パサージュ-86

 

 ああ、そうだった。

17の時、50過ぎても今と同じ純粋と誠実を第一にするのだと誓ったのだ。だから今は黙っていようと。思いが本物と証明されるまでは。

 

 防戦一方だった。

敵が誰だかは分からなかったが。

 

手に入れたものは何もない。

 

 

 

 

小さな穴の中で身をかがめている。

 

空を鳥は飛んでいるか。

風はそよいでいるか。

すぐ横をウサギは走り、蝶は飛び、草は伸び花は咲いているか。

 

 

しゃがみ、屈めた体は硬く、息はつまり、閉じた目は開けられない。

 

時々きっとウサギなのだろう。背中を小さな重みが2度3度駆けて去っていく。

時々きっと風なのだろう、首筋が一瞬さっと撫でられる。

 

蝶は飛んでいるのか。

草は伸び、花は咲いているのか。

 

 

 

やがて屈葬の白骨死体に蝶がそっと止まり首をかしげるのだ。

首をかしげるのだ。

 

                                   2010.2.22