100V MIG溶接機

100V電源で使えるMIG溶接機(半自動溶接機)が発売された。ABITでデモをやってたので参加してきた。その様子と溶接についてちょいと書いてみましょ。私は溶接の資格を持ってるわけじゃないし習った事も無いのでシロート意見だと思って読んでね(笑)。

溶接には多くの種類が有るが、一般的には電気溶接とガス溶接の2つがメイン。

ガス溶接はアセチレンと酸素を混ぜてバーナで高温燃焼させるモノ。これに溶接棒を使って溶接する。基本的には鉄材の溶接にしか使えない。電気溶接に比べると効率悪くて作業は遅い。しかし、溶接棒と母材の溶け方を別々にコントロールできるので、薄板でも厚板でも出来るし隙間が有っても埋める事が出来るので自由度は大きい。母材の厚みに合わせて火口の太さと溶接棒の太さを選ぶ。慣れとコツが必要で技術が要求される。私がもっとも得意とする溶接はコレ。が、廻りが燃えちゃうとか、酸化しやすいとか、熱歪みが凄いとか、強度も低いなどの欠点は多々有る。

電気溶接はアーク(放電の火花)を発生させる事で金属を溶かして溶接するモノ。普通の電気溶接、MIG溶接(半自動溶接)、TIG溶接(タングステン電極溶接)、が主なモノ。

普通に電気溶接とかアーク溶接って言うと被覆アーク溶接棒を使ってやる普通のヤツを指す事が多い。建築現場でバリバリやってるのとか、ホームセンタなどで1〜3万円くらいで売ってるのは全部コレ。もちろん私のガレージに有るのもコレだ。溶接棒の種類を換える事で、鉄鋼、ステンレス、鋳鉄、などの溶接が可能。電極を母材と溶接棒に接続し、母材と溶接棒の間にアークを発生させ母材と溶接棒を同時に溶かして溶接していくモノ。溶け込みが深くて機械的強度が高いらしい。溶接棒にはフラックス(被覆材)が塗ってあって、これがケムリを出しながら融けてアークを安定させると共に、溶鉄の酸化急冷を防ぎ材質改善と巣が入るのを防ぐ。が、このフラックスが溶けたモノが表面に盛り上がって堆積しながら固まる(固まったモノをスラグと呼ぶ)ので、遮光メガネ越しに見ていると綺麗に付いた様に見えるのにスラグを落とすと全然くっついてないって事も多々有り。小さな円をオーバラップさせながら描くようにして溶接していくのだが、コレがなかなか難しくてコツが必要。スラグの下に有るであろう溶接部を想像しながら溶接していく。アークスタートも慣れないと難しく、アークを連続して綺麗に発生させるのは難しい。アークが連続して発生したとしても、母材と溶接棒の距離を自分で調整しながら進んでいかなければならないのでなかなか難しい。母材の厚みに合わせて溶接棒の太さを決めて、溶接棒の太さに合わせて電流を調節するのだが、その調節はカンと経験が頼り。電流が強すぎると母材に大穴が開くし、弱すぎるとアークが安定しないとか溶接棒がくっついて真っ赤になる。隙間が大きいとなかなか溶接出来ないのも難点か。溶接機は安く買えるが使いこなすのは難しいと言える。私がやった事有る電気溶接はコレだけだ。これ以外は知らない(笑)。

電気溶接の中でもっとも簡単で難易度が低いのがMIG溶接だろう。なんたって半自動って言うくらいだ(笑)。MIG溶接は、母材と溶接棒に電極を繋いでアークを発生させるってのは前述のモノと同じだが、リールに巻かれた細い溶接棒が自動的に送り出されてきてくれるモノ。一般的にはCO2などの不活性ガスを流しながら溶接していく。この不活性ガスの働きで溶接部の酸化を防ぐ。スラグが積もる事が無いのでアーク溶接より簡単。細い棒を使用するので母材に穴が空く事も無く、薄板でも比較的簡単に溶接できる。電流の強さと送りの速さの調節をやらなければならないが、前述のアーク溶接よりは遥かに簡単。アーク溶接に比べると溶け込みが浅く盛りが大きい。不活性ガスにアルゴンガスを使うとアルミ溶接も出来る。アルミ鋳物は出来ないけど。

TIG溶接は母材に電極を繋ぎ、もう一方の電極にタングステン電極を使う。電極を溶かさずにアークだけを発生させる。そのアークに溶接棒を近づける事で溶接棒と母材を溶かしていく。溶接棒と母材それぞれの溶け方を自由にコントロール出来るあたりは、バーナとアークの違いは有るものの要領はガス溶接に似てる? 溶接棒の素材を換えてやる事で多くの種類の母材に対応出来る。アルミ鋳物だろうがチタンだろうがなんでもこい。盛りや溶け込みも自由に出来るし自由度は高い。が、溶接機そのものがメチャンコ高価だし技術も必要。

で、今回のABITでの溶接実演会はMIG溶接機だ。


会場の様子。


↑こんなの。従来なら200V動力電源でしか使えなかったMIGが、家庭用100V電源で使えて実売10万円以下の価格で発売。これはまさに画期的。しかもアルミまで溶接出来るらしい。今までMIG溶接機に手が出なかった企業ユーザはもちろん、個人ユーザなどでも手が届く価格である。こんなモンで本当に使えるのか???

電流の強弱は無段階ではなく、HiとLo、1と2、の2つのレバーの切り替えで4段階の電流に設定する。ワイヤの送り速度はダイヤル式無段階調整。母材の素材に合わせてリールをアルミ用、スチール用と付け替えて使う。スチール用の方はフラックスが塗ってあるのでガスを使わなくても溶接可能。アルミはアルゴンガスを接続して使う。電源は20A契約でもOK。実際に20A契約の電源で作業してみたが最大電流でも問題無かった。

(撮影ed by Turu)
さっそくアルミを溶接してみる私(笑)。初めて挑戦するMIG溶接で初めて挑戦するアルミ溶接。コツを掴むまではちょっと苦労したが、一発目からイワタの営業さんの度肝を抜く仕上りだった(笑)。つーかイワタの営業さん、もうちょい練習してから実演しようよ(笑)。


実際には遮光メガネを使わずに直接見てはいけません。こんな激しいアークにちゃんと露出が合ってしまうNikon Coolpixにはビックリ。


真ん中の玉になってごろごろしてるのがイワタの営業さんが付けたモノ(笑)。その上下の綺麗なビードがならんでるのが私が付けた跡。


溶接の達人F氏の溶接痕。美しい。TIG溶接で付けたかと思うような仕上り。

私とF氏の溶接を見たイワタの営業さんは 「...私はもう今日はデモしません。御二人に任せます」 と言って凹んでた(笑)。

私はアーク溶接の要領と同じだと思って円を描くようにして進んでいたのだが、F氏がやってるのを見たらどうやら要領が違うらしい。進む方向もアーク溶接と逆だった(笑)。それを知ってからは私もコツを掴んで調子に乗った。ちょっと練習してMIGとアルミに慣れれば、なんでも作れそうな気がする。


こちらはお馴染みのど〜だバーの素材。6065系押出し材である。もちろんど〜だバーはTIG溶接で作られているのだが、MIG溶接でコイツが綺麗に付くか? このような厚みの有る素材はバーナで温めておいてから溶接しないと上手く溶け込んでくれない。冷たい素材の上で溶けた溶接棒が玉になって転がるように固まる。TIG溶接では先に母材にアークを飛ばして温めてから溶接棒を付けていけるが、MIGではアークスタートと同時に溶接棒が溶け出すのでそうはいかない。TIGでもある程度母材をバーナで温めておいてからやったほうが楽らしいし。しかし会場にバーナは無い。

そこで関係無い部分でバチバチとアークを飛ばして母材を温めてからやってみた。


私の作品(笑)。右から左に進んだわけだが、より温度が上がってくる後半の方が綺麗に溶け込んでいるのが解かるだろう。最初からある程度バーナで温度を上げておけばもっと綺麗に付くハズ。あと、私がもっと練習すればもっと綺麗に付くハズ(^^;。

このあと、ど〜だロールバーに使用されている素材の切れ端と、某インテークパイプ用のφ70のパイプなどのパイプ同士の溶接に挑戦したが、温めてからやった部分は綺麗に溶接出来た。これは十分に使えます。

1mmほどのアルミ薄板でもやってみた。穴が開く事も無く、目の字断面だのロールバー素材に比べればすごく簡単。薄板だとちょっと溶け込みが深すぎる傾向が有るようだが、穴が空かないんだから良いだろう。

スチール素材でガスを使わずにフラックス付きリールを使った溶接もやってみた。これはアルミとちょっと要領が違うようで、アーク溶接と同じくオーバラップするように円を描きながら左から右に溶接した方が綺麗に付いた。それでもアーク溶接に比べりゃ超簡単で薄板でも穴が開かないしとっても楽。

私は、ど〜だバーやRSアイザワの鉄板とかオオノの棒などを付ける時、ボディパネルやクロスメンバなどの薄板をいつもアーク溶接で苦労しながら付けていたのだが、MIGが有ればすごく簡単だっただろうね。宝くじが当たったら買います。まてよ? 宝くじが当たったらMIGなんてケチくさい事言わずにTIG溶接機を買った方が良いのかな?(笑)

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