ソフトウエアー開発 法律相談

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よくある”問答”もんどう・・・-5-




41 ソフトウエアーの開発
42 既存のノウハウの保護
43 思惑の違いの調整、食い違いの処理
44 契約に際し、検討すべき重要事項


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41 ソフトウエアーの開発

  新しいソフトウェアーを開発するというのは、企業や個人が、業 務上の作業の処理について、コンピューターを導入し、あるいは活 用して、より効率的な作業の処理を行うために、コンピューターソ フト作成会社にソフトの開発を依頼するということです。
いわば注文服を作ると言うことでしょう。

 依頼する側は、自分にもっとも適した、個性が充分に生かされる ようなソフトを求め、かつ確実に動くもの、正確な作動をするもの を求めます。
 開発者側は、限られた予算の中で、依頼者の希望をどこまで活か せるか研究し、できるだけ希望に沿うようにと開発します。
  依頼する側と、開発する側が、充分な打ち合わせを行ったにも拘 わらず、できあがったものに不満があり、トラブルとなることがあ ります。全国的にも、この分野での契約によって、トラブルが発生 することが多く、通産省も、特別な審議会を設け、これからますま す重要になるソフト開発の分野が、健全に発展して行くように、一 定の指導基準を確定する作業を行い、ソフトウエアー開発契約に盛 り込むべきものを明らかにしました。 

 コンピューターソフトの作成、開発等は、法律的には請負契約と いわれる範疇に入るものです。請負契約というと、家の設計建築や、 機械の製作を行うときなどに結ぶ契約です。建築請負契約などは、 昔から紛争が多い典型のようなもので、建築業界で「四会連合民間 建築契約約款」を作って、統一的な基準による一律的な規制、監督、 解釈基準の設定を行い、契約当事者の紛争を未然に防止するものと しています。

 ソフトウエアーの開発、製作も、家の設計委託契約の段階とよく 似ており、注文主の意向がどこまで設計図・システム仕様書に反映 されるか、希望の効果がどこまで発揮されるか、が最大の問題であ り、かつ困難な問題です。
 もちろん、注文者が仕様書を作る力量があり、開発委託を受けた ものが単に製作にしかタッチしないこともあるでしょう。この場合 は、完成品がシステム仕様書と同一かどうかが問題となるのみです。
  しかし通常は仕様書づくりから、完成まで、全てを依頼するのが ほとんどですから「希望する効果」の内容についての十分な打ち合 わせ、合意が必要となります。

 いずれにしても、開発、製作の契約の締結時に、内容の詳細まで ほぼ完全に決定しておれば良いのですが、通常は開発・製作するも のの大枠は決まっているが、具体的な内容は、契約が進んで、発注 者と開発者が走り出してから協力しながら、考えながら、改良しな がら、詳細を徐々に決めるという形態がよくありますが、そうした 進行について契約に基づかない、口約束などの時は、決まって不満 が出て、関係がまずくなるようです。



42 既存のノウハウの保護
 

 開発を進める場合、全く何もないところから計画、開発を進める 場合もあるでしょうが、既存のノウハウを活用して、新しいものへ 挑戦するという場合もあるでしょう。
こうした場合は、既存のノウハウをきちんと保護しないと、開発 の中で、そのノウハウの価値がなくなってしまうことも考えられま す。通産省がまとめた、ソフトウエアー開発に関する標準の契約書 案は、この点の考慮をしたものでぜひとも採用してほしいものです。
次に条文を抜粋しながら見てみましょう。

 知的財産権の保護に関しては、第29条(知的財産権)の規定で、 次のような規定を置いています。
 甲は開発委託者、乙は、開発の責任者と言うことです。

1.対象ソフトウェア開発の過程で生じた特許権、実用新案権(特 許、実用新案を受ける権利を含み、以下特許権等という)の帰属 については、以下のとおりとします。

 (1)甲が単独で行った発明、考案(以下発明等という)から生 じた特許権等については、甲単独に帰属するものとします。

 (2)乙が単独で行った発明等から生じた特許権等については、 乙単独に帰属するものとします。       

 (3)甲および乙が共同で行った発明等から生じた特許権等につ いては、甲乙共有とします。この場合甲および乙は、特許 権等の全部につき、それぞれ相手方の了承および対価の支 払なしに自ら実施し、または第三者に対し通常実施権を実 施許諾することができるものとします。

2.乙が従前より保有する特許権等を対象ソフトウェアに適用した 場合、および前項第(2)号により乙に帰属する特許権等が生じ、 これが対象ソフトウェアに適用されている場合には、乙は甲に対 し、当該特許権等について、甲が自ら対象ソフトウェアを使用す るために必要な範囲で、無償の通常実施権を実施許諾するものと します。

 このように、開発依頼者も、開発担当者もともに、開発と言う行 為を進める中で、さまざまなノウハウを取得するでしょうし、既存 のノウハウを使用することにもなるでしょう。従って、その中での 交通整理を行うことで、お互いのノウハウを尊重する、利用しあう、 その間では無料で利用できると言う約束をする必要があります。

  さらに、このノウハウを事前に保護しておくには、特許申請や、 実用新案の出願、著作権登録などしておけば万全でしょう。



43 思惑の違いの調整、食い違いの処理
 

事業に利用するため、事業の合理化のために、OA化を進めると言 うことで、コンピューターを導入して作業の合理化、効率化を図ると 言うのが、ソフト開発の基本です。 ところが、思惑の違い、作業内容の認識不足などから、開発内容が、 当初の思惑から外れていたり、不十分と感じることが多いものです。

  ソフトウェアー開発の特徴は、形のない物から、共同で形作ってい くものであるとすれば、契約の形も、全体像をとらえる契約と、共同 で創り上げて行く過程を重要な性格によっていくつかの段階に区分し て、各区分における付随契約、個別契約という形でまとめるほかない のです。そしてそれが、最適な方法となります。    

 開発契約は、その内容からは

 ■システム仕様書を作る段階(設計契約)

 ■仕様書に基づきプログラムを構築する段階(請負契約)

 ■できあがったプログラムを運転し、所期の効果を出す(運用・移 行契約)

という三つの基本要素から構成されています。

 この三つの内容は独立して存在するのではなく、相互に密接な関係 を持って、一つの最終目的、新しいプログラムの構築にむけて、発注 者と、開発者とを結び合わせているのです。

 従って、ソフトウェアー開発契約書を作成するに当たっては、大枠 の契約書と、各段階の権利義務を明示した個別契約書を作成すること が必要です。     

 契約の実施の中で、開発行為が不完全で、問題がおおいときは、契 約書にしたがって、問題の処理を図ることになります。内容の不完全 性については、瑕疵担保の問題になります。   

  開発製品の検収完了後、納入物品について構築サービスの前提とし たシステム仕様書との不ー致が発見された場合には、発注者は当該不 一致の原因について、まず、協議をもうしいれます。  協議の結果、当該不―致が開発担当者の責に帰すべきものであると 判断された場合には、開発担当者は無償で当該納入物品の修正を行う べきものです。

  このように、瑕疵担保の規定を置いて、協議して、責任の所在を明 確にするとしても、当初のシステム仕様書が不完全であったり、内容 が不明確であるときは、瑕疵の判断ができなくなるので、当初からし っかりしたものを作っておく必要があるでしょう。



44 契約に際し、検討すべき重要事項

会社の作業の合理化・効率化のために、自社用のソフトの開発を したいとき、どのような点に注意すべきでしょうか。

 契約に際し、契約当事者間で十分検討すべき内容を次の点です。

1 推進体制の強化(注文者と、受注者との間の話し合いの強化)
    (1)窓口の一元化
    (2)定期協議会の開催
    (3)役割分担

2 仕様の確定 (何を開発するかを明らかにし、その内容を確定する)
    (1)仕様の作成主体
    (2)仕様の検収
    (3)仕様の確定手続

3 仕様の変更 (開発途上で各種変更が生ずる場合があるが、変更の手続き を確定して、変更による混乱を防ぐ)
    (1)変更の申し入れ方法
    (2)変更の受け入れ方法
    (3)変更仕様書の作成
   (4)変更された仕様の確定手続

4 検  収 (検査仕様書を確定して、確実な受け入れ検査が実施される よう受け入れの仕様、基準を明確にする)
    (1)検収の基準
    (2)検収の期間

5 瑕疵担保責任 (開発品に不備があったときの責任関係、損害額の範囲、保 証期間の定め)
    (1)瑕疵修補責任の範囲
    (2)損害賠償の範囲
    (3)瑕疵担保責任期間

6 知的財産権(プログラム等の権利の帰属を明確に定める)
    (1)プログラムの権利の帰属
    (2)ドキュメントの権利の帰属
    (3)ルーチン、モジュール等の権利の帰属
    (4)無形情報の取り扱い

7 機密保持義務 (開発に伴う機密の開示、利用に関する権利保護の規定)   
   開発契約上知り得た相手方固有の技術上、販売上その 他の業務上の機密を契約期間中、契約終了後第三者に開 示漏洩しない。


 以上は、通産省で、トラブルとして報告された事案を基礎に、開発 契約締結に際して、最低限検討し、盛り込むべきものとされたもので すが、業界でも、十分検討すべき、ガイドラインとなっています。