
GEMSTONES
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| 「へっへー。けっこう集まったねえ・・・。」 金髪の少女が、目を輝かせながら言った。 「全く、ホンっと女の子ってこういうの、好きだよなぁ・・・。」 赤髪の青年が少し呆れた口調で言う。水中での細かな作業の後のためか、スクワットと伸びを何回か繰り返していた。 「でも、たまにはこういうのもイイっスよ!」 金髪の少年が言う。彼は、ティーダ。他の二人と同じく、今の今まで水中で作業をしていたはずだが、金髪の少女 - リュックと同様に疲れは全くなく、その顔はむしろさっきからうきうきと輝いていた。 「ねえ?今まで、水中で一体何をしていたの?」 優しい雰囲気を持つ、オッドアイの娘が彼らに話しかけた。 「あっ・・・ユウナんには!これっ!!」 リュックが、娘の手に何かを握らせる。小さな、ひんやりとした手触り。小さいながらも存在感のあるそれは、手の中でゆっくりと暖かになっていく。 「なあに?これ・・・?」 ユウナと呼ばれた娘は、微笑みながらゆっくりと手を開いた - と同時に、その顔がぱあっと明るく輝いた。 「まあ、輝石ね・・・!これ!!」 ユウナは手の中で軽やかに回る、二つの透き通った小さな石を見て目を細める。その双眸の色と同じく、石の一つは深海のブルー、もう一つは萌え出る新緑のグリーンであった。それらの石は、ころころときらきらと、華やかに光と共に踊っている。 「あら、輝石・・・。珍しいわね。ユウナが持っているのは・・・碧海石と息吹石ね。それぞれ慈愛・誠実と幸福・愛っていう意味をもってるわ。ユウナにぴったりじゃない。」 長い黒髪を複雑に結え、唇に紫の紅を乗せた女性が説明を加えた。 輝石が一体どいういうものなのかは、学者達の間でもよくわかっていない。山の深い地面の下や水中の岩壁などに時おり見られる。極めて珍しいことに石としては透明度の高いものが多く、とても固いものであるので貴重品として扱われていた。その存在自体は割とよく知られてはいるが、採る場所を見つけられることは稀で、専ら、神事に使う道具に何かの象徴として使われていた。 なかなかに幻惑的な美しさを持っているので、「幻光虫が固まったものだ」「水が変質したものだ」という意見から、「激しい炎の中から生まれたものだ」という可能性の低そうな見方までいろいろとある。何にせよとても珍しく、普通の人間にはなかなかお目にかかれないものであった。 ユウナは初めて見るその輝きに軽くほほを紅潮させ、「うわぁ・・・」と驚きながら石をじっと見つめている。隠そうとしても、その嬉しそうな表情は隠しきれないようだ。 「わが霊峰ガガゼトにはこのような石が採れる場所が時々ある。これは守護石として、一族の間には広く使われている。」 ・・・と、獣の外見を持つキマリが今言ったようなことを、リュックがふもとの人間から聞いていたので、他の二人は「お願い」をされて一緒に水中でそれらの石を採っていたのだ。もちろんワッカとティーダの二人は最初は嫌がっていたのだが、今の女性陣のはしゃぎぶりを見て、自然と笑みがこぼれていた。 「あたしはぁー、これっ!へっへへー、記憶石。これってー、おっきーい木が樹液を出して、それが固くなったもんなんだって。生き物を閉じ込めちゃうこともあるんだってさっ。すっごい昔のものもあるんだってよー。うちのオヤジが一つ持っててさ・・・あたしも前から、マイストーンが欲しかったんだー!」 リュックが見せたのは、暖かな色味の濃い蜂蜜色をした石。形は少々いびつだが、よく見ると中に小さな花が封じ籠められていた。精巧な自然のタイムカプセルだ。 「ユウナん、それ、髪につけなよぉ。」 リュックはそう言って、ユウナの手からそっと二つの石を取って、彼女の栗色の髪につけられた髪飾りに器用に編み込んでいく。そして自分も、記憶石を大事そうに自分の羽根飾りの根元に加えた。 「なぁ・・・ルーにはこれが、似合うんじゃねぇのか?」 輝石採りに従事したワッカは、もとを取ろうとでもしているのか、ルールーに日没直後の空の色をした石を見せた。その深い紫の色は彼女の唇と同じくらいに魅惑的な色彩を放っている。 (菫紫石・・・心の平和・・・ていう意味ね。まさかとは思うけど、「もうそろそろあのことは忘れて、前に進み出したらどうか」・・・なんて意味じゃあないでしょうね?まあ・・・んなわけないわよね。よりによって、ワッカが石の意味なんて知ってるわけないしね・・・。) ルールーは一瞬でそう考えた後に、無表情のままそれを受け取った。とは言え何だかんだ言って落とさないように、慎重に胸元にそれを入れている様子だ。もしかしたら、後でぬいぐるみにでも持たせるつもりなのかもしれない。 「おい、お前ら。もうそろそろ先へ進むぞ。」 いきなり低く、よく通る声が凛と響いた。この一行のリーダー格であるアーロンの声だ。アーロンはゆっくりと近づきながら言う。 「先は長いんだ。こんな所で時間を食うわけにもいかんだろう。だから・・・残りの石は売って旅費の足しにするぞ。」 と言う。誰からも文句は出なかった。女性陣はすでにそれぞれお気に入りとなった石をもらっていたし、残りは「でっかいものが好き」な男の子たちだからだ。異論があろうはずもない。その様子を見てアーロンは「やれやれ・・・」と疲れたように言い、残りの石を全て皮袋に詰めた。 しかし、一人だけ・・・ティーダ少年だけは少しだけ納得がいっていなかった。実は内心、「俺も一つ欲しいっス・・・」などと思っていたからだ。リュックから「お守りにもなる」と聞いていたこともあるのだが、本当は、死んだ母がよく身に着けていた石があったような気がしたからだ。ワッカかリュックが偶然採ったものだろう。それを皆に気付かれずにくすねる機会をうかがっていたのだが、その間もなく、よりによってアーロンに回収されてしまった。しかし、男の子としては、堂々と「それ欲しい」とも言えずにいた。 (ま・・・いつものことだけど、アーロンも気を遣ったんだろうしな。仕方ないっス。あきらめることにするっス。) アーロンは、皆が本当に楽しそうにしている時には下手に声をかけてくることはなかった。あまりにさり気ないので気づきにくいが、今だってすぐ近くにいたのに、出てくるタイミングを計っていたものかもしれない。「せめて笑いながら旅をしたい」と言った少女に対し、不器用なアーロンなりに気を遣っているのだろう。 その後、一行は一度ナギ平原まで戻って新たな武器や道具の調達をすることになった。先ほどの輝石の数々はその足しになるくらいには金に替えることができた。ついでにこの場所で、しばしの休憩を取ることにしたので、各々好きなことをしていた。誰かと話したり、投球の練習をしたり、武器を磨いたり・・・。ところで、ティーダはと言うと・・・小高い丘から一人で、一面に広がる草原を見渡していた。 「うーっ!気持ちいーっス!!」 瑞々しい草の匂いがする微風にやわらかな金髪をなびかせながら、彼は地面に大の字に寝っ転がった。そよぐ風、暖かな陽の光 - 気持ちのよい午後。そして当然のように・・・いつの間にか、彼は眠っていた。 そしてそのまま - しばらく、経ったのかもしれない - その彼に、そっと近寄る足音が聞こえたような、気がした。独特の、すり足をするようでいて軽い足さばき。その足音は、ティーダの傍でしばし、止まった。 「う・・・ん・・・?誰・・・っスかぁ〜?」 ティーダは寝ぼけて、うわ言を口にする。どこか聞き慣れているようなその足音は、やがてすぐにそこから離れていった。 それから - どのくらい経ったのか - 。ティーダが気がつくと、風はすっかり涼しくなり、陽は傾きかけていた。 「ん・・・うう・・・って、わっ!ヤバイっス〜っ。皆、待ってるっスよ〜。」 ティーダは急に目が覚めて、身体をがばっと起こした。そしてふと同時に、なぜかその足もとに置いてあった、彼専用の見たことのない防具が目に入った。ティーダは不思議に思いながら、その防具を拾った。そしてそれを仔細に観察する。すると、ふっ・・・と、その顔には微笑みが浮かんできた。 「へへっ・・・まったく・・・オッサンぽくない細やかな心づかいっスね・・・。」 と、彼はそうつぶやいた。なんと、防具の裏には、しっかりとはめ込まれた一つの輝きがあった。母の好きだった - どこまでも透明で輝かしい石。それは暮れかかる夕陽の光を吸収し、みごとな光輝を放っていた。まるで、小さな太陽を手中に収めたようだった。 「太陽石は、オレの石だって・・・母さん言ってたっす・・・。」 アーロンと一緒に最後に母を見た時、ペンダントにはまっていた・・・あの石。その透明な輝きときらめきは、今でも彼に鮮やかに亡き母を思い出させた。母さんは、もしかしたら俺の名前をここからつけたのかも・・・しれないっスね。もしかしたら、俺、少しは大事にされていたのかも・・・なんて、考えてみることすら・・・素直にできる。この石は、そんな魔力を持っているようだった。 「ありがとっス・・・オッサン。」 この石のそんな意味を知っているのは、自分以外にはただ一人しかいない。いるわけない。ティーダは新しい防具を腕にはめて、しばらくぶんぶんと振り回していたが、やっとのことではっとしたように、「ヤバイっス〜!」と叫びながら、急いで仲間の元へ駆け出していった。 そして翌日 - 、目覚めたアーロンはなぜか「あの、バカ・・・。」という言葉と共にため息をついていた。アーロンがいつも持っている酒びんには、わざと目立つようにして、深紅の色をした小さな石が付けられていた。 「フン - 俺にはこんなものは、似合わんな - 。」 それは、緋炎石と呼ばれる石であった。鳩の鮮血の色、灼熱の炎の色をしている。石の持っている意味は、熱情・仁愛・威厳。アーロンは、一目見ただけではわからないようにその石を隠してから、緋の衣を纏い、皆の元へ向かった。 当然、「こんなアホなことをするのは、一人しかおらんな・・・。」などと、考えながら。 (終わり) |