送信者: Shin'ichirou Koubuchi 宛先: Cc: Shin'ichirou Koubuchi 件名 : [klingon 61] Kronos Chronicle #6 日時 : 1997年2月25日 14:55 Eメールによるクリンゴン語情報誌 【クロノス・クロニクル】 第六号 - Qo'noS QonoS 6-DIch - - Kronos Chronicle #6 - 発行者:コウブチ・シンイチロウ 発行日:1997年2月25日 【トレーディング・カード】 例によってスカイボックス社のトレーディング・カードより、新しく2枚のク リンゴン語カードを入手致しましたので、ここに紹介致します。どちらもクリ ンゴン語訳はマーク・オクランド博士によるものです。 ◆STAR TREK: THE NEXT GENERATION  THE EPISODE COLLECTION: SEASON FOURより カード番号はSP19です。ちょっと短いのに不満が残りますが、その分暗唱しや すいでしょう。 QumwI' labmeH 'evnagh Se' lo' tlhIngan QumwI'. janmey ngo' lulo'lu'DI' pIj jabbI'ID nISpu'woj. Klingon Communicator A Klingon communicator sends a signal through subspace radio. Older models were susceptible to radiation. ◆STAR TREK: DEEP SPACE NINE: TRADING CARDSより さてこちらは同じ文章が、英語、ドイツ語、フランス語、スペイン語、日本語 クリンゴン語の6言語で揃っています。なんだか今後エスカレートしそうな感 じもしますね。取り敢えずここでは英語版、クリンゴン語版、日本語版を紹介 致します。改行位置もそのままです。  英語版   THE MISSION   It waits... on the edge of the   galaxy, beside a passage to   unknown regions of the   universe, space station   Deep Space Nine is the   gateway for the exploration,   intrigue and enterprise that   make the continuation of the   human adventure into space   --- the final frontier.  クリンゴン語版   QU'   loS... qIb HeHDaq, 'u' SepmeyDaq   Sovbe'lu'bogh lenglu'meH He   ghoSlu'bogh retlhDaq 'oHtaH.   HaDlu'meH, QuSlu'meH, SuDlu'meH   lojmIt Da logh Hop Hut tengchaH.   vaj loghDaq lenglaHtaH Humanpu'.   veH Qav 'oH logh'e'.  日本語版   ミッション   銀河星雲のかなた、宇宙の未開地へ   の通路近くに待機する宇宙ステーシ   ョン、ディープ・スペース・ナインは、   探求、好奇心、冒険などに象徴される   未開のフロンティア、宇宙への人類   の継続したアドベンチャーのゲイト   ウェイです。 【トレーディング・カードの買えるお店】 トレーディング・カードはアメリカのものなので日本ではなかなか入手しにく いと思います。それでも最近はこの手の収集品が流行っているのか、扱うお店 もないわけではありません。以下にトレーディング・カードを売っているお店 をいくつか紹介致します。私は行動半径が狭いので東京の池袋だけですが、他 の地方での情報も遠慮なくご発信下さい。 ◆ブックス・ファントム:東京都豊島区東池袋1−47−3。  スターウォーズ、スタートレック、Xファイルの商品多数あり。  3月に「ファーストコンタクト」記念セールあり。 ◆ポストホビー池袋パルコ店:池袋パルコ5階。  海外商品多数あり。但しスタートレックのカードは最近見かけません。 ◆西山洋書池袋店:東京都豊島区西池袋1−2−2ウエストワン1F。  自動車、飛行機、軍事、SF関連の洋書多数あり。  時々カードが置いてあります。 ◆まんがの森:東急ハンズの裏。  アメコミあり。最近はカードは見かけません。 【落ち穂拾い】 変な表題ですが、つまりはTKDには記載されていないけれども、後に新しく 判明した文法規則を紹介するものです。正規のもの(canon)か私の個人的見解 かに注意しながらお読み下さい。 ◆大文字・小文字(canon) 『表題などには全て大文字が使える。』 ご存じの様にクリンゴン語のローマ 字表記では、文中に大文字と小文字が混在します。文頭だからと言って大文字 にはしません。しかし、上述のSBXの例文ではQU'という具合に表題が全て 大文字になっています。また、PKLの付属カード中にもMU'QAD VESやNENTAY という表題があります。これには私自身ちょっと抵抗がありますが、どちらも オクランド博士監修のものなので、もはや公認の表記法と言えるでしょう。こ れらを読む場合に問題となるのはQとqの区別だけです。これにはクリンゴン 語に対する習熟が要求されますが、幾通りもの読み方を持つ日本語の漢字より は断然簡単だと思います。 ◆称号・肩書き(canon) 『称号・肩書きは名前の後ろに付く。』 例えばクルーグ船長なら、かつては (今でも)アメリカでは英語式の語順 Captain Krugeに倣って何の疑問もなく HoD Qughとされてきました。しかし日本人である私たちには、もしかしたら語 順が逆なのではという懸念もあったことでしょう。そしてついにSBXに qarghan HoD, janluq pIqarD HoDなどの例が登場し、称号・肩書きは名前の後 ろに付くことが判明しました。 ◆「左右に」(canon) 『poSDaq nIHDaq je:左右に』 「左」はpoS、「右」はnIH、「左と右」は 「poS nIH je」です。そして「左右に」には場所を表わす第5類名詞接尾辞 -Daqを使うわけですが、「*poS nIH jeDaq」とはならずに「poSDaq nIHDaq je」 になります。英語的感覚では「前置詞+名詞」、日本語的感覚では「名詞+助 詞」のものもクリンゴン語では「名詞+接尾辞=名詞」です。つまり、接尾辞 も含めて全体で一つの名詞扱いになります。動詞も同様です。 ◆「する、やる、do」(canon+私見) 『ta':する、やる』 このごく基本的な動詞にあたる語はTKDの辞書編に は記載されていません。しかし、p172に「I didn't do it.: vIta'pu'be'」と いう例文が載っています。つまり、動詞 ta'を流用することが出来ます。但し ta'には単に「する」というよりも「成し遂げる」「してしまう」という完了 の意味合いが強いはずです。ここで、第7類動詞接尾辞の-pu'/-ta'と-taH/-lI' との関係から類推して、増補版で新たに追加された動詞 taHも用いることが出 来そうです。つまり、クリンゴン語のアスペクトに完了と継続の区別があるの と同様に「する」という動詞自体にも両者の区別がおぼろげながらあるのかも 知れません。もちろんこの場合でもアスペクトを接尾辞で表わすのは上記の例 文の通りです。   ta':accomplish (v):成し遂げる、果たす、成就する。   taH:continue, go on, endure (v):続ける、継続する、      持続する、存続する、永続する、存える、永える。   vIta'.:私はそれをする/し終える。   vItaH.:私はそれをする/している。 基本的には「Aをする」という文はあまり見かけず、直接「Aする」という動 詞で表現されることが多い様です。あくまでもta'やtaHを流用出来るだけで、 必ずしも「する、やる、do」に一致するわけではないことに注意しましょう。 ◆時刻(分)の表現(私見) 『wa'maH cha' vatlh wejmaH loS rep:12時34分』 私の「クリンゴン語 入門」では時刻のうち、「時間」の説明はしていますが「分」の方は不明とし ていました。これは時刻について解説しているCKLに分の表現例がないため です。しかし、「クリンゴン語作文大会」のために映画の6作目のチャン将軍 の台詞(nineteen hundred thirty hours)を聞き直して、これであろうと思 うに至りました。つまるところは、軍隊式の時刻表現なわけでして、現在東京 で放映されている「ネイビーファイル」という海軍法務部の物語を観て、この 軍隊式の時刻表現を確認することが出来ました。 ◆-lu'の用法 第5類動詞接尾辞はなかなか理解しにくい難しい接尾辞です。ここでちょっと 最近の使用例を簡単に見ておきましょう。例文として説明しやすい様に原文を 少し変えてあります。元の英文は( )内に、私の和訳は<>内に並記します。 qorDu' SaHlu'chugh 'ej matlhlu'chugh vaj tlhIngan ghob potlhqu'. (Denotion and loyalty to family is one of the most important Klingon virtues.)<家族への献身と忠誠はクリンゴンの最も重要な倫理の1つである。> vaj以降の部分には多少問題もある様に思えますが、ここでは前半の -lu'が使 われている部分に注目して下さい。「家族への献身と忠誠」が「家族に尽くし 忠実であれば」に置き換えられ、-lu'によって主語を不特定の者にしています。 tlhIngan wo' yuQmey chovlu'chugh Qo'noS potlh law' Hoch potlh puS. <クリンゴン帝国の惑星を評価した場合、クロノスが最も重要である。> (Qo'noS is the principal planet of the Klingon Empire.) <クロノスはクリンゴン帝国の主要な惑星である。> ここでは、帝国領内の各惑星を評価するのは特に決まった誰かではなく、一般 的な評価なので、-lu'を使います。(因みに最近では最上級に動詞 nIvが用い られる例も多いので、tlhIngan wo'Daq yuQ nIv 'oH Qo'noS'e'.も可能だと思 います。) また、上述のDS9のカードも-lu'のオンパレードです。第9類動詞接尾辞 -boghは私の「クリンゴン語入門」にはまだ出てきていませんが、関係代名詞 の様なもので「〜する〜」を表わします。 'u' SepmeyDaq Sovbe'lu'bogh (unknown regions of the universe) <宇宙の、人々の知らない地域に> ここでは、世間一般の人々が知らないことを意味します。 lenglu'meH <上の「未知の領域」を(不特定の者が)旅するための> 原文では toに対応。 He ghoSlu'bogh <(人々が)向かう進路> 原文では a passageに対応。通路。 'u' SepmeyDaq Sovbe'lu'bogh lenglu'meH He ghoSlu'bogh <宇宙の未知の領域への通路> いづれにしても、ここで言及される動作「知る、旅する、向かう」の動作主は ある特定の人ではなく、一般論として述べているわけです。 HaDlu'meH, QuSlu'meH, SuDlu'meH lojmIt Da logh Hop Hut tengchaH. (Space station Deep Space Nine is the gateway for the exploration, intrigue and enterprise.)<宇宙ステーション・ディープ・スペース・ナイン は探究、好奇心、冒険への扉の役を果たす。> ここでは、名詞で表現されているfor the exploration, intrigue and enterpriseが、-lu'meHの付いた動詞になっています。これは恐らく、HaDとSuD に動詞の意味しか与えられていないので、QuSの様に単純に「QuSvaD」と出来な かったためと思われます。それぞれ「〜するための扉」になります。誰がする のかは特定せず、世間一般の人々を主語に据えて一般論を述べています。 intrigueは陰謀という意味でクリンゴン語でも「QuS:陰謀を企てる」になって いますが、日本語版カードでは「好奇心」となっています。英和辞典を見ると intrigueには「人の興味をそそる」という意味もあます。取り敢えずカード上 の訳を尊重しました。 【略語の説明】 DS9=スタートレック:ディープ・スペース9 TKD=THE KLINGON DICTIONARY CKL=CONVERSATIONAL KLINGON PKL=POWER KLINGON SBX=スカイボックス社のトレーディングカード 内容に関するご感想をお寄せ下さい。 ML宛:klingon@ml.asahi-net.or.jp コウブチ個人宛:Owner-klingon@ml.asahi-net.or.jp Qapla’!