クランクケース減圧バルブを試す!

数年前に二輪業界から火が付いたクランクケース減圧バルブ、最近では四輪用でも話題になっている。数年前に友人が経営するバイクショップでSR400やSR500などのビッグシングルで大きな効果が有ると話題になっていた。バイク屋からバルブを借りてインプレッサで実験しようと思ったのだが、水平対抗エンジンのブローバイシステムが複雑過ぎてバルブの数が足りなくて実験をあきらめた覚えが有る。今回はもちろんアルファロメオMiToで実験だ。ダウンサイジングターボエンジンでどんな効果が有るのか?

発売&開発元では「MiToのエンジンとは特に相性が良く、非常に大きな効果が有る」と言う。誰でも体感出来る大きな効果だとか。確かに、MiToと同じエンジンと搭載するABARTH500などに付けたヒトのインプレッション記事では非常に大きな効果が有るらしく、アバルト500のコチラとかコチラなどでは絶賛している。

ふーん。ならばFireRoadster流に実験してみようじゃないか。

そもそも減圧バルブって何だ?

バイクの単気筒エンジンで考えるとわかり易い。こちらが解りやすいので先に読んで欲しい。読んでから次に進んでね。

ただし、エンジンオイルの寿命延長云々の話はPCVシステムを採用した4輪車では逆効果なのでご注意。あと、「エンジンブレーキはピストン上昇時に混合気を圧縮する抵抗と、ピストン下降時にクランクケース内の空気を押しのける抵抗で生まれる」と有るが、コレは大きな間違い。エンジンブレーキは吸気抵抗とその他メカニカルロスで生まれる。圧縮時の抵抗は膨張時に相殺されるので無視出来る。単気筒エンジンではクランク室の容積変化が非常に大きいのでブローバイガスが出入りする事で抵抗になってるのは確か。塞ぐわけにもいかないのでワンウェイにして吸わせない事で抵抗が減るのも確かだろう。コレがバイクで先に流行した理由だ。

だが、4気筒エンジンではクランクケースの容積は変化しないわけで、吸う抵抗は無視出来るのは? とはいえ内部の空気を移動させる事で抵抗が生まれるのは確かで、負圧気味にする事で抵抗が減るかもしれない。理論的には抵抗が減るのは確かだが、ソレがどれほど性能に影響しているのかが今回の課題。

純正ブローバイシステムは代表的な例では↓こうなっている。

スロットルが閉じ気味でマニに負圧が発生している時は、サクションパイプ側から新気を導入、カムカバー内部を掃気してワンウェイバルブを通してインマニ側に吸われている。コレによりエンジン内部を換気してオイルの汚れやカムカバー裏側への水分の結露を防止している。スロットル全開付近になるとマニの負圧がゼロになる為、マニ側はワンウェイバルブが閉じてマニ側への流れは止まる。サクションパイプ側に高速な吸気の流れが出来る為、ブローバイガスはサクションパイプ側に吸われてクランク内部は成り行きで負圧気味になる。コレがありがちな通常の純正システム。

減圧バルブの基本的な考え方はマニ側をメクラにして殺し、サクションパイプ側にリードバルブを入れて一方通行にしてしまうというモノ。マニ側のワンウェイを残すと、マニ側にどんどん吸われてクランクケースが真空に近付いてしまう。こうなるとオイルシールから空気を吸い込んだり、オイルポンプがオイルを吸い上げられなくなってエンジンが焼き付いてしまう。この為、基本的にマニ側には吸わせない構造となる。サクションパイプ側への排気のみとなり、新気の導入や掃気は行われなくなる。エンジン内部が換気されない事により、エンジンオイルの劣化は大きく加速する。寒冷時にはヘッドカバー裏側へ大量の結露が発生し、エンジンオイルの劣化も急速に進むので、オイル交換頻度は数倍のペースにする必要が有ると思われる。また、冬季に水分の結露によりリードバルブが凍結して固着した場合、ブローバイガスの出口が無くなりオイルレベルゲージが発射されたりオイルシールが吹き抜けたりするトラブルも多発するようだ。これらのデメリットに関しては発売側ではほとんど告知されていないので注意されたし。

これらデメリットに関してはコチラで素晴らしく解りやすく解説されているのでまずは読んでほしい。読んでから次に進んでね。

減圧バルブで考えられる可能性をまとめると...

メリット
・クランクケース内の空気密度低下による高速稼動部品の空気抵抗減少、それによる効果

デメリット
・掃気&換気が行われない事によるエンジンオイルの劣化加速、エンジン内部の汚れ加速
・冬季間のバルブ凍結によるオイルシールの吹き抜けorオイルレベルゲージ発射

以上が大きなポイントとなろうかと思う。

デメリットの件は置いておくとして、とりあえず、本当に体感出来るほど効果が有るんかい?ってのが皆さんの興味有るところだと思う。徹底的に調べてみましょうっ!


コレがクワッドリードバルブ内蔵の本体。


内部はこうなってるらしい。リードバルブが4枚。これで一方通行となる。


MiToではオイルセパレータが必要な為、コレが追加される。エンジンから出てきたブローバイガスは、このセパレータ内部で壁に当たってオイルとガスを分離、オイルは下に落ちてガスが上に抜ける。ちなみにMiToの場合、純正がそもそもエンジンからの排出口が1個だけで、掃気&換気する構造になってない。なので特殊な例と言え、前述の掃気が無くなる事によるエンジンオイル劣化やエンジン内部汚れの問題は純正と同等となる。


小さなワンウェイバルブ。マニ側に吸わせるホースの途中に付く。容量は小さく、抵抗も大きい。コレは純正のPCVとは大きく考え方が異なり、ブローバイの流れも大きく意味が変わる。


それらを組み立てるとこうなる。重要なのはマニ側に吸わせるバルブはリードバルブの下流に繋がっている事。つまり、クランクケース内部はマニ負圧で積極的に吸われているわけではないという事。ブローバイガスは自らの圧力でリードバルブを押し退けて排出されている。つまり、クランクケース容積変化が小さい4気筒エンジンの場合、サクションパイプ側の空気の流れが高速にならない限り負圧方向には行かないハズである。全開高回転側で負圧気味になると思われるが、それはリードバルブなんか無くても負圧になると思うのだが...?

じゃ、マニ側に吸わせている小型ワンウェイバルブは何の為??? 実はリードバルブの結露&凍結防止なんだそうだ。元はと言えばマニ側はメクラにして殺してしまい、サクションパイプ側にブローバイを排出、その途中にリードバルブを接地するという考え方だった。しかし、凍結被害が出た為にリードバルブ内部を掃気する目的で小容量のワンウェイバルブをマニ側に接続したとの事。要するに減圧バルブとしての性能には関係ない補助的なモノ。

うーん、こんなんで良いのか?(^^;;;


次回はMiToに実際に取り付け作業をやります。近日公開っ!

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