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よくある”問答”もんどう・・・・1

1 「ひらめき」の保護
2 パソコンソフトの改良
3、漫画のキャラクターに、著作権はあるのか
4、アニメなどの独特なしゃべりかたや独特な言い回しや話し方の癖などは保護の対象になるか。
5、音楽の著作権
6、他人の絵を写真にとって利用する
7、写真の利用
8、ダビンチや池田満寿夫氏のような有名な人の作品は無断利用してもよいか
9、地図の著作権
10、解剖図など
11、Cマークのない外国の著作物は利用自由か
12、ある作品に手を加えて自分で、加工作品を作って利用したい
13、埋もれた学説や作品は勝手に使っても良いものか

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1「ひらめき」の保護


 「ひらめき」が巨万の富を生み出したり、人類の大きな発展に寄与すること
もまれではありません。ニュートンのりんごの話も、その時はひらめきだった
わけですから、それをどのように発展させるか、その「ひらめき」を「もの」
にできるかが重要になります。 
  ものになりそうな「ひらめき」が浮かんだときにどうするか、ということを
考えましょう。
  
  まずは、その「ひらめき」の内容を分析しなければなりません。自然の法則
や、数学的な法則に関するひらめきは科学者としての発見になるでしょう。お
金にはならないのがほとんどです。このひらめきは、理論化して学会に公表す
ることになります。
  「ひらめき」が、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」
に該当するときは「発明」になり、特許法による保護があります(特許法第2
条)。判断が難しいものですが、要は、産業上で、利用可能な「新規」な発明
ということでしょう。新しいシステムのエンジンだとか、フロッピーディスク
の発明だとか、今までになかった新しいものの思い付き「ひらめき」は発明に
なることもあります。
  そこまでいかなくても、あるものの不便さを改善したり、新しい方法論を開
発したり、ものの形や構造を工夫して、役に立つものを考案したときは、「自
然法則を利用した技術的思想の創作」に該当する可能性があります(実用新案
法第2条)先ほどの発明ほど「高度なもの」でなくてもいいのです。役に立つ
といった感覚でいいものでしょう。
  これは、皆さんもよく目にするでしょう。多くの商品には、注意してみると、
実用新案登録出願中などと印刷されています。これらが、すべて「実用新案」
とみとめられるわけではないのですが、考案した方が、いち早く出願したこと
を示して、権利保全をはかっているわけです。先願主義といって、同一の内容
の申請にあっては先に申請した方が優先権を持つことになるので、そのような
表記を行っているわけです。
  このような、産業上の利用に革新的な役割を果たすというものは実に多く、
ちょっとしたことと思われることが、意外な権利になることもあります。

  以上特許の場合も、実用新案の場合も、弁理士に相談して、自らの発案が、
審査基準にそっているか、申請可能なほどにまとまっているか、申請書を書け
る内容かといったことを検討してもらわなければなりません。専門家の目で見
て、勝ちある発想「ひらめき」であれば、多少の投資になっても、申請して、
権利として保全しておくことができます。





2 パソコンソフトの改良


  パソコンソフトの専門家や、あるソフトを使う人の中には、ソフトの改良の
必要性を感じて、自ら改良を始める人がいます。
  本来、パソコンのソフトには、著作権があるはずです  そして多くの場合は
プログラム著作権の登録がなされています。
  パソコンのソフトにも文学作品と同様の著作としての評価があり、生まれる
と同時に著作権が発生します。したがって、登録などしなくても著作権は発生
しますが、登録しないと権利の発生時期を特定できず、権利の先後関係に関す
る争いが生じた際、登録があれば、それが唯一の公的な認証となり、決め手に
事欠くことを回避することができます。
  パソコンのソフトは、同じような発想のものが、同時に生まれることがしば
しばあり、争いの危険もあるのです。みんな同じように困って、同じ事を考え
るということになるのでしょう。

  こうしたソフトを利用していて、よりよい改良が見つかり、プログラムを変
えたいと思ったときはどうしたらいいでしょうか。プログラムには著作権があ
ることは指摘した通りです。したがって、改良しようとするものも作者の承諾
がないと勝手な改変はできないのです。したがって、当該ソフトに手を加える
ことはできません。勝手に変えていけないというのも著作権の内容になってい
ます(著作権法20条同一性保持権)。

  さて、ではこうした改良はどのように行えばいいのでしょうか。改良すべき
部分を独立させて、別のプログラムとすることができれば、そのように独立さ
せ、別の著作物とすることができます。主要なソフトの改良ソフトが「アプリ
ケーションソフト」「アプリソフト」「アプレット」などと呼ばれて、主要な
ソフトを、より利用しやすくするものとして評価され利用されています。
  改良という方法は、このように、本体のプログラムには改変を加えず、その
本体のプログラムをサポートする別のプログラムとして、作成し、提供するべ
きものです  
  この関係は、基本的な発明と、その基本的な発明に対し、それを利用した改
良発明との関係に類似していますが、特許権の場合は、さらに注意を要する部
分があります。
  基礎的な発明に基づいて「改良発明」をおこない、その改良に基づいて、改
良特許権の申請をすることもできますが、その申請にかかる改良特許権を実施
しようとすると、多くの場合、「基礎発明」を一緒に実施することになるので
通常は、基礎発明の特許権者による実施権許諾を受ける必要があります。
  
  改良のソフトの場合は、こうした実施権許諾といった制度はなく、また、も
とのプログラムには一切触れていませんし、何ら加工を加えるものでもありま
せん。そして、もとのプログラムを利用する権利のある人が、併せて利用する
という関係になるだけですから、もとの権利者には一切影響を与えません。
 従って、何らの制限もなく、自由に改良作品を提供することができます





3、 漫画のキャラクターに、著作権はあるのか


  気に入った図柄ができたとき、自分で何かのデザインができたとき、それが
自ら創作したもので、他の作品の真似でないときは、意匠、著作といった考え
でその保護が考えられます。

  まず、意匠というのは、「物品の形状、模様、もしくは色彩またはこれらの
結合であって、視覚を通じて美感を起こさせるもの」(意匠法2条)と定義さ
れるもので一般に商品や、実用品などに用いられるデザインといわれるものと
考えていただいていいでしょう。従って、美術品や、高度な工芸品などとは異
なる扱いになります。
  建築デザイン、車のデザイン、機械のデザイン、くしのデザイン、ぬいぐる
みのデザインなど多岐にわたるものがあります。
  こうしたデザインを、特に保護するものとして意匠法というものがあり、意
匠登録制度があります。既に知られてものであったり、すでに創作者がいるも
のはできませんが、まったく新たにデザインしたものであれば、出願できます。
  しかし、これに対しては、特許と同様の審査があり、専門の審査官が申請を
拒絶するかどうかを審査します。  意匠の具体例としてはキャラクター商品の
スヌーピーのぬいぐるみ(東京地裁昭和58年6月3日判決)パンチパーマ用
のくし(大阪地裁昭和59年12月20日判決)など、身の回りのものが多く
含まれています。しかし、一般的なもの、普及しているものの形やデザインは
「新規性」がないので登録できません。
  またこの権利は、著作権とは異なり、自然に発生するものではなく、必ず登
録することが必要です。意匠権は設定の登録により発生するとされ(意匠法第
20条)いったん登録されると15年間権利があるとされます(同法第21条)

  次に著作権で考えてみましょう。著作権というのは、「思想または感情を創
作的に表現したものであって文学、学術、芸術または音楽の範囲に属するもの」
(著作権法第2条)とされています。
  ここでの、漫画のキャラクターが著作権法上の著作物になるかについては、
「さざえさん」事件(東京地裁昭和51年5月26日判決)において著作権が
認められたものとされて以来、市民権を得たといえるでしょう。
  こうして、漫画のキャラクターも、著作物としてみとめられる可能性がある
ことになります。ただ、ここでは文学、学術、芸術、音楽の範囲に入らないと
いけないので、何でもいいというわけではありません。また、何よりも創作性
が必要になりますので、模倣や、アレンジといったものでは認められないので、
注意を要します。





4、 アニメなどの独特なしゃべりかたや独特な言い回しや話し方の癖などは
保護の対象になるか。


  音楽などは、歌詞、メロディーともに、著作権法上保護されるものとされて
います。また、そうした音楽を実際に演奏した場合の演奏自体や、その際に歌
った歌自体も、保護の対象となっています。従って、音楽に関してはその音楽
の原作者の著作権のほかに、演奏家、歌手といった実演家に、実演に関する権
利(著作隣接権)が発生するのです。
  こうして、音楽などの実演においては複雑な権利関係が生じるので、慎重な
対処が必要となるわけです。

  さて、こうした音楽のほか、実際の演劇ではその実演じたいが著作物になり
ます。従って、その実演をテレビで放映したり、録画したりしたものには当然
著作権の問題が付随することになるのです。一般に、何の権利もないものは、
そうした実演を録音したり、録画することは禁止されており、そうした録画、
録音を利用するには演劇などを演じたもの、主催したものなどの承諾を必要と
するのです。

  アニメーションや、ゲームソフトのキャラクターの動きなども映画と同じよ
うに扱われます。映画は明らかに著作物であり、これと同じように保護される
というのが判例です(東京地方裁判所59年9月28日判決「パックマン事件」)。
  これらの問題は、画像や、場面をそのまま使ってはならないというものでし
た。そのままの使用はその著作者の著作権を侵害するというものでした。

  さて、独特な言い回しや、口調、しゃべりかたの癖などは、保護の対象にな
るでしょうか。こうした事案での判例はないようなので、はっきりとはいえま
せんが、これまでの実例を見比べた限りでは、どう見ても保護の対象にはなり
ません。この問題は、そのしゃべりかたや、口調などを、その人のもの、権利
として認めてよいかということです。その人の、個人の財産にしていいか、と
いう問題です。たとえば、裏声でしゃべることで、人気が出たからといって、
他の人が裏声でしゃべることを禁止すべきでしょうか。これは、どう見ても無
理があるでしょう。

  著作権というのは、創造性のあるものが、固定化して権利として保護できる
もの、保護の価値があるものを対象とするものであり、そこまで純化していな
いものはまだまだ権利化していないというほかないでしょう。





5 音楽の著作権


  自作の音楽を守るには、著作権登録をするのが一番よい方法です。
  他人の音楽の真似をしたのでは、創作性がないので認められませんが、創作
性のある自作の音楽は、音楽的な完成度や、ヒットしたかなどといった評価と
はまったく関係なく、著作物としての評価を受けることになります  
  ここでは、音楽著作権は二つのものとして、区別されます。
  第一は歌詞の部分が、独立の著作物になります。歌詞自体を著作物として、
詩の一つとして登録することができます。
  第二は、これと異なるものとして切り離した、音楽そのもの、「旋律、和音、
節奏、形式の4要素が一体となった楽曲」(東京地方裁判所昭和43年5月
13日)も独立に著作物となり、保護の対象となるのでです。

  音楽の著作権は、著作権法の定める方法によって登録をしなければなりませ
んが、著作権自体は登録しなくても発生しますので、必須のものではありませ
ん。しかし音楽の世界でもよく似た音楽というものは、しばしば問題になりま
すので、争いが起きたときに、どちらが先かどちらが権利として守られている
かといった問題が生じますので、できるだけ登録をするようにしてください。
  この登録は登録するには、楽譜を添付して、その音楽を固定化した上で、登
録する必要があります。

  また、ある音楽が気に入っているが、もっと工夫してアレンジして、前の曲
とは少し違ったものにするということあります。編曲というものです。
  この編曲自体を、独立の著作物といいうるかは、個別に判断すべきもので、
一概に決めることはできません。  元の曲との関係、どの程度の創造性がある
か、編曲した内容、先ほどの判例にいう「旋律、和音、節奏、形式の4要素が
一体となった楽曲」としての各要素が、どのように似ていて、どのように異な
っているか、といった点まで、総合的に見なければなりません。
  

  最後に、演奏者の創造性というものがあるでしょう。  ジャズ演奏家は、元
曲を演奏するとき、必ずといっていいほど、アドリブを入れ、変化を付け、そ
の奏者の個性を発揮した独特の演奏をするものです。この場合の音楽は通常録
音され、固定化されます。この場合はむしろ音楽そのものとしての創作物とい
うよりも、実演そのものの創作物、著作物と見た方がよいでしょう。まさに、
演奏そのものが著作物だという考え方です。





6 他人の絵を写真にとって利用する


  絵画に著作権があるかという問題ですが、著作権法は、その点はっきりと明
記しています。「絵画、版画、彫刻その他美術の著作物」を著作物といい、著
作権を認めるというものです(著作権法第10条1項4号)
  油絵、水彩画、デッサン、版画といったものにもすべて著作権があるといわ
れています。
  芸術性があるかないかということによって決められるものではありません。
そもそも芸術性という相対的なものがこうした著作性の判断になじむのかも問
題があるからです。
  結局、著作物といいうるには、創作的に制作されたものであればいいことに
なるでしょう。

  それを写真に取る行為は許されるでしょうか。
  美術館などにいって、撮影禁止と書いてあるのをよく見ることがあります。
これは、そうした美術品は、すべて、作者の著作権があり、それを写真という
手段で、複写することを禁じているからです。作者は、当該作品の複製する権
利を有しています(著作権法第21条)ので、他人が、これを勝手に複製する
ことはできません。
  従って、著作権のある美術品を勝手に写真にとってこれを利用することは原
則として禁止されている行為なのです。美術館などでは、この様な要請から、
あらかじめ、カメラの持ち込みを禁止して、入り口で取り上げるようにしてい
ますがこれは著作権法上当然のことなのです。

  こうした著作物の写真による複製の作成は、作者による許可が必要ですから、
美術展や、絵葉書、ポスターなどによって、いわば独占的に複写の権利が与え
られ、利用されているという状況になるのです。従って、勝手にポスターを作
ることも許されないし、ポスターをコピーするなどして、またそれから複製を
作るなどしてはいけません。

  これに参考になる判例につぎものがあります。有名な芸術家の作成した
「樹林」という題名のレリーフがあり、そのレリーフは芸術誌にも公表され、
美術関係の学生の知るところであったが、ある学生がこれをヒントにして卒業
作品を作成したが、その作品が元の作品「樹林」に依拠してこれに変形を加え
て制作されたものだとして、元の作者の翻訳権・同一性保持権を侵害したとさ
れ、この学生の卒業作品を写真にとって公表した行為は、元の作者の複製権を
侵害したものと判断された事件がありました(東京地方裁判所平成2年4月
27日判決)。
  これは大変興味深い判例で、有名な作品の模写や複写、盗用が、手書き、手
作りで行われた場合でも、元の作品の芸術的な特徴に依拠していると評価され
た場合は、たとえ後者の作業に多少の個性が入ったときでも、元の著作権が保
護されるということを明らかにしたものです。
   





7、 写真の利用


 雑誌や、写真集に掲載された写真を何かほかの目的に利用したいと考えるこ
とはよくあることでしょう。
  写真には、風景写真や、動物を撮った写真、草花を撮った写真など、いろい
ろなものがあります。
  そのようなものを見ていると、いつの間にか、写真家の存在を忘れるような
すばらしい写真に巡り合うことがあります。そんな時、目にみえるものが、写
真ではなく自然そのもののように感じることがあります。
  これこそまさに写真家の芸術かとしての力なのでしょう。ところが、その力
に気が付かないものは、移っているものが自然そのものだと勘違いして、その
ものを利用したくなるのです。自分が自然そのものを見ているような錯覚にと
らわれ、その写真に写真家の目や、アングル、光の調節、配置、画面構成、色
使いなど、まったく気が付かないのです。
  こうした時に、その写真は、自然そのものと勘違いされ、無断で、ポスター
にされたり、カレンダーに利用されたり、複写して販売されたりするのです。

  著作権法は、第10条1項8号に明確に「写真の著作物」という規定を置きま
した。写真は、文学作品、芸術作品とまったく同等に、著作物としての地位
を与えられているのです。

  この点では、報道写真も同様です。報道のための文章は、「事実の伝達にす
ぎない」雑報、時事の報道に関しては著作物に該当しないとされています(同
法10条第2項)。しかし、報道写真は、目的は報道ですが、単なる事実の伝
達ではなく、真実の切り方、表現行為、構図など、あらゆる面で、著作物性を
持つのです。

  ただ、大変困難な場面もあります。美術品を正確に複写した写真の類です。
これらは、元の作品をできる限り正確に表現する必要があり、写真家としての
個性や創造性を入れてはいけないからです。しかし、目の前のものを正確に表
現するには、ただコピーするのとは違う操作もまた必要とされます。一般には、
こうした美術作品の写真には著作権は認めず、元の作品の著作権の複写物とし
て扱うことが多いようです。
  
  ここから、元の絵などの著作権が、著作権の事項などで消滅しているような
場合に限っては、その写真は自由に利用できる場合もあります。従って、ミロ
のビーナス像の写真や、モナリサの微笑みの写真などは、比較的大量に出回っ
ているようですが、これらはみな、こうした背景があってのことなのです。 
 





8、ダビンチや池田満寿夫氏のような有名な人の作品は無断利用してもよいか


  池田満寿夫氏は現在活躍中の有名な版画家でもあります。池田満寿夫氏の作
成した、その版画の作品を勝手に利用することは、同氏の著作権を侵害するこ
とになるのは明らかでしょう。同氏の版画は、同氏の創造性の発揮された作品
であり、明らかに、同氏の著作権があるからです。
  さて、ではモナリザの微笑みというレオナルド・ダ・ビンチの作品がありま
すが、その作品を利用するのはどうでしょうか。あちこちのテレビで、びっく
りしてみたり、太らされたり、おちゃらけたように利用されていませんか。
  こんな利用の仕方が許されるのでしょうか。失礼ではないでしょうか。
  池田氏の作品は利用できないが、ダ・ビンチの作品は自由に使っていいのは
どうしてでしょうか。
ダ・ビンチの作品は芸実性が低いのでしょうか?
池田氏の作品の方が価値が高いのでしょうか? 著作権には著作権の保護期間というものがあります。 これは、ある芸術的な作品でも、その作品が人類共通の財産になった場合に は、一人のものとはせずに、人類共有のもの「パブリックドメイン」として、 誰でも自由に使えるようにしようという考えがあります。 こうした考えもあって、著作権には保護期間が定められ、作者の死亡後50 年を経過することで、著作権の保護期間が消滅することになっているのです (著作権法第51条)。 こうして、作者の死亡後50年したものは、原則として著作権の保護期間を 経過したものとして、人類が、みな自由に利用してもよいことになるのです。 こうして、現在モナリザがテレビで微笑んだり、パソコン雑誌で驚いたり、 さまざまに加工され、複写され、利用されているのです。 ただここでも、一つだけ注意をしてください。われわれがそうして美術品 を直接写真などに撮ることはほとんどできません。美術館へは、カメラ類の持 ち込みは禁止されているからです。従って、われわれが利用できるのは、写真 家の撮った写真だけです。この時、その美術品を正確に機械的にうつしとった ものは自由に利用して差し支えありませんが、さまざまな角度から創造性をも って写しているようなものについては、著作権者の主張が無いか、一度気をつ けてみる必要があるようです





9 地図の著作権


自分の家の場所を示したり、事務所の場所を示したりする場合、
手近な地図を利用して、その上にマークすると、極めて簡単にで
きます。大変わかりやすく、便利この上ないものとなります。
  ただ、よく考えると、この地図というものも、いろいろあり、
絵解き地図のようなかなりきれいな、美術品のようなものから、
日本国土地理院の作成した
測量地図そのもののような精密なものまで、本当に多様です。
  自宅の場所を示すようなときには、住宅地図のような大まかな
地図に書き込むでしょう。

  地図に著作権はあるのでしょうか。なければどのように利用し
てもいいはずですし、あれば、勝手に使うことはできないかもし
れません。

  著作権法の観点から見ますと、地図もまた著作物としての保護
が与えられています(著作権法第10条1項6号)。したがって
基本的な概念としては保護の範囲の著作物と評価されそうです。
  そのように、著作物性を正面から見とめている考えが多いよう
で、過去の判例にもそうした立場のものが多いようです。

  ただここで、注意すべきことは著作物は、「思想または感情を
創作的に表現した」もののはずで、航空写真や、正確無比な地図
の類は、そうした、個性的な創作性は入らない方が良いわけです。
  正確であることが、最大の使命ですから、著作権性は認められ
ない方がいいのです。その点では、法律や判例などと同じように
考えることが良いはずです。
  建設省には国土地理院というところがあり、ここが、もっとも
正確な地図を作っています。この地図は、政府が正式に認めたも
のであり、もっとも正確とされます。果たしてこれに著作物性が
あるでしょうか。測量法は、この成果を利用するときは、自由に
利用していいが、ただ、発行するものにその原点として、表記す
るようにという注意をしています(測量法第30条)。
  ここから、むしろ基本は、科学的な成果物であって、著作権法
によってではなく、全く別の観点からの保護を受けるとみるべき
でしょう。  

  ただ、美術品のような、絵解き地図や、案内図のように、表記
対象を一定の法則などで選別し、色彩し、デザインし、道の表記
や、川の表記、鉄道の表記などの工夫のあるものは、当然、創作
物ですから、著作物として保護されますので、当然、盗用するこ
とはできません。






10 解剖図など


解剖図、細密画、機械説明図、設計図、構造図など、ものの
表現方法ですが、どれも、正確が基本のようなものです。
  自由に描くというのではなく、できるだけ正確に、写実的に
描くという特徴を持ているともいえます。
  これらは、多くの観点から検討を要するものですから、ここ
では基本的なことのみ触れましょう。

  まず、設計図や構造図は、著作物であり、著作権によって保
護されますので、複写、利用はできません。これらは、設計士
の思想や工夫が詰まっているものであって、その工夫が表現さ
れている図面を、現実に作るものですから、現実は、その図面
によって作られたのですから、図面は基本的な存在ですから守
らなければなりません。

  次に、現実を映すという意味での、解剖図、細密画などにつ
いては、現実そのものではなく、専門的な知識を基礎において、
見るものが、物事の中心を、正確に理解するために作成された
りするので、色の付け方、形の取り方、他とのバランスなど、
微妙なデフォルメがなされたり、さまざまな工夫があるようで
す。人体の解剖図でも、見る角度、切った様子、色合い、表現
など、そのものの現実とは大きく異なっているはずですが、写
真でそのものを、そのままに見せるよりもインパクトがあり、
説得力があるということは、そこに、作者の大きな力が表現さ
れ、思想がありというべきものでしょう。従って、こうしたも
のには、美術画としての著作性が認められることが多いでしょ
う。

  最後に、現実の機械などを表現し、説明する場合の説明図や、
構造図はどうでしょうか。基本的にはデフォルメや、思想を入
れては困ります。そのものが、正確に表示されていなければな
らないはずです。従って、基本的には著作物という扱いは困難
でしょう。機械の写真から形を描いたり、設計図を利用したり、
方法はさまざまでしょうが説明図面そのものには「創意工夫」
はないはずです。しかし、説明文や添えられたイラスト、それ
らと図面との総合的なバランスによる表現力にはなかなかのも
のがある時があります。こうしたものには、全体としての著作
性が出てくるともいえるでしょう。
  





11 Cマークのない外国の著作物は利用自由か


  アメリカの写真などを見ますと、その下の部分に丸にCの入った
マークが必ずといっていいほどついています。これは著作権表示の
一つです。正確には、Copylight というもので、その省略形とされ
認められています。このマークの後には、最初に発行した年月の表
示がなされ、改定や、変更があれば、その変更などの年月も表記し
ます。こうして、表記されてはじめて、アメリカなどの形式法制度
の下で著作権が保護されることになるのです。
  Cマークは、アメリカなどの、著作権が、ある制度の登録、表記、
告知など、一定の方式を踏まないと成立しないという法制度を持っ
ている国で、最初に出版するときに必要なものであって、アメリカ
人でないときは、ほとんど関係ないことなのです。日本は、ヨーロ
ッパと同様に、無法式主義を採用していますので、著作権の発生に
は、何らの方式も、表記も、登録も必要ないので、名にも書かなく
ていいのです。
  よく我が国でも本や、雑誌で、このCマークを表記しているもの
があります。しかし、それが、アメリカ向けのものであればわかり
ますが、日本語で書かれた、日本人向けの書籍で、日本で出版され
たものであれば、こうした表記は無意味です。
  

  では、アメリカ人が日本で出版した文書や、写真はに、Cマーク
がないときに、勝手にそれをコピーしたりして利用できるでしょう
か。できません。
  わが国の出版物は、誰が出そうと、すべて、日本の著作権法が当
然に適用され、一切差別はありません。従って、これらも当然保護
されています。

  Cマークのあるものを無断で利用したときはどうでしょうか。
  アメリカの法律でも守られていますから、当然違法行為になりま
す。しかし、日本での違法行為は、日本の著作権法の適用がありま
すので、日本法で考えますと、発行すれば当然、著作権があるので
すから、違法は違法で、変化はあません。むしろ、日本では著作権
は自然に発生するので、アメリカの保護より広い保護がなされると
いうのが現実でしょう。 






12 ある作品に手を加えて自分で、加工作品を作って利用したい


  他人の作品を、スキャナーなどで読み込んで、加工、アレンジ
して、自分の個性を発揮した作品を作ったといったときは、どの
ように評価すべきでしょうか。
  
  まず、他人の作品をスキャナーで読み込んで、利用する行為自
体がまず問題です。
  基礎として利用した作品に付いて考えますと、まずその作品が
利用価値のあるものであったときは、その価値がたかいので利用
したということがいえるでしょう。きっと、すばらしいもので、
だからこを利用する気になったのでしょう。その作品には著作権
が認められることになるでしょう。著作物ということになると、
その利用は大変制限されます。複写するときも複写したものをそ
のまま個人の利用目的でのみ使用するときに許されるのみで、そ
れ以上の変更はできないのです。
  これは、著作権の中の著作人格権というもので、大変重要視さ
れています。すなわち、その作品に対する作者の公表権、氏名表
示権、変更禁止(同一性保持権)というものがあります(著作権
法第19、20、21条)。
  この観点からは、自由にスキャナーで捕らえて、加工すること
自体、その著作物を変更することになり、同一性保持権を侵害す
るというほかないでしょう。
  この点はさて置いて、スキャナーしたものを加工した場合、そ
の作品の権利者は誰かという点を検討してみましょう。たとえば、
ある作品の輪郭を利用するとか、形を利用するといったようにそ
の作品のある部分のみの利用といった場合、その輪郭や形を基本
にして、その上に、絵を書き込んだり、彩色したりして作者のイ
メージを新たに作り上げるということがあるでしょう。この場合、
基礎においたものが特殊なもので、形だけからその元の作品が想
像できたり、イメージできるようなときは違法ということになり
ます。

  元の形も作品も想像できず、イメージできないほどに加工した
場合は、民法の加工の条文246条1項但書の趣旨にしたがって
加工によって元のもの以上の価値を生み出したとして、加工した
ものの所有権(民法の条文は所有権の問題)、場合によっては著作
権も取得できるといっていいでしょう。






13 埋もれた学説や作品は勝手に使っても良いものか


 人の作品や、学説などが埋もれていたとして、それを桧舞台に引
き出してあげることは大変重要なことです。さて、他人の文章や、
作品が、人知れず埋もれていることに気が付き、その物を加工して、
自分のものとして公表することは可能でしょうか。
  人の作品には、創造性や、創作性があり、思想や感情の表現物で
あるとき、そこに著作権というものが発生します。これは、特別な
手続きや、資格、検査といったものもなく、発生と同時に、いわば
作られた作品の発生と同時に当然に発生するものなのです。

  従って、売れているとか、いないとか、評価されているとかいな
いとか、埋もれているかいないかといったことは、著作権の発生に
は全く関係のないことなのです。
  
  作品の評価が著作権の成立に関係ないということはおわかりいた
だけたでしょう。そうしますと、他の作品を無断でアレンジしたり
利用することは著作権法に違反するということになり、決して許さ
れるものではないのです。

  反対に、うずもれてしまった作品こそ、作家の思いが込められて
いて、作家にとっては大変大切なものであり、売れたもの、公表さ
れたもの以上に執着があるといったばあいがあります。
  従って、他人の作品や、文章を、勝手に利用するようなことは避
けなければなりません。

  ここで、学説の特殊性を一つだけ指摘しましょう。学説というの
は、文章の言い回しや、表現といったレベルの問題ではなく、論理
構造や、物事の法則性、対象の分析や評価、価値観の設定など、普
及させることや主流になるということが、その学説の存在意義であ
って、真似することも、利用することもいっこうにかまいません。
  表現その物まで写すようなことはいけませんが、学説自体を多少
修正しながら、その学説を自分の中に取り込んで、自分の学説の中
で、表現し利用することは自由といえます。

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