drinking, the process of continuing to drink(継続中の飲む行為、継続して飲む過程)とまわりくど い表現になってしまいますが、クリンゴン語では1単語で示され、全く正当な ものになります。 ◆ しかし「接尾辞なしの動詞 + -ghach」が全く不可能かといえば、必ずし もそうではないそうです。普通は使わない表現ですが、意味は通じます。但し、 何かしら特徴のある表現になり、特別な場合、特別な効果のための造語として 用いられることになります。詩人や哲学者や科学者などが、日常語とは違った 何か特別な用語として使うことがあるそうです。    nob: give 与える    nob: gift 贈り物    nobghach: *givation 与えること、贈与。普通は使われない。    nobtaHghach: giving, ongoing giving 与えること、贈与    nobpu'ghach: (given) one-time donation 与えたこと、過去の贈与 *givation は確かに英語の規則に従った造語ではありますが、普通は使われま せん。しかし、意味はなんとか通じるでしょう。クリンゴン語の nobghach も 同じ感覚です。実際のところ、クリンゴン語におけるこの手の語の奇妙さは英 語の場合程ではないそうです。 ここで興味深いのは、nobpu'ghach によって既に完了した贈与を表わすことが 出来ることです。上では過去の贈与と書きましたが、必ずしも過去である必要 はなく、未来に完了する贈与も意味することが可能です。ここら辺はなかなか 理解しにくいと思いますが、あまり厳密に考えなくても良いと思います。 ◆ では「接頭辞付きの動詞 + -ghach」はどうでしょう。これも一般的には 不可だが、全く不可というわけでもないとのことです。但し、「接尾辞なしの 動詞 + -ghach」以上に奇妙な印象を与えることになるそうです。使うことは 可能だし、実際通じますが、変な表現になります。    qalegh.: I see you. 私はあなたに会う。    qaS qaleghtaHghach.: An I-seeing-you happens.           私があなたに会うことが起きる。 上のような文を言われた時、一瞬戸惑いますが、なんとか理解することは出来 ます。規則から外れてはいないが、普通は使われない表現です。 ◆ 以上が -ghach に対するオクランド博士の見解です。事実上、「接尾辞な しの動詞 + -ghach」と「接頭辞付きの動詞 + -ghach」の使用を禁止した形 になっています。私自身、この -ghach は大変強力な接尾辞であり、強力であ るが故に同時に危険でもあると感じていましたので、乱用は避けるべきだと考 えていました。この点でオクランド博士の見解は私にとっては全く満足のいく ものでした。しかし、クリンゴニストの間では長らく -ghach の表現力に全幅 の信頼を置いていた人がかなり沢山いましたので、このインタビューが発表さ れた当時(1994年9月)はかなりの反響を呼び起こしたものです。 ◆ 最後にひとつ付け加えておくと、この問題児 -ghach が誕生するきっかけ となったのは、[TNG: Sins of the Father] でウォーフがクリンゴン元老院 から discommendation を受けたことからだそうです。 【謝辞】 今回、ご紹介したSBX例文は■■■■さんから提供されたものです。 ここに感謝の意を表します。 bInajtaHvIS <> Daghomjaj. 【略語の説明】 KLI=Klingon Language Institute(クリンゴン語学会) SBX=スカイボックス社のトレーディングカード TKD=The Klingon Dictionary TNG=スタートレック:ザ・ネクスト・ジェネレーション 内容に関するご感想をお寄せ下さい。 ML宛:klingon@ml.asahi-net.or.jp コウブチ個人宛:Owner-klingon@ml.asahi-net.or.jp Qapla’!