白装束の男たち.      2003.5.5.

5.6

男たち、と書いたが、女の人もいるのかもしれない.

だがおそらくは男たちなのだろう.

そんな気がする.

 

千乃裕子.

霊界との通信ができるミカエル大王、地球の女王、5月15日(若干伸びるらしいが)第10惑星が地球に接近し、大津波が地球を遅い、地球が滅亡するらしい.

馬鹿馬鹿しいかぎりだ.だがそう彼女が思い、それを教義とし、それを信じる人々がいたとしてもかまわない.(それがポアとか、サリンばら撒きに繋がらない限りだが.どうもそこまでは繋がってはいないような気がする.)

 

死に行く女教祖の最後を看取るために流浪する男たち.

 

決してロマンチックに見ようとするのではないが、ここ10年近く彼らはさ迷っている.

スカラ―波から教祖を守るため.

50人ほどの男たちが白く塗った車に乗り移動を繰り返す.

 

おそらくは全員40を越えている男たちではないか.

千乃教祖の配布されている写真を見る限り、静かな楚々とした聡明な美人だ.

そうした教祖の常識を超えた言葉に衝撃を覚え、同時にそのありえない言葉を信じようとした男たち.

オウムのように日本を世界を現世を変えようという集団ではないような気がする.

終わりの集団なのだろう.

今時共産ゲリラではないだろう.

 

千乃裕子に魅せられた男たちのなれの果てのような気がする.

 

だから逆に危険だ、生ぬるいとして彼らを追い込んでいくマスコミ住民の反応を奇異と感じる.

彼らは異形ではある.

だが彼らのこの10年近くを見れば、決してオウムのように積極的に世間を日本を敵と見、変革、革命を夢見、実行する集団ではないように思える.

 

白装束で車を真っ白にし、訳のわからんマークを自動車に張り、周囲の木を真っ白にしてもいいではないか.

公道を占拠したとしても、通れるだけの幅を開けているのだからいいではないか.

 

彼らは死に行く集団だ.

千乃裕子に殉ずる集団だ.

彼らにとって、これほどまでにマスコミに取り上げられた事は最後の死に場所を得られた事で満足のいくことであるはずだ.

千乃教祖が死んだことで弾ける信者がいたとしてもそれはそれで死に場所を得られた喜びの表現であるにしかすぎない.

 

この集団は悲しい.

終わっていく男たち.

自分たちの希望や夢が死んでいくことを見守る事を選んだ男たち.

恐らくは抜ける時がいくらでもあっただろう.

その度に千乃教祖の純粋な真っ直ぐな思いを思い出し、抜ける事ができなかったのだろう.

そして、今、彼らも老い、教祖も老い、世間からも弾き出され、行き場はなくなった.

だからこそ、彼らもようやく、終わりを迎える事ができた.

彼らのうち何人かは、殉じてほしい.

それがこれまで教祖に付き従った者としての、最後の証になるはずだ.

この集団は悲しい.

 

と思ったが、今朝千乃教祖のインタビューを聞いた.

末期ガンであと4、5日の命と本人が言うわりにはエネルギッシュに話まくる.どうも楚々とした知的な感じの女性とはほど遠い.

これは見誤ったようだ.

時代錯誤の我の張った、誇大妄想と考えたほうがいい.

残念だ.

                             2003.5.6