小学校ホームページ インターネト教育

 

世田谷のある小学校で、ホームページをもつことが禁止  されるという事件が起きました。インターネット教育が 大きな成果を収めている最中の、大変不幸な事件です。 果たして、その真相は、そしてその行く方は。

先ずはじめに、ことの始まりを見て下さい。ご担当の先生に了解をいただいたものを、一部編集して、転載しました。

1[ことの経緯]

世田谷のある学校で、あるクラスの担任が、クラスの教育に役立てようと、クラスのホームページ作りを企画。 学校では、インターネットの接続していないので、ひとまず、担任の個人のホームページにに間借りする形で、 ホームページを公開し始める。 11月6日 東京都世田谷〇〇〇小学校「5年1組物語」を現在のページにある集合写真と児童の実名入りでアップロード。 同時にNTTほか4つのサーチエンジンの「小学校」のジャンルに登録する。その後、いろいろな方とのメール交換が始まる。 11月19日 夕方、指導主事2名が来校。ホームページの事実を確認し、個人情報保護条例に違反していて、 審議会で問題となるおそれがあるからと言う理由で、削除を迫る。「できない。」と答えると「帰って検討する。」と言って帰る。 11月20日 午後4時半ごろ学校長とともに指導室に呼び出される。 世田谷区個人情報保護条例の一部分のコピー(2枚)と、地方公務員法32条と地方教育行政法43条の抜粋コピーを配られ、 違反しているので 削除すること、従わないならば前述の関係法令によって処分することを説 明される。 そのときの条例違反の争点は (ア)職務上収集した個人情報(氏名も含む)をコンピューターを通してフロッピーディスクに入れた。 (電子計算組織による処理の禁止)[パソコンで名簿を作ることも禁止されている。] (イ)その情報を外部に持ち出した。つまり、家にもって帰った。 (適正管理の原則違反)[教師が、テスト用紙をうちで採点することも名簿をうちに持ち帰ることも禁止だそうです。] (ウ)個人情報を外部に公表した(外部提供の禁止違反) (エ)コンピュータを外部のコンピュータと接続した。 (学校を含むいわ ゆる「実施機関」の電子計算組織の結合の禁止) [これは後(11月30日)に、学校教育部長が〇〇〇小学校において新たに付け加えたことですが、 職員の私物コンピュータも外部接続が禁止だそうです。] 12月3日(火)朝日新聞に記事が出る。         午後3時30分より、臨時保護者会(校長立ち会いのもとに20名出席) 保護者のホームページ継続の意思が確認される。 12月4日(水)読売、毎日、東京新聞に記事が出る。 12月5日(木)学校教育部長と指導主事2名が来校。午後6時から11時まで校長、教頭を交えて対談。

(対談の内容)

1.事実関係
2.条例との関係
3.実験校における個人情報保護基準(予定) 事実関係では、まず、11月21日の指導室会談で使用した、条例の関係部分と処分に関係した関連法規の一部分が書かれた紙は 私にだけ対して作った書類ではなく、研修会で使用した書類であること。それから、11月28日の「削除命令」は「命令」ではない。 従って、すぐに処分と結びつくものではない。といった内容でした。 条例との関係においては、遠隔地にいながら「世田谷区個人情報保護条例」を入手してくださり、 ご助言いただいた方が何名かおりますので、少し詳しく解説させていただきます。 今回のことに関係する項目とそれに対する解釈の違いなどが話し合われました。 第9条(業務の登録)においては「業務」に対する定義を巡っての解釈の違いがはっきりしました。 第15条(目的外利用の制限)、第16条(外部提供の制限)においては審議会にかけることが必要な 事柄を巡って区教委側の条例読み違いがはっきりしました。 両条とも審議会の対象となるのは、「前項第3号」に規定されている特殊なケースに限られています。 つまり、インターネット弁護士協議会代表の牧野二郎先生が12月4日の朝日新聞で明らかにしておられますように、 本人の同意を得ていれば、審議会にかけることなく、個人情報の目的外利 用も外部提供も問題なくできるのです。 あとは、第17条(電子計算機組織への記録)と第18条(電子計算機組 織の結合の禁止)に対する解釈が残っています。 つまり、本人が希望して 自らの手で、自分のフロッピーディスクに自分の名前を記録することが、 第17条の 「電子計算組織への記録の禁止」に当たるのか、また、「実施 機関」の職員である教師の個人的所有物であるパソコンも、 インターネット等への外部接続が禁止されているのか。また、それはケースバイケース なのか、といったことです。 こちらが指摘した条文については、役所で関係部署と検討すると言われて帰られましたが、こちらとしては 11月28日の口頭での削除命令(現在では「指導」とか「お願い」だったとかおっしゃられていますが)の際に 言われた「のちに文書で連絡する」の「文書」をきちんとだしていただくよう、再度お願いしました。 「条例違反」を指摘したきちんとした文書が未だ出ていないのが現状です。 最後に多聞小学校と駒留中学で、開始される予定のインターネット接続実験の概要について書かれたプリントを渡されました。 内容は、「電子メールにおける結合の相手方に対しては、あらかじめ個人情報の取り扱いについての基本事項 (秘密保持、目的外利用、外部提供の禁止、部外者の機器操作規制等)の覚え書きを取り交わす」とか 「接続したパソコンに入力した個人情報はすぐに消去しなければならない。」などかなり厳しいものになっています。 新聞紙上では、審議会の承認を取り12月10日より接続が開始されると書かれていましたが、事実ではありません。 審議会は多聞小学校の電子計算組織が外部接続することだけを承認しただけで、そこで利用される情報の種類や管理、 つまりソフトの面においては何の承認もしていません。まだホームページの作成も行われておらず、 実際の立ち上げは来年度になる公算が強くなっています。 また、今後2年間は試験期間とされていて、少なくともその間は他の学校がインターネット接続を行うことはできません。 さらに悪いことに、昨年9月より世田谷区の全小学校に入っている8台の富士通FMタウンズ(Win3.1、HDD500MB、RAM20MB) ではインターネット接続が不可能であることを区教委も認めています(私はそれなりのハードを追加すれば何とかできない ことはないと思うのですが)。 現在、学校予算を使ってもハードの面での支出は許されていません。このパソコンのリース期間は5年間で、 途中解約には違約金を払わねばならず、ここへきて区教委の見通しのなさが審議会のメンバーなどの間で問題になっているようです。 つまり、このまま事態が変わらなければ、世田谷区の小学生が学校でインターネットの恩恵に浴するのは来世紀以降になる 可能性もあります。 それと関係して、12月3日の朝日新聞紙上で、中村学校教育部長が、「きめられた手続きをとりなさい。」と言っている 「手続き」とは、今回 指導室が多聞小学校を使って時間と労力をかけて行った審議会への手続きであり、 この2校以外に認められる可能性はまずない(実際に認められていない)ことは、11月21日の指導室会談で 指導主事が言明しています。 むしろ「手続き」は11月21日にこちら側(私と学校長)がお願いしたことです。中村教育部長は朝日新聞が動き出すまでは ことの次第を知らなかったようで、11月30日の代田小学校における朝日新聞の記者との対談においては 「(ホームページは)今のままなら何も条例に反していない。」と答えて、後に訂正するなど、 それまでに至る経緯を全く捕らえていなかったようです。 (経緯の続き) 12月7日(土) 夜7時、デニーズで担任を抜かした保護者の会合が開かれる(20名出席)          インターネットの危険性などについて討議されたとのこと          翌日、学級代表から連絡が入り、全員の意志で、ホームページ継続が確認され、          区教委に手紙を出すことが決まった旨が伝えられる。 12月8日(日) 以後、会合の決定に沿って手紙が作成され、連絡網で保護者全員の承認を得る 12月9日(月) 学級31名全員のホームページ参加の希望と承認が保護者のサイン付きで確認される 12月11日(水)教育センターから全小中学校に流される教育関係の新聞記事のFAXで読売新聞の          投書欄に載った2つの投書のうち、「未成年者の個人情報保護を」の切り抜きコピーだけが流される。          夕方、センターに抗議に行く。翌日もう一方の投書「情報発信者の意志を大切に」が          流される。(こういうことって疲れますね。) 12月12日(木)学級代表が区教委に出す手紙をもって校長、教頭に見せに行く。          訂正が入ったとのこと。            保護者代表と担当指導主事との話し合いの場が設定される。 12月13日(金)午前中にクラスの学級代表2人と本校PTA会長が、区教委指導室を訪れ、          ホームページを何とか続けさせてもらいたい趣旨の区教委宛の手紙を、          担当指導主事に手渡しました。「保護者一同」の名で、全員の意志としての手紙です。            その場で区教委は、初めて処理案を提示してきました。          内容は、      1.いったん中止(削除)する。      2.地域の人が主催して、地域の活動として、ホームページを立ち上げる。      3.私がその活動の顧問となる。      4.学校のパソコンは、放課後に地域に解放してホームページづくりやメールの作成ができるようにする。 要するに、区教委が関与しないところでやってほしい、と言うものです。 12月20日に2回目の会合が予定されており、そのときまでに保護者側の回答を求めています。 以上が、昨年96年内の動きでした。そのごの動きは分かり次第掲載します。

第2 世田谷区個人情報保護条例違反の主張について

1 個人情報の収集が条例違反になると言う説明について   世田谷区個人情報保護条例では、第7条、および17条1項で収集禁止事項に関する個人情報と言う規定を設けて、   その情報の収集禁止、記録禁止の規定を置きましたが、これは、思想信条、差別の原因となる事項、犯罪事項などの   特殊な情報をいうのであり、一般的な個人情報の収集には禁止規定はありません。   おそらくこの部分は読み違えでしょう。

2 個人情報(生徒の情報)をフロッピーに落とし、持ち帰り、自分のパソコンに入れて、ハードディスクに記録した行為、   および、公表した行為が条例に違反すると言う説明について。      生徒に関わる個人情報を本来の目的(どの範囲で考えるかで広さに差はあるでしょう)に促して利用するのが本則ですが、   目的外利用に関しては条例15条が、「本人の同意を得て」利用ができる旨定めています。   したがって、今回のケースでは、生徒および父兄の同意があり、明らかに「本人の同意」と認定できるケースですから、   15条によってみとめられるものでしょう。       次に、公表行為についてですが、同条例の16条には、「本人の同意」を得て、外部提供することができる」と言う明文があり、   本人の同意がある以上は、外部公表もまったく問題ありません。   この規定で、「外部」の限定もなく、定義規定もありません。したがって、教員の私人としての地位を、   一つの「外部」考えられるとすれば、何ら問題のない利用と言うことになります。   ただし、「実施機関」(この場合は教育委員会もしくは教員になるでしょう)は情報の外部提供をした時は、   事後でいいのですが、「速やかに」その事実を当該本人と、審議会に報告する必要があるとされています。

3 教員個人の自宅からのインターネット接続も禁止、の主張について       条例18条では「実施機関は、個人情報を処理するため、その電子計算組織(学校の中のネット、教育異委員会のなかの   ネットと言う意味でしょう)と、区の機関以外のものの電子計算組織(インターネットを含みますね)との通信回線等による   結合を行ってはならない。」と規定します。これは条例条文上明らかなように、実施機関のネットと、インターネットなど   外部ネットの結合の禁止規定であり、個人の問題ではありません。教育委員会の解釈の間違えではないかと思います。   この条文の但し書きは、担任の先生もご指摘になるのとおり、審議会の承認のもとで、インターネットなどとの接続も可能と   するもので、進行中のものと理解できます。

4 この問題の基本的な視点

  この条例の基本的な考えは、  「自己に関する情報の流れをコントロールする権利」(世田谷区パンフレット)    を保証するものです。こうした情報の尊重の条例であり、そのための情報を持つものの、自己規制を求めるとともに、   個人の管理権が活用されること、自己情報の開示請求、自己情報開示の同意、間違えの訂正請求権と言ったものを認めたものです。

  したがって、個人が自己の情報を開示したいと言う権利を押し込めて、自己情報の自主的開示を禁止するために   使うものではありません。個人は、自己の権利として、自己情報の開示権を持ち、これは、憲法上の権利でしょう。   これは、可能なかぎり児童にも保証されるべきで、教員と、両親の監護のもと、適正に活用されるべきものです。   決して禁止したり、むやみに制限してはならないものでしょう。

  実名の公表とか、個人の写真、顔の判明するような資料の提示に関しては、両親と、教員とで議論して検討すべき事項であり、   その可能的危険に対してどのように考えるかは、大いに議論すべき問題でしょう。その議論は必要なことと思いますが、   あくまでも、建設的に議論すべき問題であって、そのことを理由に規制することは、人権の尊重(自己情報開示の権利)   と言う観点で問題が残ります。


第3 教育の成果を尊重したい  この間のホームページの作成の中で、大変重要な動きがありました。  それは、小学生たちが、「著作権」「肖像権」といった、大変難しい権利の内容を、実に正確に理解し始めたことです。
  これは、本当に、驚くべき成果です。「著作権」「肖像権」といったものは、大変抽象的なもので、実は、大人 にとっても
  理解するのは困難なものなのです。  


著作権を学ぶ

小学生たちは、自分たちでホームページを作る中で、漫画を書き、似顔絵を 描き、写真を使い、工夫を凝らしたそうです。
その中から、漫画が、有名な漫画に似ているということで、そのまま真似していて良いのか、議論になったそうです。 その中から、漫画であっても、その特徴は、その漫画家の個性であり大切にすべきだという結論に至ったというのです。 大人ですら理解することの困難なものを、自らホームページを作るという経 験をつむことで、しっかりと身につけているのです。 これは大変重要なことです。  

肖像権を学ぶ

また、今回の事件を通して、写真を載せることの意味を考え、友達の写真を本人の承諾なく勝手に載せるのは、 いけないことだということを正確に学び取っているといいます。現在雑誌などで、他人の写真を無断盗用する例が多い中で、 大人以上に、きちんと理解しているというわけです。   

そして、社会との関わりを学ぶ

こうして、ホームページを作りを通して、社会との関わり、世界との関わりを教育者の監督のもとで、適切に、 体験的に学んでいるというのは、本当にすばらしいことです。こうした教育こそが、未来の、世界市民を育成するものだと思われます。 教育委員会の慎重な対処を望むものです。

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