現在、「紋章」と言えばイギリスです。イギリスには中世以来紋章を管理する役所があり、現在でも認可を受けないと紋章が使えない様になっています。
紋章の話をする上で、一つ説明しなければならないことがあります。「紋章」と言えばイギリス、と書きました。しかしご存じのかたも多いでしょうが、実は彼の島にはイングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランド等の国があります。日本人が漠然とイギリスと言っている国の正式名称は「グレートブリテンおよび北部アイルランド連合王国」です。英語では United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland と言い、通常 United Kingdem や U.K. 等と略されます。そして、その連合のなかにイングランド England、スコットランド Scotland、ウェールズ Wales、北部アイルランド Northern Ireland の四つが含まれます。そして、アイルランド Ireland は別の国です。紋章を管理する役所は、イングランドとスコットランドにそれぞれ一つづつありますので、ここら辺の国名の区別が必要になってくるのです。
因みに、日本人がなぜ彼の国をイギリスと呼ぶのかと言うと、ポルトガル語のIngrez から来ているそうです。ポルトガル人は英語の English からその呼び名を採っています。
もちろん、イギリス(つまりイングランド、スコットランド等)以外でも紋章は廃れてはいません。かつてはヨーロッパの植民地であったアフリカでも、ヨーロッパの影響を受けつつもアフリカ独自のデザインを取り入れた素晴しい紋章が沢山あります。またガボンにはイングランド、スコットランド同様、紋章の役所があるそうです。フランスでは革命後、紋章は貴族の象徴であるとして廃止され、現在でも正式な国章(つまり国の紋章)は持っていません。しかしながら、貴族情報紙とでも言おうか現代の貴族の生活やインタビュー等を載せた雑誌が発行されており、これには登場する人の紋章がかなり小さくではありますが記載されています。せっかく革命で人類平等を宣言したのに、やはり現実には貴族の生活に憧れを抱くものです。ドイツでは東西統一後、地方自治体の整備が行われており、各地方の紋章も整備されつつある様です。東欧でも最近では、旧ソ連の崩壊、民主化等に伴って、彼の地での民族意識が高まり、社会主義時代に廃止した古い紋章が次々と復活させられています。今後はますます紋章に対する興味が呼び起こされることでしょう。