ダイアグノーシス

デジタル制御のエンジンコントロールコンピュータの時代になって以降、どのメーカのクルマでもコンピュータが自己診断機能を有するようになった。各センサやアクチュエータの異常などを検出し、その内容を記憶する。したがって、現在不具合が出ていないくても過去に起こった不具合の内容を記憶保持している。これを読み出す事である程度は故障内容を絞り込む事が出来る。

スバル車はセレクトモニタと言う機械を繋ぐ事でいろんな自己診断が出来るようになっている。ディーラへ行けばセレクトモニタを繋いで簡単に見てもらえるのだが、そんな機械なんぞ持って無くても同様の点検を簡単にやる方法が有るので紹介しよう。

スバル車はリードメモリコネクタ(1極黒)とテストモードコネクタ(2極緑)と言う二組のコネクタを接続する事でいろいろなテストが可能になっている。インプレッサやレガシィの場合は運転席足元上側にこのコネクタが有る。プラプラと遊んでいる2組4個のコネクタを探してみよう。

リードメモリ

1極で黒色のコネクタ同士を接続するとこのリードメモリモードになる。これは過去に発生した不具合現象を読み出すモードである。以下にその手順を示す。

IGキーをOFFにした状態で前述のリードメモリコネクタ(1極黒)同士を接続し、キーをONにする。メータパネル内のチェックエンジンランプの点滅によりコードを読み取る。ランプが一定速度で点滅を繰り返す場合は正常コード、長短のリズムを持った点灯の場合は何かしらのコードを吐き出している状態だ。長い点灯の回数が10のケタを、短い点灯の回数が1のケタを表す。例えば...

      +------+   +-+ +-+ +-+              +------+  +------+   +-+ +-+ +-+
      |      |   | | | | | |              |      |  |      |   | | | | | |
------+      +---+ +-+ +-+ +--------------+      +--+      +---+ +-+ +-+ +-----

↑等幅フォントで見てね。このような点滅パターンの場合、前半がコード13を表し、後半はコード23を表す。これを読み取って後述のコード表に照らし合わせる事で故障内容を判断する。

リードメモリモードでは、過去に発生した不具合も含めて表示する為、現在不具合が無いとしてもコードが出力される。もちろん、現在も不具合が発生している場合も同様に出力される。コードを読み取ったらリードメモリコネクタを分離するのを忘れないように。

D-チェックモード

D-チェックモードでは過去に発生した不具合は無視して、現在発生している不具合のみ出力する。それと同時に、各種アクチュエータをアクティブに駆動する事で正常かどうかを判断する事が出来る。テストモードコネクタ(2極緑色)を接続する事でこのモードになる。以下にその手順を示す。

1、電動ファンが2回くらい回るまで十分に暖機運転し、エンジン停止でキーはOFFにする。

2、テストモードコネクタを接続する。

3、キーをONにする(エンジンは始動しない)。

この時点でチェックエンジンランプが点灯する事を確認する

4、燃料ポンプの作動音が断続的に聞こえる事を確認する。

燃料ポンプの作動と停止をアクティブに繰り返す事で燃料ポンプリレーやポンプ本体に異常が無い事を確認しているわけ。燃料タンクのフタを開けて耳を近づけるとハッキリ聞き取れて面白い(笑)

5、過給圧制御用デューティソレノイドの作動音を確認する。

これもソレノイドをアクティブにON-OFFさせる事で動作をチェックしている。正常ならばカチカチと騒がしい音が出ているハズ。

6、ラジエタファンが停止&作動を繰り返す事を確認する。

ラジエタファン本体やリレーなどに異常が無いかどうかがこれで解かる。

燃料ポンプ、ソレノイド、電動ファン、などが断続的に動作と停止を繰り返す為、エンジンルームは非常に騒がしい状態となるが、それで正常。静かだったら不味い(笑)。

7、アクセルペダルをゆっくりと全開まで踏み込んでから離す。

これによりスロットルセンサ信号をECUに入力している。

8、エンジンを始動する

9、車速10Km/h以上になるまで走行する。

これによりECUに車速センサ信号を入力している。

10、エンジン回転を2000回転〜3000回転で1分間以上キープする。

O2センサの温度を上昇させ活性化させる。これによりO2センサ信号をECUに入力させる。

11、チェックエンジンランプの点滅を読み取る。

単純な点滅を繰り返す場合は正常、点滅パターンが有る場合はコードを読み取り、下記コード表に照らし合わせて故障内容を判断する。読み取ったらテストモードコネクタを分離するのを忘れずに。

以下にトラブルコード一覧を示す。インプレッサとレガシィでコード内容が違う。年式によりコードが新設されたり削除されたりしている可能性は有るが、同じ故障内容ならコードは変らないハズ。ちなみにここに載せたのは95年現在のレガシィ、95年現在のインプレッサである。

インプレッサ(GC1、GC4、GF3、GC6、GF6、GC8、GF8 など)

トラブルコード 診断項目 検出内容

1.5L、1.6L、

1.8L、NA車

ターボ車
11 クランク核センサ クランク核センサ信号系 オープンorショート
12 スタータSW スタータ信号系 オープンorショート
13 カムセンサ カムアングルセンサ系 オープンorショート -
14 インジェクタ#1 インジェクタ駆動系 オープンorショート
15 インジェクタ#2 インジェクタ駆動系 オープンorショート
16 インジェクタ#3 インジェクタ駆動系 オープンorショート
17 インジェクタ#4 インジェクタ駆動系 オープンorショート
21 水温センサ 水温センサ系 オープンorショート
22 ノックセンサ ノックセンサ系 オープンorショート -
23 エアフロメータ エアフロメータ系 オープンorショート
24 ISCV ISCV系 オープンorショート
31 スロットルセンサ スロットルセンサ系 オープンorショート
32 O2センサ O2センサ系 オープンorショート
33 車速センサ 車速センサ系 オープンorショート
42 アイドルSW アイドルスイッチ系 オープンorショート -
43 アクセルSW アクセルSW系 オープンorショート -
44 過給圧制御 過給圧制御系統の異常を検出 -
45 圧力センサ、大気圧/絶対圧切り替えソレノイド 圧力センサ、大気圧/絶対圧切り替えソレノイド系統のオープンorショートを検出及びバルブスティック -
51 ニュートラルSW ニュートラルSW系 オープンorショート

レガシィ(BD4、BD5、BG4、BG5、BGA、BG7、BG8 など)

トラブルコード 診断項目 検出内容 NA車 ターボ車 備考
11 クランク核センサ クランク核センサ信号系 オープンorショート -
12 スタータSW スタータ信号系 オープンorショート -
13 カムセンサ カムアングルセンサ系 オープンorショート -
21 水温センサ 水温センサ系 オープンorショート -
22 ノックセンサ ノックセンサ系 オープンorショート 2L SOHCを除く
23 エアフロメータ エアフロメータ系 オープンorショート -
24 ISCV ISCV系 オープンorショート -
31 スロットルセンサ スロットルセンサ系 オープンorショート -
32 O2センサ O2センサ系 オープンorショート -
33 車速センサ 車速センサ系 オープンorショート -
38 ATトルクダウン信号 ATトルクダウン信号のショート AT車のみ
39 トラクションコントロール EAM信号 オープンorショート - 2WD TSC付きのみ
44 過給圧制御 過給圧制御系統の異常を検出 - -
45 圧力センサ、大気圧/絶対圧切り替えソレノイド 圧力センサ、大気圧/絶対圧切り替えソレノイド系統のオープンorショートを検出及びバルブスティック - -
51 ニュートラルSW ニュートラルSW系 オープンorショート -
63 リリーフバルブソレノイド 過給圧リリーフバルブソレノイド系 オープンorショート - -
64 セカンダリウェストゲイトソレノイド セカンダリウェストゲイトソレノイド系 オープンorショート - -
65 差圧センサ 差圧センサ系 オープンorショート - -
66 シーケンシャルターボシステム プライマリターボ、セカンダリターボの過給圧が上昇しない事を検出、過給圧が異常に上がった事を検出 - -
67 排気バルブソレノイド 排気バルブソレノイド系 オープンorショート - -
68 排気バルブデューティソレノイド 排気バルブデューティソレノイド系 オープンorショート - -

95年以降のタイプでここに載ってないコードが削除または新設されてるいる可能性は有る。したがってここに載っているコードがすべてではないが、同じ故障内容ならコードも同じハズである。

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