前期B6エンジンをバラす

90年式NA6CEから降ろしたB6をバラしてみた。クランクシャフトが割れると言われる前期型のB6である。6万キロ走行くらいらしいが、中古車だったのでメータは信用できない。実走行は何キロなのかは不明である。


コレだ。実はすでにクランクが死んでる。


これはクランクタイミングプーリー部のアップ。位置決めのキーに対して溝が広がってるのが解かるだろう。クランク前端の強度不足により、キー溝が広がってしまうのだ。面倒だから「クランクが折れる、割れる」などと表現しているが、本当に折れたり割れたりするわけではなく、実はキー溝が広がってしまうというトラブルだ。写真のタイミングプーリに4つのネジ穴が有るが、この6mmのネジ穴にクランクプーリを固定している。つまりクランクプーリにかかるベルト類で、発電機、A/Cコンプレッサ、P/Sポンプ、などの力はすべてタイミングプーリが受け止め、その力はキーが受け止める。んで、キー溝が負けて変形すると。これって完全な設計ミスで、本来ならリコールになってもおかしくないと思うんだけど...。後期型では対策されていて問題無い。91年式のFire号はすでに対策されている型だ。


写真がちょっとブレたけどこれは吸気ポート。クランクプーリの位置が狂うとバルタイも狂う為、極端に遅いバルタイでしばらく走った事になる。結果的にポートや燃焼室はカーボンで真っ黒になってた。吸気バルブから若干オイル下がりしたような形跡も認められる。


ヘッドカバーを開けた。オイル管理は良くも悪くもなくってところか。スラッジで真っ黒って事はないが茶色く変色してる。本当にオイル管理が良かったエンジンは何万キロ走ろうが綺麗な銀色である。


ウォータポンプからの水漏れ跡を発見。写真では解かりにくいが、ドライバで指している場所に水が流れた跡が有る。緑色の結晶がずーっと下まで尾を引くように残ってた。ロドスタの場合、ドバドバと漏れるわけではなく、滲むように徐々に漏れる事が多いようだ。もちろん酷くなればドバドバと漏れるだろうけど。距離を走ってるロドスタで水が徐々に減る場合はウォータポンプを疑ってみるべき。タイミングベルト交換時にはウォータポンプも一緒に交換してしまう事を強く勧める。


ヘッドを降ろした。バルタイが狂ってた関係でカーボンは多い。


クロスハッチは割と綺麗に残ってる。側圧方向だけは薄くなっているが、それでもレストアの時のFire号よりマシ。これくらいだとこのまま使うかクロスハッチを切り直すか悩むところだね。


カーボンは全体的に薄く付いてるが、それほど酷いものではない。不完全燃焼で溜まったのだろう。


ヘッド側も同じくカーボンが溜まってる。


だが燃焼室形状は当たりみたい。スキッシュの形状もバラ付きが無くて綺麗だし、バルブシートの段差も少ない。鋳肌も綺麗な方だろう。燃焼室の深さも揃ってるし、B6としては当たりヘッドだろうなぁ。ちなみにFire号のヘッドとは鋳型が違うようだ。


クランク前端はこのように変形する。こうなったら正攻法では再起不能だ。このキー溝を変形させた力は何なのだろう? おそらくA/CのクラッチがONになる時の衝撃がキー溝を変形させているのではなかろうか? 低回転でももちろんなのだが、高回転でA/CクラッチがONになる時の衝撃はかなり大きいハズ。その力が徐々にキー溝を広げていったのではないかと私は思う。これ、全部が全部こうなるわけでもないようで、大人しく走ってても壊れる場合も有れば、過激に走ってても壊れないヒトもいる。A/Cを使う頻度とかA/Cを使ったまま高回転まで回して走っちゃうヒトがこうなるんじゃないのかなー? ま、私の勝手な想像だけどね。A/C付きのロドスタの事は良く知らないモン(笑)。

さて、このエンジンどうしてくれようか?(^^;

このトラブルが発生するのは対策前の前期型B6のみです。対策前と対策後は車体番号で判別可能です。その車体番号を知りたい人はこちらへどうぞ。知らない方が幸せって事も有りますので、良く考えてから見てね(笑)。

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