パワステの作動原理とスポーツ走行における問題点について

パワステの構造に付いて考えてみよう。普通の重ステの場合は以下のような順序でドライバーの手の力がタイヤに伝達される。

ステアリングホイール>ステアリングシャフト>ピニオンギヤ>ラックギヤ>タイロッド>タイヤ

ではパワステはどうなのか?

ステアリングホイール>ステアリングシャフト>トーションバースプリング>ピニオンギヤ>ラックギヤ>タイロッド>タイヤ

となる。トーションバースプリングが1つ余計なのだ。このトーションバースプリングが曲者だ。ドライバーの手の動きとタイヤの動きの間にはトーションバースプリングのネジレが介在するのだ。路面からの反力が大きくなるとトーションバーのネジレ角は大きくなる。トーションバーは油圧のコントロールバルブに直結している。トーションバーのネジレ角が大きくなると油圧コントロールバルブの開度も大きくなり、パワーアシスト量が増加する。油圧はラックギヤの隣に設けられたパワーシリンダーに作用しその力によってラックギヤは左右に移動する。つまりコーナリングフォースが増大して路面からの反力が大きくなってもトーションバーのネジレ角が増大し油圧が増加、アシスト量が増加する為にドライバーの手に路面からの反力が大きくなった事は伝わらないのだ。では、ドライバーが手に感じている反力は何なのか?普通の人は路面からの反力からアシスト量を引いた残りが手に伝わっていると考えているのではないだろうか?実は違うのだ。手に感じているのは路面からの反力ではなくてトーションバースプリングのネジレの反力に過ぎない。路面反力の増加に対抗しているのは油圧であってドライバーではないのだ。

エンジン回転数感応型のパワステの油圧はどうなっているのか? エンジン回転がある回転数以上になるとポンプが発生している油圧が下がるようになっている。本来は速度の上昇に応じて油圧を低下させるべきなのだがコストダウンの為にエンジン回転数によって油圧をコントロールしている。だから1速で高回転を維持するようなジムカーナ的な走り型をすると突然ステアリングが重くなったりする。私はこれが嫌いだ。

更に走行中も同様だ。定常円を描いて走っていたとする。徐々に速度を上げていくとフロントタイヤのコーナリングフォースも徐々に上昇する。重ステの場合はこのコーナリングフォースに比例してステアリングの反力も強くなる。限界を超えてスリップアングルが大きくなってくるとコーナリングフォースは減少し手に伝わる反力も減少する。これが重ステ特有のダイレクト感であり、ステアリングインフォメーションと呼ばれる感覚である。

では同様の条件でパワステだとどうなるのか?徐々に速度を上げていくと路面からの反力は強くなる。するとトーションバーのネジレが増す。ネジレが増すと油圧が上がりアシスト量が増加する。結果、ドライバーの手に伝わる反力は増加したトーションバーのネジレの反力が伝わるだけでコーナリングフォースの増加による路面反力の増加分に対抗するのは油圧だ。だからパワステ車はコーナリングフォースの大小に関わらずステアリングの保蛇力はほぼ一定となるのだ。トーションバースプリングのネジレが増加した分にともなっての操舵力の変化が有るのみなのだ。

さぁ!ここまで読んだ貴方はもうパワステなんか捨てるしかない! マツダ部品に行って重ステASSYを注文してしまおう! お値段は3〜4万円だったと思う。交換作業はそんなに難しくない。足回りの交換やブレーキパッドの交換が出来るくらいの技術が有ればパワステから重ステに改造するくらいは出来ると思う。エアコン付きの場合はエアコンコンプレッサーを回すベルトとアイドラプーリーも買わなければならんと思うけど。もし要望が大きいようなら実際の交換作業のやり方に付いてもここで紹介しましょう。

でわでわ。