Text written in Japanese and in Italian / teksto japane kaj itale

ちょっと大人の?

黒ネコが欲しかった

本物のワニ
飼ってるよ庭に
誓うよ永久に
君にあげる
でも約束さ ワニの代わり
おくれよ君の 黒いネコ

※おくれ 黒ネコ ネコ ネコ
君がくれた ネコは白いよ
おくれ 黒ネコ ネコ ネコ
嘘つきとは 遊ばないよ

生身のキリンだ
オモチャじゃないんだ
首が長いんだ
君にあげる
でも約束さ キリンの代わり
おくれよ君の 黒いネコ

※くりかえし

図体でかい
ゾウに天蓋
被せたいかい
君にあげる
でも約束さ ゾウの代わり
おくれよ 君の黒いネコ

※くりかえし

動物園を 丸ごとあげる
おくれよ 君の黒いネコ

おくれ 黒ネコ ネコ ネコ
君がくれたのは 白いネコ
ネコが黒でも 白でもいいけど
君にはなにも やらないよ

解題

誰もが知っているお馴染みの名曲『黒ネコのタンゴ』は、イタリアの童謡が原曲です。1969年にイタリアの童謡コンテスト「第11回ゼッキーノ・ドーロ」で3位に入賞して有名になりました。上の日本語歌詞は、イタリア語の原詩から可能な限り直訳したものです。曲に合わせて歌えますので、ぜひ覚えて歌ってみてくださいね。

歌詞の分析(ちょっと深読み)

歌詞を訳したきっかけは、たまたま動画投稿サイトで、ゼッキーノ・ドーロで原曲を歌う様子を伝える動画を見かけたからです。よく知っている日本語の歌詞とはずいぶん違うことに気付いて、気になって原詩を調べてみました。

お馴染みの見尾田みずほによる日本語版の歌詞は、幼い皆川おさむの可愛らしい歌声に乗せつつも、恋人に語っているようなちょっと艶っぽい雰囲気が漂っていますが、原詩のほうは色恋沙汰とはおよそ無縁で滑稽な内容に聞こえます。童謡なので、子供同士の他愛のない約束を歌ったものなわけですが、ちょっと深読みして大人の解釈も出来そうです。

ワニ、キリン、ゾウは男性が与えるものを、黒い毛に覆われたネコは女性が与えるものを、それぞれ象徴しているようにも思えます。だとすると、日本語版よりもかなり直裁的な内容が浮き上がってきます。

ヘビやトカゲなどの爬虫類はよく男性自身の比喩に使われますが、そのなかでもワニは超特大ですね。キリンの長い首やゾウの長い鼻が男性自身を連想させるのは、洋の東西を問わないようです。ネコは、例えば英語のpussyなどもネコちゃんの他に、隠語で女性自身を指すことがあります。

キリンについては、原詩では「プラスチックやぬいぐるみのキリンではなく肉と骨のあるやつ」だと言っています。ここでは「オモチャではなく生身のやつ」という感じに訳しました。ゾウの天蓋とは、インドのマハラジャが乗るような屋根付きのゴンドラのことです。ここでは、その手のゴム製品を彷彿とさせるような訳し方をしてみました。

まあ、ずいぶんと妄想たくましい解釈だとは思います。

ここで、白ネコが何を象徴しているのかが気になるところです。年増で白髪だったのか、何か病気だったのか、それとも単に黒色の反対として挙げただけなのか、そこまではちょっと考えが及びません。僕も完全に大人ではないようです……。

……と、ここまで分析して、後になって気付いたのですが、原詩のgatto neroは雄の黒ネコです。イタリア語では雌ネコであればgatta neraとなります。男女間の約束を歌ったのであれば、gattaにすべきかと思いますが、なぜgattoなのでしょうか。特に押韻の都合でもなさそうです。gattoは雄ネコと同時にネコ一般も示すので、特に気にせずに使ったのかもしれません。あるいは、あくまでも童謡なので、生々しさを緩和させるためにgattoにしたのかもしれません。しかし、あえて意識してgettoを使ったとしたら、約束の相手も男性ということになって、実は同性愛の歌だったなんて解釈は……深読みしすぎですかね。

イタリア語の原詩

Volevo un gatto nero

Un coccodrillo vero,
un vero alligatore
ti ho detto che l'avevo
e l'avrei dato e te,
Ma i patti erano chiari:
il coccodrillo a te
e tu dovevi dare
un gatto nero a me.

Volevo un gatto nero, nero, nero,
mi hai dato un gatto bianco
ed io non ci sto più.
Volevo un gatto nero, nero, nero,
siccome sei un bugiardo
con te non gioco più.

Non era una giraffa
de plastica o di stoffa:
ma una in carne ed ossa
e l'avrei dato e te.
Ma i patti erano chiari:
una giraffa a te
e tu devovi dare
un gatto nero a me.

Volevo un gatto nero...

Un elefante indiano
con tutto il baldacchino:
l'avevo nel giardino
e l'avrei dato e te.
Ma i patti erano chiari:
un elefante a te
e tu dovevi dare
un gatto nero a me.

Volevo un gatto nero...

I patti erano chiari:
l'intero zoo per te
e tu dovevi dare
un gatto nero a me.

Volevo un gatto nero, nero, nero,
invece è un gatto bianco
quéllo che hai dato a me.
Volevo un gatto nero,
ma insomma nero o bianco
il gatto me lo tengo
e non do niente a te.

YouTube動画リンク集

イタリア語オリジナル版
……1969年の第11回ゼッキーノ・ドーロでの様子です。歌っている女の子ヴィンチェンツァ・パストレッリちゃんのはすっぱな感じが可愛いですね。

イタリア語版その2
……子供向けのアニメ付きバージョンです。

スペイン語版
……歌のお兄さんエンリケと女の子アナのコンビで、歌っているのはアナちゃんのほうです。

日本語版その1
……お馴染みの皆川おさむ君の可愛い歌唱です。歌詞は原詩とは違いますが、こちらも素晴らしい魅惑の歌詞ですね。

日本語版その2
……『魔法少女まどか☆マギカ』の杏子ちゃん役の声優・野中藍ぽんも歌っています。

日本語版その3
……埼玉のミュージカル教室から誕生した「こけぴよ」のあおむしこと二木蒼生ちゃん9歳の時の動画。歌もダンスも絶品です!


作成者:姫楼しん(きろうしん)/公開日:2012-01-09/更新日:2015-09-06
ホームページ:蜃気書楼/コンケルスピーロ
Farita de Sin kiro el Japanio / Aperis en 9 jan. 2012 / Shanghita en 6 nov. 2015
Chefpagho: Konkelspiro