ROMチューンについてはじめに..

理論空燃比、出力空燃比、要求空燃比、フィードバック制御、点火時期、火炎 伝播、デトネーション、ノッキング、吸入空気量、負荷、慣性過給効果、etc. ..これら全ての言葉の意味を具体的に理解していますか?これらの知識なくし てROMチューンは成り立ちません。パソコンとROMライタがあればROMを書きかえるのは実に簡単です。だからといってソフトウェアであるデータを書き換える事を簡単に考えないで頂きたいのです。「ポートを削ったり圧縮を上げたりするの は無理だけどROMを書きかえるくらいは簡単だから自分でも出来そうだ。」などと思わないで欲しいのです。ポートを削ってもエンジンは壊れませんが、燃料を削っていけばエンジンは壊れます。エンジン本体をバラしたり削ったりするには 特殊な技術や工具、場所などの環境も必要ですがROMチューンするだけならそん な大掛かりな物は必要ありません。しかし、エンジン制御の中枢部分に手を入れるんだという覚悟を持ってやって欲しいんです。はじめに書いた各種の専門用語を私はここで解説するつもりはありません。それは自分で勉強して頂きたいので す。

このHPで私が書いたマップの遍歴すべてを公開しようかとも思ったのですが、 あえて公開しない事にしました。なぜなら、先に上げたような専門的知識をお持ちの方ならば私のマップなど参考にしなくても自分のイメージを持てる筈だから です。逆に専門的知識の無い人が意味も解からずに形だけ私のマップを真似してROMを書くような事は避けて欲しいからです。キツイ事を書くようですがこれは私の本音です。

ROMというのはエンジンの燃焼状態をすべて制御している物です。つまりROMを 理解するには内燃機関の原理や燃焼の理論などが複雑に絡んでいます。ROMを作るにあたっていろいろと勉強していけばもっと多くの事 が見えてくる筈です。皆さんも是非、内燃機関に興味を持ってもっともっと研究して欲しいと思います。研究すればするほど雑誌やショップなどにあふれている 各種の情報がいい加減で信用できない物である事が分かってくると思います。(笑)


ROMチューンの実践

まずはROMの中身を覗いてみましょう。普通のバイナリファイルエディッタで中身を覗くと以下の様に見えます。(これは秋月のROMライターに付属のソフトで 表示しています)一番左側の位置にはアドレスが表示されているのですが、アドレスは著作権の問題が絡むらしいのでボカシを入れました。(^^;

 

見ての通り何が何だか解からない16進数の羅列です。画面をスクロールさせて も同じような数字の羅列が延々と続きます。この中から燃調マップ部分や点火時期マップ部分などの目的のアドレスを探さなければなりません。なんとかして探して下さい。私も目が痛くなるほどディスプレイとにらめっこして各種のアドレスを把握しました。(^^;

実際の点火と燃料のマップ部分を書き出してみましょう。以下のようになっています。これはB63Hの物です。B61のマップではこれとは違ったデータになって ます。

左が点火時期マップ、右が燃料マップです。

 

それぞれ縦軸は吸入空気量(=負荷=アクセル開度と考えてもらっても結構です) 、横軸は回転数になります。左上がアイドリング、右下が全開の最高回転数になります。アクセルを踏んで吸入空気量が増えるとマップを下に進み、回転数が 上がるとマップを右に進みます。これらのマップを書きかえる事で点火時期や燃料の濃さを自由に変更する事が出来るのです。

 
燃料マップの方は右上が「00」になっていますが、これは噴射量または噴射時間が0と言う意味ではありません。ロドスタのマップは噴射時間ではなくて基本噴射量に対する増量補正係数を示しているらしい。したがって「00」と言うのは増量補正無しで基本噴射量のみで制御されていると言う意味になります。基本噴射量はL-ジェトロの場合は一般的に以下の式で決まります。

基本噴射量=係数*エアフロ測定値/回転数

これで基本的には理論空燃比付近の濃さになるわけです。これに燃料マップに書かれた増量補正係数を掛けて噴射量が決定します。もちろんこの他にも吸気温 度補正係数、水温補正係数、始動時増量補正係数、フィードバック補正係数などの各種補正があるのは言うまでもありませんが、重要なのは上記のマップに書かれた内容である増量補正係数です。ですからこの補正係数をいじってやる事で濃くしたり薄くしたりするわけです。

RYOさんの手によってこの数字の意味が解明されています。RYOさんからの一任を受けてその意味をここに公開します。この燃料マップの数字を10進数に変換して約0.8を掛けるとそれが補正係数になります。例えば34hを10進数に変換すると52となり、それに0.8を掛けると41.6となる。この場合燃料噴射料は基本噴射料に対して41.6%増量される事になります。14.7の空燃比が 14.7 / 1.416 =10.308.... となり、空燃比は約10.3くらいになるわけです。

点火時期の数字の意味は以下の式で実際の点火時期に変換できます。この数式もRYOさんが作ってくれました。

(数値−56h)/4.5+10

例えば アイドリング時の56hなら 計算結果は10度となり、再高回転時の86hならば

(86h-56h)/4.5+10 = 20.66666666667

となり約21度となるわけです。点火時期のイニシアルを変更してある場合はこの限りでは有りません。基準値のBTDC10度に合わせてある場合の式です。

ROM内部のプログラムレベルでは違う式を使っているかもしれません。しかし、実測によりこの式でほぼ正しい値が得られている事が確認されています。

では16進数のマップを実際の点火時期や空燃比を表す3Dマップに変換してみましょう。左が空燃比、右が点火時期になります。点火時期の縦軸は実際の進角度、燃料の縦軸は空燃比になります。


1)ノーマルのB63Hタイプのマップ↓

 

上はノーマルECUのB63Hタイプのマップです。なんでこんな形をしているのか謎です。ところどころにある意味不明の谷間とかイマイチ納得できません。4500以下の燃料は結構薄いんです。この辺を増量してやるとトルク感が出てきます。高回転はかなり濃いのでそのあたりはもっと薄くしてしまいましょう。

 

(2)某チューンドショップが書いたB63Hベースのマップ↓

上のマップは某チューンドショップのROMです。これは私のエンジンに合わせてオーダーしたオーダーROMです。つまりハイコンプ+ハイオクに合わせてある筈なのです。点火時期は全体的に進んでいますが、まだまだ余裕があります。はっきりいって全然駄目です。(笑) 燃料マップもかなり増量してますね。最高回転ではグラフの縦軸からはみ出しています。こんなに増量してどーするんだ?ってくらいに増量してます。ノーマルでも濃すぎるのに高回転側でこんなに増量しても吹け上がりは良くなりません。何を考えてこんなに増量しているのか私には理解できません。(笑)ちなみにこのROMを付けて走ると黒煙が出るし、マフラーから直径30Cm以上あると思われる強力な火が出ます。(^^;;;;

 

(3)某チューンドショップが薄めにセッティングしたと称するB63Hベースのマップ↓

この上は某チューンドショップが薄めにセッティングしたと称するROMのマップです。これもやはり私のエンジンに合わせて書いてもらったオーダーROMです。(2)のマップよりも薄めにして高回転での切れの良さを追求したつも りらしいのですが、どこが薄いのかと笑ってしまうようなROMです。点火時期は(2)のマップよりも更に遅れています。ハッキリ言って全然駄目です。ショップチューンのROMなんか全然信用できません。高価なショップチューンのECUを買うよりもやっぱ自分でマップを書いてしまいましょう!(^^)


ではどのようにいじれば良いのか?好みにもよりますので何とも言えないのですが、私の場合は低回転域の点火時期はノーマルより大幅に遅らせています。これはノーマルカム+ハイコンプ仕様だからって事でもあるんですが、ノーマルROMは低回転でノッキングが出やすいのでエンジン本体がノーマルでも遅らせた方が良いと思います。ハイオクを入れるならば進めてもOKですが、圧縮比がノーマルならハイオク入れる必要もないでしょう。レギュラーの方がノッキングが出やすいので点火時期のセッティングも楽に出来ると思います。ハイオクを入れてしまうと進めすぎてトルクが低下するような状況でもノッキングはほとんど発生しないので点火時期のセッティングが難しくなります。私はハイコンプ仕様なので ハイオクを入れていますが、ハイオクを入れてしまうとなかなかノッキングが出ない為点火時期のセッティングは難しいです。

点火時期は上記のようにノッキングを目安にセッティングが可能なんですが、燃料はなかなか難しいです。一応計算によってROMに書き込んだ16進数から空燃比を算出できますが、回転数や負荷によって実際の空燃比は計算とは異なる値になります。大抵の場合狂う時は計算よりも薄い方向に変化するようです。特に4000回転から5500くらいの中負荷から高負荷にかけての範囲ではかなり薄い方向にずれます。そうかと思うと回転数や負荷によってはほとんど計算通りの空燃比になる部分も有ります。これは私の車での話なので他車ではどうなるか解かりません。マップの場所によって違ううえに点火時期を変更すればまた変ってきますので計算通りにはいきません。私は東名自動車の空燃比計を目安にセッティングを行なっています。ノーマルに比べると高回転域は思いっきり削って薄くしていますが、今の所は出力空燃比よりもすこしばかり濃い状態にして安全マージンをある程度確保しています。低中回転ではノーマルよりも大幅に増量し、より出力空燃比に近づけています。出力が欲しい領域では出力空燃比に近 づける、そうでない部分では理論空燃比付近での制御になるようにしています。

某チューニングショップに言わせると「マフラーとエアクリーナーを交換すると空燃比が薄い方向に狂う為、大幅に増量する必要がある」との事なのですが、NA6CEの場合はフラップ式のエアフロを使っているので吸入空気量が増えればその分基本噴射量も増える為、吸排気系をいじったくらいではほとんど空燃比は変化しないようです。少なくとも私の車の場合は空燃比計を使って調べてみても薄くはなってません。ホットワイヤー式のエアフロの場合は狂ってくるかもしれませんのでNA8Cの人は気を付けて下さい。更に某チューニングショップが言うには「一昔前は薄くしていく事で鋭い吹け上がりを狙うようなチューンが常識でしたが、最近では濃くしていく事でトルク感を増強するのが主流で、薄くするようなチュ ーンはあまりやらない。」だそうだ。(笑) しかし、NAエンジンの出力空燃比が12 〜13くらいという事実は今も昔も変り無い訳ですからそのあたりを狙っていくのが当然であり、出力空燃比を大幅に越えるような濃さにしたところでトルク感もクソも無いです。ノーマルでも高回転ではかなり濃いのですからそれを更に増量していくようなチューンは疑問です。人の話しによればショップチューンのROMの多くは増量気味のチューンになっているらしいです。やっぱショップチューンは信用できません。(笑)

燃料や点火時期の他にはレブリミットの変更やスピードリミッタのカットも出来ます。スピードリミッタはロドスタの場合はどーでも良いような気がしますが 、レブリミットを変更したい人はたくさんいると思います。が、ただ単にレブリミットを変更するのは危険です。燃料や点火のマップはそのままでは7000回転ま でしか対応してないからです。8000回転まで回した時にCPUがマップのどこを読 むのかは未知数です。日産の一部車種のECUではマップの最高回転を過ぎると恐ろしい事にアイドリングの部分を読んでしまうというのは有名な話。全開最高回 転でアイドリング部分のマップを読み込んだらエンジンが壊れる可能性は大です 。日産車と違ってロドスタのROMチューン情報はあまりにも少ない為ロドスタのECUがどーなっているかはまだ謎です。しかし、私の手元に有るショップチューンのROMではマップの横軸格子の幅を変更する事でノーマルを大幅に越える高回転 までマップを対応させているらしいと言う事までは解かっていますが、実際にど アドレスを書き換えることでマップの横軸格子を変更しているのかはまだ解かっていません。これがそうなんじゃないかな〜って思っている部分は有るのです が正確な解析はもうちょっとヒマになってからのお楽しみにしておきます。レブリミットの変更だけなら簡単なんですけどね〜。(^^;

97.12.21 追記: 上記のように書きましたがレブリミットを変更してもマップの最高回転の位置からはみ出したりアイドリング部分を読んだりする事は無いようにプログラムされている事が解かりました。また、私が購入したショップチューンのROMはマップの横軸格子を変更してあると言う話がウソであった事も判明。回転数変換テーブルにはまったく手が加えられてませんでした。ソフトウェア的な解析からも物理的現象観測による解析からも以上の事実が判明しましたです。

98.7.10追記
現在ではマップの横軸格子の変更も可能となりました。マップの縦横のマスの数を変更する事も可能です。13X15のマップを16X16とか32X32にしてしまうこともやろうと思えば簡単です。基本噴射量を決定する係数の変更も可能です。 マップ格子の変更はB6でもBPでも可能です。(BPの場合は基本噴射量を決める係数部分はまだ確認していません。) 現在レブリミットアドレスが解析されているのはBPF3、BPJ1、B63Hです。

 


余談になりますが、最近はやりのエアフロ信号をいじって燃調を取るような商品についてちょっとだけ。この手の商品はお手軽に効果的な燃料補正ができるような事を言っていますが、あまりお勧めできません。前のページに載せた3Dグラフを見てもらえば解かるかと思いますが、回転数や負荷によって濃くしなければならない部分と薄くしなければならない部分があるわけで、ボリウム一つで調整できるようなものではありません。回転数別に調整できるタイプもあるようで すが、それでも問題は有ります。負荷の軽い領域ではフィードバック制御されている訳ですがこのあたりまで含めて同一回転数であれば負荷に関係なくまとめて増量あるいは減量してしまうからです。また、全ての制御の基本であるエアフロ信号をいじってしまうと点火時期マップの読み込みまで狂ってしまうのも問題です。点火時期マップの縦軸はエアフロ信号を元にしている訳ですのでエアフロ信号をいじれば点火時期にも影響が出るのは当たり前なのです。要するにこの手の商品とROMチューンでは大きく意味が違うんです。点火時期と燃調をそれぞれ自由にいじれる上に負荷と回転数に応じて3次元的にいじれるROMチューンに死角はありません。という事でここまで読んだ人はさっさとROMチューン始めましょう!

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