流れ星に願いをかけて









貴方を独占できるなら・・・・・・・











When you wish upon a star.












ザナルカンドでは、あまり星は見えない。

街が光で溢れていて、そこにあるはずのものが見えない。

光は闇を明るく照らしてくれる。

けれど光の中で、光は輝けないものなのだ。

鏡のように海に月は映るのに、星は目を凝らしても見るのが難しい。

ここは、そんな世界。











そんな世界にありながら、ふと故郷を思い出す。

星など当たり前に存在して、空を覆うほどに輝いていた。

月の光が、それを邪魔することはない。

もちろん地上にも、そんな無粋な光は存在しない。











今はまだ帰れない故郷に思いを馳せながら街をぶらぶらと歩いた。

その場所を見つけたのは、偶然か必然か。







今度、ティーダを連れてこよう。







何よりも、まずティーダを思う。

そんな自分に苦笑する。

けれど、そんなのも悪くない。

微温湯のようなこの世界で、愛するものを見つけた。

束の間の幸せを噛み締めながら、その場所を後にする。



























「ティーダ」

夕食の片付けも終え、ホットココアを飲んでいるティーダに声をかける。

こちらを振り向き、視線だけで答えてくる。



「飲み終わったら、少し出かけないか?」



こんな時間にアーロンが外に誘うことなど珍しい。

むしろ、いつもこんな時間に外に出ると怒られるくらいだ。



「めずらしっすね、こんな時間に・・・」



首を傾げながら尋ねる。



「あぁ、今日は特別だ。お前に見せたいものがあってな」



少し微笑みながら返してくるアーロンに、深くは問わず了解の旨を伝えた。



























夜の街を手を繋ぎながら歩く。

アーロンは何の迷いもなく、ティーダはアーロンに従い。

光に溢れていたはずの景色が、だんだんと変わっていく。

この辺りは街外れなのだ。

ここに踏み入れることはあまりない。

踏み入れる意味がない。

ここには、何も無いのだから。












何故アーロンはこんなところに連れてきたのだろう。

こんなところに何があるというのだろう。











とうとう、街灯の一つも見当たらなくなった。

辺りは瓦礫の山で、捨てられた町のようだった。

それも、目を凝らしてやっと見えるほどの闇に覆われていた。

照らすものが何も無くても安心していられるのは、繋いでいる手があるからだ。

昔は闇が恐かった。

そのまま飲まれてしまいそうな気がした。

いつもいつも、そこから救い出してくれた手があるから。

何も見えなくても、この温もりだけは信じられた。












やがて辺りは鬱蒼とした樹が茂り、まるで森に入り込んだようだった。

ザナルカンドにこんな場所が残っていたことに驚いた。

機械仕掛けの街。

生活に便利なように整えられた街。

何不自由なく暮らせる街。

・・・・・・・そこに自然がほとんど残っていないことを、何も不思議に思わなかった。

今日、アーロンにここに連れてこられるまで。












迷うことなく、後を振り返ることもなく、どんどん前に進んでいく。

こんなに近くにありながら、目の前の背中を見失わぬようにぎゅっと手を握る。

それでも、アーロンは振り向かない。

こんなことに不安を覚えてしまう自分を、情けなくも思う。

こっち向け、と念を送ってみる。











と、突然開けたところに出て、アーロンが振り向いた。























「上を見てみろ」
























言われるままに空を見上げると、瞳を疑う程に星の絨毯が広がっていた。


「・・・・・すっ・・・・・・げぇ・・・・・・・」


見たことも無い星の数に、さっきまでの不安など跡形もなく消え去った。

闇の中で輝くたくさんの星。

街中ではけして見ることのできなかった光。

いつも見ている光よりも、強く、眩しく、心に染み渡ってくる優しさ。







「・・・・・・・・この場所を見つけたとき、お前の顔が浮かんだ。」







握っていた手を引き寄せられて、アーロンに凭れかかるとすぐ側にアーロンの顔。

真っ直ぐに見詰め合うと、隻眼が少しだけ微笑んだ。


「・・・・・・・・お前に、見せたいと思った」


「・・・・へへっ」


ティーダは照れくさそうに微笑い、アーロンの肩に顔を埋めた。

んー、と少し考え込むような声を発した後、くるりと背を向けアーロンに背中を預けた。

そのままアーロンの肩に頭を預けると、アーロンの腕が胸の前で交差した。


「俺、こんなたくさんの星見たことないっす」


嬉しそうに言うティーダの金糸に口付け、


「知っているか?流れ星に願いを3回唱えられれば、その願いは叶うらしいぞ」


「流れ星?」


ティーダは不思議そうに視線をこちらに向けてくる。

そもそもザナルカンドで星を見る機会など滅多にないのだから知らなくても無理はないのかもしれない。


「星が空を流れるんだ。運がよければ見れるかもな」


ふぅん、と答えながら瞳は星に釘付けだ。

流れ星を探しているらしい。

アーロンは、飽くことなく金糸を梳き、口付けを繰り返す。












「あっ!!!」












不意に星が瞬いた。

一瞬の出来事だったが、確かに星が流れていった。

ティーダは空を見つめながら、手を組み合わせている。


「・・・・・・願いは、叶いそうか?」


「どうかなぁ・・・。でも、気持ちだけは込めたから・・・」


いまだ空を見上げるティーダの視線を、独占したくなって。

背後から抱き締めたまま首だけをこちらに向け、桜色の唇に口付ける。


「どんな願いだったんだ?」


尋ねると視線を合わせ、柔らかく微笑み、


「内緒っすよ」


と男の頬に口付けをし、腕の中からすり抜けていった。






















眠らない街、ザナルカンド。

闇の存在などかき消すかのように、光に溢れた街。

しかし、光の中にあって尚褪せない輝きを放つ存在がある。

夢の世界で見つけた、ただ一つの道標。

幸せを運ぶ、太陽。

流れ星に願うことで、お前の願いが叶うなら。

この夢の世界で、幸せに暮らしてゆけるなら・・・・・・。

罪に塗れた身でありながら、しかし心から希う。


























願い事は、ひとつだけ









あなたとともに在れる、永遠を・・・・・・・









end







 

karin様のHPから頂いてきてしまった素敵小説ですvv
アーロンの優しさとティーダの無邪気さに、思わず微笑んでしまうvv
反面、FF10のラストを想うと、胸がキュンとなってしまう・・・。
願わくば二人が永遠に寄り添って生きていけますよう・・・。


戻る