空燃比計テスト

ROMチューンをやっていると空燃比が実際にどれくらいになっているのか非常に気になってくる。最近では1万円前後、3万円台、5〜6万円、10万円級と各社各種の空燃比計が市販されているので欲しい人も多いかと思う。最新の空燃比計であるインテグラルのDM-20Mをテストしてみたので報告しよう。

まずは私が使っている東名自動車の空燃比計。(注:現在はGRIDで発売しているINNOVA社製品を使用しています)

東名のメーターっす

赤い針が指針だ。白い針は無視して下さい。写真では12.7前後を示している。

定価 39800円、実売で3万円くらいで買える。某群馬県藤岡市で15000円で売っていたとの情報も有る。こいつはジルコニア素子のセンサーを使用しているのでセンサー出力は空燃比に対してリニアではない。純正のO2センサーと同じく理論空燃比を境に電圧が急変するモノだ。だが理論空燃比以外の領域でも僅かに電圧が変化するのを利用して理論空燃比以外の領域の空燃比を無理矢理測定してしまおうというモノだ。理論空燃比付近では1ボルト近い電圧変化が有るのに対してそれ以外の領域では僅かに数十ミリボルトの変化に過ぎない。これをアンプで補正している。

しかし、数十ミリボルトの変化を利用している為、センサ温度が変化した時にセンサー出力が変化した場合でも敏感に反応してしまう。つまりセンサーの温度によって空燃比が同じでもメーターの表示は大きく異なってくるのだ。具体的には...

1、一般走行及び1速2速ではセンサー温度が上がらない為に電圧が上昇、空燃比計の指示値はかなり濃い方向にずれる。

2、 100Km/h巡航などの状態からの全開加速時などは中途半端にセンサー温度が上がっているのでセンサー出力は低下し、更にカーボンが溜まっているので空燃比は薄い方向にずれる。

3、4速5速の5000回転以上で負荷を長時間掛けた時はカーボンが焼き切れる為にかなり正確な表示となる。

4、更に温度が上がるとセンサーは不活性化し、薄い方向にずれる。

上記は排気ポートから15cmくらいの位置にセンサーを取り付けた場合の話だ。HKSのタコアシのようにかなり後ろの方にセンサー取付位置がある場合は温度が低すぎてメーターは濃い方向に振り切れる。マキシムのタコアシのように真ん中あたりにセンサーが付いている場合はかなり薄い方向にずれる。ほとんど13より濃い方向には動かなくなってしまう。つまりセンサーは温度が高いと不活性化し電圧が下がり、温度が低いと活性化して電圧が上がるのだ。だが中途半端な温度だとカーボンが溜まって鈍感になる上に不活性化するので最悪の状態でほとんど動かなくなる。カーボンが溜まっていても温度が低い場合は大袈裟に濃い方向に狂う。

センサー温度

特製変化

低温

濃い方に狂う

中温

薄い方に狂う

高温

正確

超高温

薄い方に狂う

上記のようにかなり複雑な条件でメーターの表示が狂ってしまう為全然信用ならん。特定条件で測定してあくまでも相対的に比較する為の目安にしかならんと言える。例えば4速5000回転で負荷を掛けて十分に温度を上げてから測定するとか。同じ回転数で同じ負荷を掛けてもセンサーの温度やカーボンの付き具合によってまったく表示が変わるのでクセを掴み条件を揃えるようにしないと使い物にならんのだ。

だがもっと使い物にならんのは純正のO2センサーをそのまま流用してしまう空燃比計だ。1万くらいで買えるからつい買いたくなってしまうと思うがこれだけは買わない方が良いと思う。安いから駄目モトで買ってみるというなら止めないけどね(笑)。

でわ、注目のインテグラルDM-20Mのテストレポート。結論から言うとこいつは使える!かなり高精度なモノだと思う。高いけど買って後悔しない商品だ。

インテグラルのメーターっす。

これが外観と取付状態。ちなみにこの位置だと夜は眩しい。減光機能は有るのだがそれでも眩しいし目の前でチャラチャラと表示が目まぐるしく変わるのでうっとぉしいと思う。エンジンをスタートさせて30秒くらいの間だけスタンバイ状態となりLEDが点滅する。点滅が止まるとその時点からほぼ正確な表示となるようだ。温度依存性はほとんど無い。回転数が同じなら1速でも3速でもほぼ同じ表示となる事を確認した。東名の物なら目茶苦茶な事になるのだが(笑)。

マップに書かれた補正係数を全域(フィードバック領域を除く)で同じ値にしたROMを取り付けて全開加速を試みる。或いは同じ回転数で負荷を変えて見るなどのテストを行なったがほとんど同じ空燃比を表示していた。これも東名のモノでは考えられない事。続いてマップは先程と同一のマップで基本噴射係数を変更して濃いROMと薄いROMを作成し、それで比較した。基本噴射係数をじった場合は全体が同じ割合で変化している筈なので空燃比計の指示値が期待通りになるかどうかを見るわけ。結果は予想通りとなった。すべての回転域でほぼ同じ割合で変化した。この事からもこの空燃比計の信頼性の高さが伺える。東名の場合はすべて同じ係数に変更したマップを使っても回転数によって表示が大きく変わる。これは回転数によってセンサーの温度が変わってしまうからだ。インテグラルのモノは温度依存性が無いセンサーを使っているしセンサー出力は空燃比に応じてリニアに変化するタイプなので信頼性が高いのだ。もちろん値段も高いのだが...。

インテグラルのモノはリニアタイプのセンサーを使用している為に東名のように純正O2センサーと兼用できない。そこでインテグラルでは純O2センサーと等価の特性を持つ外部出力が有る。14.7付近を境に強烈に電圧が変化するわけ。これを純正O2センサーのコネクターに繋いでやる。つまりO2センサーエミュレーターって事かな。これで万事OKなのだ。付加機能としてアクティブフィードバック?とかいう機能がある。これは14.7付近で電圧が急変する筈の出力を12とか13とか好きな濃さで変化するようにしちゃうというくだらん機能だ(笑)。この機能を使うとECUを騙す事によって14.7以外の領域に無理矢理フィードバックさせてしまう事が出来る。普通はフィードバックは14.7付近を基準にしているのでそれより濃くも薄くも出来ない。これをアクティブに変えてしまうというモノ。負荷が少ない領域では14.7付近で燃えていてくれた方が良いわけでこんな機能は無用だと思う。強いて言えば薄い状態でフィードバックさせれば燃費は良くなるだろうがトルク感は無くなる。ま、この機能はオマケみたいなものだね。これはどうでも良いと思うけどA/Fの測定精度の高さが何と言っても魅力だ。買って損はない。お勧めしますです。

だが心配なのはセンサーの寿命。通常のジルコニア式に比べるとデリケートで寿命が短いと言われている。このセンサーはセンサー単体でも5万円もする(^^;;;;。 高温に弱い、振動に弱い、衝撃に弱いの3拍子揃ったデリケートさ。温度依存性が無いのでマニの後ろの方に付けた方がセンサーの寿命が延びるので良いと思う。あまりにも後ろの方に付けるといくらなんでも温度が低いのでアイドル時や低回転時に表示のレスポンスが鈍くなるらしいが、最高速トライアルのように排気温度がかなり上がるような走り方をするなら後ろの方に付けた方が良いかも。

センサーの寿命が気になるところですね〜。高いだけに壊れて欲しくない。普段はセンサーをハズしておいてセッティングの時だけ付けるのがベストかも。

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