絶体絶命日記   6.1−30.

白いスペクトルの魔法使いの年水晶の月9日.

6月8日.

 

二つ持っていた教室の一つ,8月で閉校.

厳しくなってきた.

残り一教室だと給料12,3万だろう.

50になってその給料.

情けない話だ.

これだけの授業やっていて,生徒が増えていかない.

広告も何もないのだから,評判でしかない.

兄弟は殆ど全員入っているが,それ以外にまで及ばない.

 

すぐそばには市進と京葉.

子供たちはうじゃうじゃいる.

一斉の進学教室はいやだということで始めたが,あれだけ子供がいるのを見ると,羨ましくなる.

結局,数字として目に見える成績を上げる,ブランドのある塾が生き残るのだろう.

 

情けない話だ.

せめて今来ている子たちには最高の時間を教室で過ごさせる.来て良かったと満足させて帰す.5年後,10年後,に生きてくる授業をする.

白いスペクトルの魔法使いの年水晶の月12日.

6月11日.

 

2年先が見えない.

50過ぎて失業だ.

今さら職もないだろう.

塾教師,家庭教師,日本語教師.

日本語教師を狙いたいが,だいたい50過ぎて職はあるのか.

 

ないだろうな.

だが若い連中に日本語が教えられるのか.とも思う.

日本語ばかりではない.

日本の文化や歴史,それがわかっていないと日本語は教えられない.

さらに日本語を教えるのに必要なのは,調整能力、学習者の触媒となる力,代弁者となる力だと思う.

今の若い連中にそれはあるか.

長く生きていないと付かないだろうそんな力は.

年寄りの力も必要なはずだ.

 

実際2,3年後には職探しになるのだろう.

いい人生にはならないのか,この俺の人生は.

 

白いスペクトルの魔法使いの年水晶の月17日.

6月16日.

 

8月から閉じた教室の生徒へは,家庭教師で自宅まで出向く.

周れるのか.

兄弟は同じ家なのだから問題はないが,兄弟は一組だけ.

後はばらばらだ.

 

1人は電車で一駅,駅から徒歩20分.

生徒は教室へは車で来ているが,ぼくには車はない.

どうする?

しかも4月入会の基礎力圧倒的不足の中3,受験生だ.

受けた以上,受験まで引き受けるしかない.

頭の痛いことばかりだ.

 

 

それにとにかく眠い.

1時から3時までは眠い眠い.起きていると,集中力も記憶力もこの時間帯にはほとんどない.

夜も2時までおきていることが出来ない.

右半分の,後頭部,目,がじわ〜と痛む.

これは一体なんなのか.

 

早く寝るべきなのだろう.

1時前に必ず寝,8時に起きる.

一時間繰り上げる.

何でも11時から2時までの間に成長ホルモンが一番活発に出,それは大人であれば体を休めるために必須のもので,また破損した遺伝子の修復もするという.

この時間には寝ていなければならないのだ.

そのためには晩飯を早く食べなければならない.

寝る前2時間に終えてなければならない.

生活のリズムを変えなければ.

じっとしてると,不安でおかしくなる.

 

白いスペクトルの魔法使いの年水晶の月21日.

6月20日.

永福町のアルクでの日本語教育能力検定合格セミナー出席.

行ってみると,2割強が学生,1割が定年後のボランティア,残り7割近くが会社員.

転職しての日本語教師希望なのだ.

どういうことだ.

勤めていながら,次の仕事として日本語教師を考えているのか.

リストラ候補なのか.

 

日本語教師関連の雑誌では日本語教師を目指すのは,若い颯爽とした女のばかりだ.

そうやって何とか日本語教師のイメージを上げ,需要を引き上げようという考えはわかるのだが,実際は違う.

中年の男もたくさんいた.女もいた.

そしてそれはそれでいいのだろう.

おそらく日本語を外国人に教えるということに,ロマンと感じている層がいるのだ.

あるいはそこに自分探し,自己実現を求めてもいるのだろう.

 

若い連中が少なかったことにちょっと驚いた.

 

ところでそこで関連図書の販売があった.

10%ディスカウントということだったので,買った.もともと高い本なのだが,15000円買った.給料日まで,残り6000円だ.

聞き耳を立てていたが,10000円を越える人はいなかった.

結構,俺,気合入っていたんだわ.

 

日本語授業の実際のビデオを買った.実際の授業で使う文型集を買った.

どうも日本語教育能力検定試験は,抽象的過ぎる.

もっと現場での実際の動きを問う問題があっていい.

そう思い,具体的な授業のイメージが浮かぶ本を買った.

 

しかしそれにしても,日本語教師の需要はかなり低いようだ.職はない.

この先俺はどうなるのだろう.

たとえ検定で合格しても職がなければしょうがない.

 

 

だがしかし,日本語を勉強することは楽しい.目からうろこ状態が続いている.

なるほどと納得できる.無意識が意識化ができる喜びだ.

これは楽しい.

いいだろう.

楽しいのだから.

これはこれで,いい.

だが,一体どうなるのだ俺の人生は.

ダメならいっそかんたんにおさらばだな.