送信者: Shin'ichirou Koubuchi 宛先: Cc: Shin'ichirou Koubuchi 件名 : [klingon 18] Kronos Chronicle #4 日時 : 1996年11月27日 18:13 Eメールによるクリンゴン語情報誌 【クロノス・クロニクル】 第四号 - Qo'noS QonoS 4-DIch - - Kronos Chronicle #4 - 発行者:コウブチ・シンイチロウ 発行日:1996年11月27日 【句読点】 句読点とは、日本語なら点(、)や丸(。)など、英語ならピリオド(.)や コンマ(,)などのことです。テレビや映画に登場するクリンゴン艦のモニター 画面に映し出されるクリンゴン文字を見ると、どうも句読点らしきものは見当 たりません。TKDでもクリンゴン語の文章には句読点が一切使われていませ ん。そのため、長らくクリンゴン語のローマ字表記でも句読点は原則として使 わないという不文律がありました。しかし、実際には判読に不便なため最低限 ピリオドとコンマは使われていました。 句読点がないなんて、とても理解出来ないという方も多いと思います。しかし 地球でも古代の文書を見ると結構句読点が使われていない場合もあります。例 えば、古代ギリシアでは句読点はおろか、単語間の分かち書きすらありません でした。ギリシア文字が全文を通して連続して書かれていたのです。しかし、 これではやはり読みにくいので、すぐに分かち書きと句読点が開発されました。 クリンゴン語の場合は、単にデザイナーに言語学的な知識が欠けていたために、 一見常識とも思える句読点に気付かなかっただけの様に思えます。但し、視覚 的にはいかにもクリンゴン的なとげとげしいデザインでとても傑作です。 スカイボックス社のカードやPKLではピリオドとコンマが使用されています。 また、最近ではTKWの様に感嘆符(!)と疑問符(?)の使用も見受けられ るので、もはや句読点の使用は公認されたと思ってかまわないでしょう。但し 引用符(‘ ’)や二重引用符(“ ”)は声門閉鎖音の文字「’」と紛らわ しいので、使用は避けるべきでしょう。 引用符には、スラッシュ(/ /)やアスタリスク(* *)などの使用例が インターネット上では見受けられます。私は個人的に括弧を二重にして(( )) を使っています。まあ、あまり厳密に確定せずに、分かれば良いという程度で かまわないと思います。 【新年のあいさつ】 「板橋クリンゴン資料館」の「クリンゴン語入門」では、あいさつについての 解説がまだ出来上がっていません。従ってTKDをお持ちでない方はご存じな いかもしれませんが、実はクリンゴン語には決まったあいさつの文句がありま せん[TKD: p.10]。とは言いつつも我々日本人は季節柄、新年のあいさつはク リンゴン語でどう言おうかなどと考えたくなってしまうものです。そこで、こ こにいくつかの翻訳例をご紹介します。年賀状などに利用しましょう。(もう 遅いかな?) まずは「あけましておめでとう」です。「明けまして」は「新しい年が始まっ て」という意味ですから、「DIS chu' taghlu'」または「qaSchoH DIS chu'」 などと言えるでしょう。「おめでとう」はなかなか直訳しにくいですが、 「Quch:幸福な(be happy)」「lop:祝う(celebrate)」 「van:迎える(salute)」などを使って表現出来るでしょう。 DIS chu' taghlu' 'e' wIlop.  :私たちは新しい年が始まることを祝います。 qaSchoHmo' DIS chu' maQuch.  :新しい年が始まるので私たちは幸福です。 DIS chu' wIvanDI' maQuch.  :私たちは新しい年を迎えて幸福です。 「'e'」は「〜ということを」という意味です。 「謹賀新年」は辞書によると「つつしんで新年を祝うこと」とありますので、 やはり上と同様の文で表現することになります。「つつしんで」はクリンゴン 語には非常に訳しにくい表現です。英語の「respectfully」からの類推で、 「vuv:尊敬する、尊重する(respect)」を利用することが出来そうです。クリ ンゴン語では「〜して」に当たる表現がまだありませんので、動詞接尾辞の 「-DI'」や「-(taH)vIS」が流用されます。また、この場合には「-neS」が使 えそうです。 DIS taghlu' 'e' vIlopDI' jIvuv.  :私は新しい年が始まることを祝うと同時に敬意を表します。 qaSchoH DIS chu' 'e' vIlopneS.  :私は新しい年が始まることをお祝い申し上げます。 batlh DIS chu' wIvanneS.  :私たちは新しい年を名誉とともに迎えます。 次に英語の「A happy new year」を見てみましょう。これは単に「幸せな新年」 とだけ言っているのではなく本来は「I wish your happy new year」「I wish a happy new year for you」「I hope you live in a happy new year」 などが略されているものなので、「幸せな新年を」というのが正確な直訳です。 クリンゴン語でも目的語(〜を)は単語をそのままの形で使いますし、また 「Clipped Klingon」を応用出来るので、以下の直訳表現が可能でしょう。 Quchbogh DIS chu'!:A happy new year! ここで、「-bogh」を使用したのは、クリンゴン語で形容詞を重ねる場合の規 則がまだ示されていないからです。因みに省略しない文は以下の様になります。 SoHvaD Quchbogh DIS chu' vIneH.  :私はあなたにとって幸福な新年を望みます。 SoHvaD Quchjaj DIS chu'!  :新年があなたにとって幸せなものでありますように! さて、新年のあいさつにはよく「本年も」「今年こそは」という表現もよく使 われます。最後にこれらを使ってクリンゴン的な文章をつくってみましょう。 qaStaHvIS DISvam je jaghpu' law' Dajeyjaj!  :今年もあなたが多くの敵をたおせますように! DISvam'e' batlh bIHeghjaj!  :今年こそは立派に死ねますように! 【お詫びと訂正】 クロノス・クロニクル第一号でギリシア神話の神名を「Chronos」と紹介して いましたが、英語の場合「Cronos」または「Cronus」が正しい綴りでした。 間違えて覚えてしまった方々には申し訳ありませんでした。覚えていなかった 人はこれから覚えましょう。 【編集について】 今までは自動改行に任せていましたが、ローマ字だと単語の途中で改行が入っ てしまい、読みにくくなっていました。今号から1行35文字で改行を入れる 様にしてみました。同時に段落の表記形式をブロック体にしました。読み易さ に関するご要望も遠慮なくお寄せ下さい。 【略語の説明】 TKD=THE KLINGON DICTIONARY PKL=POWER KLINGON TKW=STAR TREK: THE KLINOGN WAY 内容に関するご意見、ご感想をお寄せ下さい。 メーリングリスト宛:klingon@ml.asahi-net.or.jp コウブチ個人宛:Owner-klingon@ml.asahi-net.or.jp Qapla'!