■ カプセルの溶解時間

判決では青酸化合物を薬用カプセルに詰めて飲ませたとした。飲み込んだカプセルから内容物が出てくるのに掛かる時間は、帰宅後に苦しみだすまでの時間や車での移動時間とともに、どこでカプセルを飲んだかということに深く関わってくる。

一審判決は,

「仮りに発病までの時間が一〇分位であつたとしても、必ずしもそれが被告人の利益な証拠となるものでないことは、既に叙上各証拠によつて明らかであり...」
として,IYさんがTTさん宅を退去してから発病するまでの時間の精度は問題でないと主張している.

「叙上各証拠」も疑わしく、カプセルを飲んだということも疑わしく、時間についても曖昧に済ませている。

長谷川淳による鑑定書(一審)では,カプセルの胃の中での溶解時間を数分ないし10分くらいとし,成人男子10人を被験者としたシンチグラム法による試験(再審請求1994年12月6日)では嚥下してからカプセルの一部が崩壊して薬剤が漏れ始めるまでの所要時間は平均5分だった.オーダーから考えて,時間精度はもっと重視されるべきであろう.


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