送信者: Shin'ichirou Koubuchi 宛先: Cc: Shin'ichirou Koubuchi 件名 : [klingon 1] Kronos Chronicle #1 日時 : 1996年9月29日 21:32 Eメールによるクリンゴン語情報誌 【クロノス・クロニクル】 第一号 - Qo'noS QonoS 1-DIch - - Kronos Chronicle #1 - 発行者:コウブチ・シンイチロウ 発行日:1996年10月1日 【はじめのあいさつ】  当メールは東京都板橋区在住のクリンゴン学者コウブチ・シンイチロウが主催する クリンゴン語メーリングリストの一環として、クリンゴン語に関する情報を発信する 、不定期刊行物です。クリンゴン語に関する最新情報を入手した際には、逸早く皆さ んにお伝えします。筆無精の私がいつまで続けれらるかは怪しいものですが、皆さん のクリンゴン語の学習・研究のお役立てれば幸いです。 【クリンゴンCD-ROM】  Simon&Schuster社から、スタートレックのインタラクティブCD-ROMの第3段として 「STAR TREK: KLINGON」が発売されています。これはシミュレーション形式で画面を 進んでいく内にクリンゴンの言語と習慣を学ぶことが出来るという驚くべき内容のCD -ROMです。今のところWindows版のみ。ぼちぼちソフトショップでも見かけるように なりました。Macintosh版も近日発売だそうです。因みに私はMacユーザーなので、ま だ体験出来ずにいます。Windowsユーザーの方は、感想等を発信願います。 【語源談義】  クリンゴン語を創作したマーク・オクランド博士は、随所に遊びを盛り込んでいる 様です。これぞ創造者の特権といったところでしょう。今回は単語のちょっと変わっ た語源について解説します。但し、あくまでも私個人の見解であることをご了承下さい。 ◇「QonoS[コノゥシュ]:日記、日誌、航海日誌、航宙日誌、ジャーナル、ログ(j ournal, log (n))」ギリシャ神話にはクロノス(Chronos)という神が出てきます。 ローマ神話ではサトゥルヌス(サターン)に当たり、天空の神、時の神、土星の象徴 です。英語には、これから派生した「chrono-:時に関する〜」という接頭辞があり ます。「chronology:年代学、年代記」「chronometer:精密時計、航海用時計」「c hronic:長期間の、慢性の」「chronicle:年代記、記録、〜新聞」等に見られます 。[TKD: p.58]にある通り、クリンゴン語のQ音は英語ではkr音に転音さますので、 QonoSはKronos=Chronosから来ていると解釈出来ます。  しかし、ここで1つ起こった問題は、クリンゴン語の知識を全く持たない制作スタ ッフが[ST6:TUC]でクリンゴンの母星の名称を「Kronos:クロノス」と決めてしま ったのです。そこでオクランド博士は苦肉の策として母星名の方にはQo'noSという具 合に「’」を入れたのではないでしょうか。  因みに、このメールの題名「クロノス・クロニクル」は「クロノス新聞」という意 味で、英語では「Kronos Chronicle」、クリンゴン語では「Qo'noS QonoS」となります。 ◇「'oy'[ッオイッ]:痛む、痛い(ache, hurt, be sore (v));痛み、苦痛(ach e, pain, sore (n))」中央ヨーロッパのユダヤ人たちの共通語にイディッシュ語と いうのがあります。そしてイディッシュ語には「oy」という苦痛や苦悩を示す感嘆詞 があります。アメリカへ渡った多くのユダヤ系移民を通じて割と知られた言葉だと思 います。特に[TKD: p14]で、H音の解説にイディッシュ語の「l'chaim:乾杯!」が 登場しているところを見ると、オクランド博士がクリンゴン語の「'oy'」をイディシ ュ語の「oy」から採った可能性は大いにあると思います。 ◇「ghIlaSnoS[ギラシュノシュ]:昔に起きた政治運動の名称(an ancient politi cal movement (n))」これは[TKW: p186]に新しく出てきた単語です。「yIvoq 'ac h yI'ol:信じよ、但し確証も得よ」ということわざが、詳細は不明だがghIlaSnoSと 呼ばれる政治的な運動に由来するのではなかろうかと解説されています。旧ソ連のグ ラスノスチ(情報公開)を彷彿とさせます。英語式の綴り「glasnost'」をクリンゴ ン語化するとまさに「ghIlaSnoS」になります。(外国語のクリンゴン語化の法則に ついてはまたいつか解説します。)  元来、社会風刺に満ちた旧TOS時代にはクリンゴンはソ連の風刺でした。その後映 画シリーズでは蒙古風になり、TNGではサムライの印象が強くなりました。[ST6: TU C]では再びソ連的印象が復活し、例えば、プラクシスの爆発事故はチェルノブイリ の、惑星連邦との和解は米ソまたは東西の和解になぞらえているそうです。 内容に関するご意見、ご感想等お寄せ下さい。 メーリングリスト宛:klingon@ml.asahi-net.or.jp コウブチ個人宛:Owner-klingon@ml.asahi-net.or.jp Qapla' !