パサージュ−33 干乾びた鳥の死骸。 木の枝にとまっている。 茶色の羽が数本、白骨にへばり付いている。 大きな虫が小さな虫を食った。 大きな虫をもっと大きな虫が食い、その虫を空から鳥が食った。 鳥はまた大空へ舞っていった。 小さな赤く透明な虫。 光に小さな炎となり,青空に赤い水晶となり、きらきらと飛んでいく。 風に揺れる。 頼り無げに揺れる。ふっと風に流される。また戻る。健気に戻る。 ぼくはそれを食おうとすっと高度を落とす。後ろにつく。首を伸ばす。 凪いだ風の中、のんきに揺れる赤い点。 前方の黄色の小さな花の群れの蜜の匂いに、小さな虫は羽を振る。 喜びに体が震えている。一直線に進んでいく。 ぼくは追うのをやめ、木の枝を目指す。 木の枝をつかみ黄色い花の中の小さな赤い虫に目を凝らす。 いつまでもじっと目を凝らす。いつまでもだ。
2001.6.22 |