極圧試験

GRPを5%添加したオイルと、ベースオイルで極圧試験その他のテストを行なった。その結果を思いっきり公開しちゃおう(笑)

ベースオイルはいつも私が使っている某英国メーカが日本国内で生産した鉱物系オイル、15W-40 SJ/CF、 特別高価と言うわけでもない普通のオイル。エステルや有機モリブデンは含んでいない。

ティムケンテストとは、周速80m/分で回転するベアリング枠に、焼入鋼のテストピース(硬度HRC58)を圧接し、両者の接点(摺動面)にテストするオイルを循環させる。この接点に荷重を掛けていき、焼付く時の荷重を測定する、これが焼付き荷重となる。その際に摩耗痕の面積を測定し、焼付き荷重を摩耗痕面積で割る事で、単位面積荷重圧を測定する。駆動するモータの負荷電流を測定する事で、どれくらい大きな抵抗が掛かっているかが判断できる。これが小さければ小さな抵抗で摺動していると言う事である。

その他に、耐水性、油温250度における高温潤滑特性、150度でのオイルの変色の有無、などの総合的なテストを行なった。

尚、テストに使用したティムケンテスタの最大荷重は340Kgfであり、それを超える荷重は掛ける事が出来ない。したがて、焼付き荷重が340Kgfを超えてしまう場合は測定限界以上と言う事になる。

駆動モータの無負荷電流は3.2Aである。

焼付き直前負荷電流 焼付き接点荷重圧 単位面積荷重圧 負荷電流 温度変色 150度 高温特性 耐水特性 皮膜定着
ベースオイルのみ テスト1 6.5A以上 85Kgf 6.3Kgf/mm2 10A以上 不可
ベースオイルのみ テスト2 7.0A以上 102Kgf 6.0Kgf/mm2 10A以上 不可
GRP 5%添加 テスト1 焼付かず 102Kgf 68Kgf/mm2 3.4A
GRP 5%添加 テスト2 焼付かず 85Kgf 72Kgf/mm2 3.4A
GRP 5% 添加 テスト3 焼付かず 340Kgf 以上 77Kgf/mm2以上 3.4A

ベースオイルのテストでは85Kgfと102Kgfで焼付きが発生している。GRP添加では焼付きが発生しない為、ベースオイルの焼付き荷重と同じ85Kgfと102Kgfの荷重を掛けて、単位面積荷重圧や摩耗痕の状態を調べたのが、GRPテスト1とテスト2である。GRPが102Kgfで焼付いたと言う意味ではないので誤解無きよう願います。GRPのテスト3では、使用したテスターの最大荷重である340Kgfをかけているが、焼付きは発生してない。単位面積荷重圧から察するに10倍くらいの極圧特性を持っていると考えられる。GRP入りでは過重を増やしてもモータ負荷電流に変化は無く、モータ負荷電流の3.4Aというのは無負荷電流3.2Aとほとんど同じである事から、摩擦抵抗がほとんど存在していないと言う事である。GRPおそるべし...。

尚、GRP添加後と比較すると遥かに劣るベースオイルの諸特性だが、一般的に市販されているオイルの中では優秀な部類に入るそうで、試験結果から察するに何らかの有効な減摩材が配合されているような気がするとの事(笑)。ちなみにこのベースオイルの耐焼付き荷重は半化学合成で有機モリブデン配合の高級オイルと同等レベルとの事である。250度高温潤滑特性なども常温のそれとほとんど変わる事が無かったそうで、市販オイルとしては優秀だとか。温度変色も無く、優れたオイルだそうである。

さて、実際にテストに使用したテストピースの摩耗痕をお見せしよう。撮影はすべて Nikon CoolPix700 を使用した。巨大に見えるけど、実際の大きさは直径10mm、長さ10数ミリって感じ。


右端がベースオイルテスト1(85Kgf)、その左側がベースオイルテスト2(102Kgf)の摩耗痕である。


右端が GRPテスト1(102Kgf)、真ん中がGRPテスト2(85Kgf)、左端がGRPテスト3で340Kgfの最大荷重をかけたもの。ベースオイル単体と同一の荷重をかけても極端に摩耗が少ない事が伺える。

どうせならこの摩耗痕の金属表面状態も見てみたい。そこで手持ちの顕微鏡(23年前に買ったケンコー製(笑))で200倍に拡大し、接眼レンズにデジカメをくっつけて撮影してみたのが以下の写真。もっと拡大したかったんだけど、テストピースと対物レンズとの距離が確保が出来なくてピントが合わなかった。200倍で勘弁してね。


↑これがベースオイルテスト2(102Kgf)の表面状態である。


これはGRPテスト1(102Kgf)の表面状態。

う〜ん、肉眼でも違いは分かるんだけど、ここまで拡大すると明確な差が確認できる。摩耗痕の面積が狭いとか浅いってのもあるんだけど、摩耗痕表面の状態も大きく違う。

GRPの恐るべき潤滑能力と摩耗防止効果が確かに確認できた。

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