エアフロコントローラーテスト

A○○X製の "Super A○C"なるモノをテストしてみた。ご存知だと思うがこの商品はエアフロ(または負圧センサー)出力信号に割り込んで信号を増減してしまうモノ。燃料補正装置だと思っている人がいるようだが、それは間違い。あくまでもエアフロ信号を増減するモノなので勘違いしないで欲しい。800、2400、4000、5500、7200、の5つの回転域に分けてグラフィックイコライザーのような感じで調製が出来る。

テスト車両は58年式AE86。中古で買ったらA○Cが最初から付いていた。エンジンチューンの内容は不明だが、某有名86専門ショップご自慢のエンジンらしい。んが、滅茶苦茶に調子悪い。すっげぇ遅い(笑)。本人と某ショップの店員が一緒にA.F.Cの調製をやってみたもののうまくセッティング出来なかったとか。6500回転で頭打ちになる。これではノーマル4A-Gの方がマシってものだ。とりあえずスロットルポジションセンサーを調整し直してから点火時期を基準値にセット。スロポジの調整はメーカー基準値ではなく、私独自のマル秘値にセット。これだけでアイドルと中低速はかなり改善された。が、5000以上が全然駄目。6500で頭打ちする現象も変わってない。そこで、高回転域を一気にマイナス側にしてみると6500から7800まで一気に回るようになった。試しにプラス側に回すと尚更吹けなくなる。5000回転域もマイナス側にした方が良い。他の回転域もプラス側とマイナス側の両方に大袈裟にいじってみてテストを繰り返す。結果、全体的にマイナス側に回した。それぞれの回転域でマイナス側に回す量はほとんど同じ。アイドル部分もマイナス側に回した。それって全体的にマイナスにしただけじゃん(笑)。でもすっごく調子が良くなった。と言うか普通になっただけかも(笑)。まともな調子になったのでエンジンの仕様が大体想像できた。圧縮はほとんどノーマルか、TRDの0.8mmメタルガスケットが付いている程度だろう。カムは明らかにノーマル。ショップご自慢のエンジンらしいが、きっとO/Hついでにポートを軽く削ってTRDのガスケットを組んだ程度と思われる(勝手な想像だけど多分当たりでしょう)。

ここまで読むと、この手の補正装置が有効で使える商品であるかのように見えるが、私はお勧めしない。というよりは絶対に買わない方が良いと思う(笑)。まず、今回のテスト車両はD-JetoroのAE86。D-Jetoroってのは多少エンジンをいじっても全域が濃い方向に狂うなんて事はない。大きなカムでオーバラップがでかい場合は、アイドルや低回転の低負荷域で負圧が下がってしまう為に濃い方向に狂うが、吸気効率が上がってくる高回転になれば今度は薄い方向に狂うのだ。なのに今回のAE86はほとんどノーマルに近いと思われるエンジンで全域が濃い方向に狂っていた。これっておかしい。おそらく負圧センサーとECUの間にAFCと言うデバイスが1個入っているので、調整ボリュームを"0"に合わせておいても濃い方向に狂ってるんだと思う。だから全域でマイナス側に回しただけで調子が良くなったのだろう。きっとA○Cを外して元の配線に戻すだけでも同じように調子は良くなると思う。それじゃ意味ねぇじゃん(笑)。

他にもこの手のデバイスの問題は多い。冒頭に書いたように、これは燃料を増減するのではなく、エアフロ信号を増減するモノ。エアフロ信号が変化すると点火時期も大きく狂う。今回のテストではマイナス側に大きく回すとどの回転域でも強力なノッキングが出た。ターボじゃあるまいし薄くしたからと言ってノッキングが出るなんてことはない。ましてや燃焼温度が低い低回転域で薄くしたくらいでノッキングが出まくるなんてことは無いのだ。つまり、エアフロ信号(または負圧センサー)がマイナス側に補正されると、ECUは実際の負荷よりも負荷が小さいと思い込んじゃう。そうすると点火時期は大きく進むのだ。負荷が小さければ点火時期は進むし、負荷が重ければ点火時期は遅角する。点火時期の制御はエアフロ信号(または負圧センサー)に直結しているのだ。だから高回転でエアフロ信号(または負圧センサー)をマイナス側に補正した場合、点火時期は進み燃料は薄くなるわけ。壊れてくださいってお願いしているようなモノ(笑)。あ〜おそろしや。

点火時期が狂うのを無視して燃料だけに的を絞って考えた場合でも問題は多い。例えば10%マイナス側に回した場合に燃料はどれくらい薄くなるのか? 10%薄くなると思ったら大間違い。実はどれくらい薄くなるのかまったく予想できないのだ。基本噴射量が10%減るのは確かだが、それに対する高負荷増量係数が変わってくるからわけ解からなくなる。高負荷増量マップはエアフロ信号(または負圧センサー)と回転数から成る2次元マップなので、エアフロ信号が10%狂うとマップを読む位置が変わってくる。つまり、調整前と調整後でマップを読む位置がどこからどこへ移動したかによって、基本噴射量に対して採用される高負荷増量係数が変わってしまう。だからまったく予想できない。あ〜おそろしや。

同じく点火時期の変化も予想できない。マップを読む位置が変化してしまうのだから、大きく狂う事も有れば大して変わらない事も有る。マップの位置によって違うのだから当然の事。だから10%調整したら点火時期が10%進む訳ではないし、一定量進む訳でもない。ランダムに進んだり遅れたりする。あ〜おそろしや。

回転数ごとに別れたダイヤルによって、自由に燃料補正が出来るかのように思われているエアフロコントローラーだが、燃調ではなくてエアフロ信号補正装置に過ぎないのだから、エアフロ信号をいじった事による大きな副作用を考えたらこんな物使わない方が良いのだ。

エアフロ信号(または負圧センサー)を回転数ごとにいじるってのはROMチューンで言えばVQ変換テーブルをいじる事に等しい。燃料マップや点火マップには手を付けずに、VQ変換テーブルだけをいじって高性能なROMを作れる訳が無い。それと同じ事をお気軽にダイヤルで出来るようになっているだけなのだ。VQ変換テーブルをいじるには、非常に高度な知識と経験を要する。ショップROMでもここに手を付けてあるモノは無い。エアフロ信号と言うのは触ってはいけない禁断の領域なのだ。お気軽にダイヤルで調整しようなんてとんでも無い事なのだよ。あ〜おそろしや。

# 同様の理由で私はV○Cも大っ嫌いです(笑)

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