希薄燃焼で燃費は良くなるのか?

毎度御馴染みの定例燃費テスト2007年版(^^;である。

2007年、例年通り5月上旬にアタックしたのだが、その直後からガレージ建築の3社競合見積もり打ち合わせが本格化、建築騒ぎの合間に耐久レース参戦や筑波決戦など、原稿をまとめる余裕が無かった。書きかけで止っていた原稿を書き上げた次第である(^^;;

1年に1回の325Kmのエコランアタック。燃費の限界に挑戦するのである。今更説明も要らないと思うが、念の為に書いておこう。毎年同じ時期に同じコースを同じ時間帯に走っている。これ以上無いくらいのエコランで走る。エアコンはOFF、空気抵抗軽減の為、ナニがなんでも窓は開けない。 信号待ちでのアイドルストップはやらないが、コンビニなどで停止した時は瞬間的にエンジンを停止する。冷間始動は全行程中で1回だけ。 5月上旬、夜8時〜9時くらいに出発で一般国道と峠道登りで160Km、帰りは翌朝から峠道の下りと高速道路で長岡までの165Kmだ。

長岡街中、峠、柏崎街中、海岸線の一般国道、峠の登り、某温泉。某温泉から峠の登り、そして下り、一般国道、高速道路、長岡着。という各種のステージを満遍なく含む一般的ロングツーリングな全行程325Kmである。

去年までのデータは以下の通り。明確な効果が見られなかった4回目までの平均値が14.96Km/Lであり、5回目以降はそれに対するパーセンテージを示ししている。

実験日 走行距離 使用燃料 燃費計算値 平均値との比 備考
2001/5/4 328.0Km 21.5L 15.25Km/L 101.90% 過去最高値
2002/4/27 324.3Km 22.0L 14.74Km/L 98.50% トラックに邪魔された年
2003/5/8 327.6Km 22.0L 14.89Km/L 99.50% 酵素系添加剤玉砕
2004/5/10 324.8Km 21.7L 14.96Km/L 100.00% 放射線モノ玉砕
2005/5/10 325.8Km 20.9L 15.58Km/L 104.10% NNL690 事故渋滞有り
2006/5/9 325.6Km 20.5L 15.88Km/L 106.15% エコタイヤ + エコオイル

で、今年は表題の通り、希薄燃焼に挑戦する事にした。特に怪しいモノでもなんでも無い。 ポンピングロス低減には希薄燃焼が手っ取り早く効くハズで、効果が出るのは間違いないのだが、どれほど効果が出るのか?

空燃比は求めらる条件によって最適値が変化する。重量比で燃料1に対して14.7の空気が有れば理論的には完全燃焼が可能だ。これが理論空燃比と言われる14.7だ。一方、出力空燃比と言われるのは12〜13くらい。空気が足りないくらいの方がパワーが出る。逆に最も燃費が良くなるのが16前後だ。空気が過剰なくらいの方が燃費が良くなる。

ここで間違えないで欲しいのが、「空燃比を薄くする」と言うのは「燃料を薄くする」のではない。「空気を増やす」のである。燃料を減らすのではない、空気を増やすと言うこと。燃料の量は基本的には同じで、吸入空気量を増やすことで「希薄燃焼」させるのである。「燃料を薄くすれば燃費が良くなるのは当たり前」と考えるのは大きな間違い。空気を増やすことでポンピングロスを減らすのが希薄燃焼の目的であり、ポンピングロスが減った分が燃費の向上に繋がる。ここでポンピングロスについて語るつもりは無いので、各自調べていただきたい。

参考(Wikipedia): 空燃比 希薄燃焼 ポンピングロス

では、その希薄燃焼を実現する為にどうすれば良いのか? 通常の市販車ではO2センサによる空燃比フィードンバック制御が行われている。これは排気管に取り付けたO2センサにより、排気ガス中の酸素濃度を測定し、リアルタイムで空燃比を測定、その情報に基づいてECU(エンジンコントロールコンピュータ)がフィードバック制御を行うものだ。だが、市販の通常エンジンに採用されているO2センサは理論空燃比よりも濃いか薄いかを判断するだけのセンサで、いわば理論空燃比センサになっている。ECUは理論空燃比よりも濃いか薄いかの情報だけを得て、常に理論空燃比に近づくように制御を繰り返すのだ。

このようなフィードバック制御が行われている為、通常の方法では希薄燃焼化するのは無理だ。燃圧を下げてもフィードバックされて元に戻るだけ。AFCのようなエアフロ騙しを使ってもフィードバックされて元に戻るだけ。フィードバック補正係数による補正どころか、ヘタすりゃ学習制御で基本噴射係数が書き換えられて全域が元に戻る。


そこで今回私は、A/Fメータに内蔵されているアナログ出力を利用した。↑ INNOVATEのA/Fセンサアンプ LC-1 を使用。これは純正のO2センサを取り外してA/Fセンサに交換するわけだが、A/Fアンプは純正O2センサ信号をエミュレートするアナログ出力を持っている。


これが純正センサ相当にプログラミングしたモノ。14.7を境に電圧が急変するナローバンドセンサになっている。純正センサはこれとほぼ同等の出力特性を持っている。


これを16.0付近を中心に電圧が急変するようにプログラミングしたのがコレ。この出力を純正ECUに接続すれば、純正ECUは16.0付近を目指してフィードバック制御してくれる。もちろん、純正ECUはそれが14.7だと信じているわけだが。

約2週間ほど事前テストを行った。どこまで薄くするかのテストだ。16.5付近まで薄くしたらミスファイヤっぽいトルク変動が出た為、ミスファイヤが気にならない程度まで濃くした。結果、16.0付近を目標にした。


実際のエコランアタック時の325Km分のA/F値の分布がコレ。22以上にピークが有るのは燃料カット領域。燃料カット部を除けば16付近を境に制御されているのが解るハズ。平均が17と出ているのは燃料カット領域も含めて平均化されているからで、燃料カット領域を除けば16付近が平均値になるハズ。ログ上で14を超える増量補正がまったく存在してない事も解るハズで、いかに大人しく走っているかが解るかと。


尚、データのログと解析には DL-32LogWorks を使用した。

さて、今回のネタはどこまで記録を伸ばすのか? 経済空燃比と言われる16.0付近での走行はどんな結果になるのか? 期待を込めて目標値を前年比3%向上とした。 3%の向上はかなり難しいカモしれないが、1%の向上で16Km/Lの大台に乗る。誤差ではなく明確に超えたいので3%を目標にしてみた。ちなみに事前の2週間のテスト期間に燃費の差は感じられなかった。

去年と条件を揃える為、タイヤやオイルは去年と同じ、またNNL690の添加もそのまま続けている。従って去年との差は希薄燃焼だけである。


定点撮影。305Km走って燃料計は半分以上。05年以降とほぼ同等に見えるが...? ナゼ305Kmかというと、初期の頃のアタックで燃料メータ半分の時を狙って撮影したら305Kmだったから。

そして期待の結果は?

325.9Km走行で20.00Lの給油。と言うことは...?

16.30Km/Lを達成!!(^o^)

実験日 走行距離 使用燃料 燃費計算値 平均値との比 備考
2001/5/4 328.0Km 21.5L 15.25Km/L 101.90% 過去最高値
2002/4/27 324.3Km 22.0L 14.74Km/L 98.50% トラックに邪魔された年
2003/5/8 327.6Km 22.0L 14.89Km/L 99.50% 酵素系添加剤玉砕
2004/5/10 324.8Km 21.7L 14.96Km/L 100.00% 放射線モノ玉砕
2005/5/10 325.8Km 20.9L 15.58Km/L 104.10% NNL690 事故渋滞有り
2006/5/9 325.6Km 20.5L 15.88Km/L 106.15% エコタイヤ + エコオイル
2006/5/7 325.9Km 20.0L 16.30Km/L 108.96% 希薄燃焼 A/F 16.0

効果が認められなかった04年までの平均値に対して 108.96% 、希薄燃焼以外の条件が同一な前年に対して 102.64% の向上となった。目標の3%に僅かに及ばず...。

それでも明確な差が出たわけだが、メーカがコレをやりたくても出来ない(出来なかった)理由が有る。それは排気ガス。希薄燃焼をやるとNOx(窒素酸化物)が大量に発生するのだ。これを処理する為にNOx吸蔵還元触媒などの特殊な触媒が必要になる。また、リニアタイプのA/Fセンサやそれを制御するモノも必要になる。気筒内直噴エンジンなども含めて一部のエンジンだけが希薄燃焼を採用していた。が、現在は排気ガス規制の強化や、大量EGRによるカーボンデポジットによるエンジン不調の問題などで自動車メーカも希薄燃焼エンジンから撤退しつつあるようだ。

では実際に私のエンジンでコレをやってしまうとNOxはどれくらい増加するのか? NOx吸蔵還元触媒など装備されていないわけで、NOxは増加し放題となるのでは? ちょっと測定してみた。

完全暖機後の負荷2000rpm固定で測定。λセンサと回転数のピックアップは接続してない。CO、CO2、HC、NOx、油温、を測定中。


理論空燃比ではNOxは測定限界以下の 0ppm


16.0ではなんと 1000ppmを越えた(^^;;;;;;

というわけで、希薄燃焼はポンピングロスを減少させ、明確な燃費向上効果を発揮するが、NOxの処理が難しい、という当たり前の結果を確認したに過ぎない(^^;;;;;


ここまでやっても燃費は3%に届かない向上率なわけで、あとからユーザが気軽に付けるようなアフターパーツで20%だとか30%の向上など絶対に有り得ないのだ。コンデンサやアースや水や油で明確な燃費向上など有り得ないのだよ。 今回のネタは結果が出たとは言え、一般的に真似出来るモノではないし、排ガスの問題などもある。それを無視して明確な効果が有るハズの希薄燃焼でどれほどの差が出るのかを試してみたかった。そして、読者の皆さんには、ここまでやってもたった3%という現実を理解してほしい。

自動車メーカは0.1%の燃費向上の為に必死になっている。 ブレーキキャリパピストンの戻り特性まで燃費の為に改善しているのだ。 LEDのストップランプだって燃費の為だ。 電動パワステだって燃費の為。 充電制御だってそうだ。 燃費を向上させる可能性が有るのなら、メーカのエンジニアは放って置かない。必ず改善の努力をする。アースやコンデンサなんかで燃費が変わるのなら100個でも200個でも付けるっつーの。

ちなみに最近の自動車にアース線が付いているのは、CAN通信のラインに乗るノイズを減少させて通信信頼性を確保する為であって、燃費向上の為ではないので、勘違いしないように。

ハナシがそれたが、要するに私が言いたいのは、いつもの事なんだけど

「お気軽に燃費を向上させる商品など絶対に無いっ!」

という事。

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