パサージュ−9

 

 地面がゆれている。まだゆれている。

もっと深く穴ほればよかった。でもすぐに楽になる。思いっきりだきしめてあげたし、ぼくのぬくもりを感じているはずだ。大好きだったノンタもとなりにいるし、天国でいっしょになれる。ずっといいさ。

学校のウサギ小屋で、毎日ぼうでつつかれたり、つばはきかけられたり、石投げられたり、水かけられたりしなくてすむのだから。ノン子、ここでぼくが毎日話し相手になって、水も、ニンジンも、おかしだってあげる。

 

 まだゆれている。

土の上に手を置いたよ。

ここで静かにくらすんだ。明日ヒマワリの種をまいてあげる。夏になるとぐんぐん伸びて、ノンタとノン子の黄色い大きな顔のヒマワリが顔を見合わせて、にっこりわらうんだ。

みんな生まれ変わる。

ノンタもノン子もピースケもハムタンもみけにゃんも。

夏になると雑草の中に黄色い大きなヒマワリが5本空高く伸びていく。

風にゆらゆらゆれる。

ぼくより大きくなってぼくを見下ろして、にっこりわらう。

 

 まだゆれている。

空が青い。カマキリが飛んだ。

毎日来てお水上げる。

この前デパートに行ったら、ヒマワリの種売ってた。とても栄ようがあるんだって。

君達のヒマワリが咲いたら、君たちの種をぼくに食べさせて。ぼくの体に君たちが入る。ぼくの血に君たちの血が入る。

 

とまった。

 

そうだ。ゴロピンも助けてあげよう。

ゴロピンはおじいさん犬で、逃げることができない。大きな穴がいるけど、でも助けてあげなくちゃ。みんなといっしょにこの夏咲かしてあげなくちゃ。