2011 エコランアタック
欧州ダウンサイジングターボエンジンの実力を試す

毎年恒例のエコランアタック。インプレッサバンで10年間続けてきたが、今年からクルマがMiToに変わった。今年の記録が今後の基本となる。

小排気量エンジンにターボで過給する事で高出力と低燃費を両立したのが欧州ダウンサイジングターボエンジンだ。なぜターボで燃費が良いのか? それはポンピングロスが少ないからである。

「ポンピングロス」 は燃費を語る上で避ける事が出来ない大きな課題。 面倒なので今まで解説を避けてきた(笑)。ポンピングロスとは、ピストンが下降して吸気しようとする時、スロットルバルブが閉じている為に吸気を邪魔する事で発生する抵抗。

例えば、注射器の口を大きく開けてピストンを引っ張るのに抵抗は無いが、非常に小さな穴を開けた注射器を無理矢理引っ張って吸気するのは大きな抵抗になる。まさにコレの事。スロットルバルブが閉じている状態と言うのは大きな吸気抵抗になる。

「でもその抵抗って圧縮行程で相殺されるのでは?」

と考えがちなのだが、それは間違い。「圧縮行程と膨張行程がセットで完全に相殺される」と考えれば簡単に理解出来る。排気行程は排気バルブが開けば何の抵抗も無いので無視。すると、スロットルバルブに邪魔されて無理矢理吸気している吸気行程の抵抗が「ポンピングロス」として残る。

スロットルバルブなんか無ければ良いのだが、そうするといつでも全開全負荷になってしまう。これでは出力を制限出来ないので最高速まで加速してしまう。だから仕方なくスロットルバルブで吸気量を制限している。

以上がポンピングロスの概念。

続いて、自然吸気(以下NA)エンジンで考えてみよう。車体の重量が同じだと仮定して、普通にゆっくり走っている時、大排気量エンジンはスロットルバルブを閉じて吸気を規制する。一方、小排気量エンジンは大排気量エンジンに比較してより大きくスロットルを開いて走る事になる。排気量をどんどん小さくして行くと、全開にしてもやっとで走るくらいに遅いクルマになってしまう。コレがミソ(笑)。全開で走ればポンピングロスが無くなるのだ。

大排気量エンジンがスロットルを戻し気味に走るより、小排気量エンジンでスロットルを大きく踏んで走る方がポンピングロスが少ないのだ。しかし、小排気量エンジンで全開でもローパワー過ぎてやっとで走るようでは困る。

そこでターボだ。NAエンジンの全開ってのはマニホールドの圧力が大気圧に等しくなる状態。ポンピングロスが発生するのは負圧の時。NAエンジンが 負圧〜大気圧 の間で出力を制御しているのに対して、ターボエンジンは 負圧〜大気圧〜正圧 の範囲で出力を制限出来る。マニの圧力が高ければ高いほどポンピングロスを減らせる。

小排気量エンジンは普通ゆっくりに走っている時でもマニの圧力が高いので、ポンピングロスを大幅に減らす事が出来る上に、パワーが必要な時にはターボで過給する事で排気量以上のパワーを出せる。

コレが欧州で主流の小排気量過給エンジンの概念。



インプレッサやランサーに代表されるような従来のハイパワードッカンターボエンジンは、圧縮比を落として過給圧を上げ、燃焼温度を下げる為に大量の燃料を噴射して燃料の気化熱で冷却していた。コレでは燃費が悪いのは当然。現在主流のターボエンジンは圧縮が高く過給圧は低い。MiToで言うなら、圧縮比は9.8なので、ターボなのにNAエンジンのロドスタよりも高い。NAエンジンと同等のハイコンプに過給しているわけ。だから燃費が悪くならない。

MiToのスペックを紹介。

エンジン 直列4気筒 DOHC 16バルブ+ターボ
総排気量 1368cc
ボアxストローク 72.0x84.0
圧縮比 9.8
最高出力 155ps/5500rpm
最大トルク 20.5Kgm/5000rpm
最大トルク(Dynamicモード) 23.5Kgm/3000rpm
車両重量 1220Kg

それでは、その燃費性能の実力はいかに?


エコランアタックは毎年恒例だが、アルファロメオネタで初めてこちらに訪れたヒトも多いかもしれない。念の為に書いておくと、毎年同じ時期の同じ時間帯に同じコースを究極の低燃費を目指して走るという企画。エアコンはOFF、窓は閉める。高速道路は目標速度80Km/hとし、80Km/hを超えないようにしつつ、登り下りの勾配に合わせて微妙なスロットルワークで80Km/hを一定に保つように地道に走る。(過去の記録はこちらのエコランアタックネタをご覧下さい)

クルマが変わったついでにコースを若干変更した。ほとんど同じコースなのだが、休憩ポイントなどを変更。最終到達地点をちょっと手前に変更。これにより全行程は若干短くなって314Kmくらい。オンボード燃費計を生かして区間燃費も詳細に記録してみた。今後は同じパターンでいこうかと思う。

銀プレッサバンでの最高記録は 16.3Km/Lだった。(過去の記録はこちらのエコランアタックネタをご覧下さい)

2011.05.08〜09
. 距離 平均速度 燃費 備考
セクター1 31.4Km 47Km/h 17.8Km/L 峠超え+市街地
セクター2 88.1Km 53Km/h 19.5Km/L 国道
セクター3 39.4Km 51Km/h 13.6Km/L 緩い登り国道+登り峠道
セクター4 15.0Km 43Km/h 36.1Km/L 下り峠道
セクター5 25.1Km 49Km/h 26.2Km/L 緩い下り国道
セクター6 74.1Km 72Km/h 19.6Km/L 高速道路
セクター7 40.1Km 68Km/h 20.2Km/L 高速道路
トータル 314.2Km 55Km/h 19.2Km/L 総合結果


総合結果 19.2Km/L を記録!

あらゆる走行条件を含んだ実用的なツーリングコースで、特に良い燃費を出しやすいコースってわけではない。しかし、各区間燃費を見てみると、驚くほど燃費が良い。

この結果を 「e燃費」 に載っている投稿と比較してみてどうだろうか? ハイブリッド車の必要性を感じないのは私だけではないと思うのだが?

実際にダウンダイジングターボエンジンに乗ってみると、実に良い。1400ccという小さなエンジンながら2000回転くらいで23.5kgものトルクを発生し、踏めばグイグイ加速する大トルクはまさに大排気量エンジンのよう。低速トルクは十分で、6速1000回転での巡航もこなす柔軟性。ゆっくり普通に走っている時の燃費の良さも特筆モノ。

そして155馬力、リッタ当たり113馬力というハイパワーエンジンであることも忘れてはならない。踏んで回せば十分に速いエンジンであり、サーキットや峠を走っても楽しいスポーツエンジンでもある。 2000cc並みのパワーで燃費はNAエンジン小型車と同等。 コレこそがダウンサイジングエンジンの実力なのだ。

参考:その後の実用燃費を紹介。特にエコランってわけではなくて普通に走った場合ね。エコランを意識しなくても普通に燃費は良いですよ。

5Km前後のチョイ乗り A/C OFF 13.5Km/l
5Km前後のチョイ乗り A/C ON 12.5Km/l
長岡〜仙台特攻 A/C ON ハイペース特攻 14.8Km/l
山形〜長岡 A/C ON 17.1Km/l
長岡〜軽井沢往復 A/C ON 大渋滞有り 16.5Km/l
長岡〜万座温泉往復 A/C ON 16.5Km/l

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