日本の取るべき道−7

 

テロは悪い。

当り前だ。

だがなぜテロが起きたのか。

 

それを考えよう。

起きた結果(けっか)には必ず原因(げんいん)がある。

その原因がなんだったのかについて考えよう。

 

オサマ・ビンラディン氏が何を考えているのか。

銃を振り上げるタリバンの兵士たちは,オマル師は,ブッシュ大統領の人形を焼くパキスタンの青年は,何を考えているのか。

 

 

アフガニスタンの難民(なんみん)たち。

 

暗いテントでうずくまり動かない少年は何を感じている?

 

 

母親に抱かれるうつろな目の赤ん坊に,世界はどう見えている?

 

空っぽの鍋(なべ)を見つめる男の子の胸には何が渦巻(うずま)いている?

 

殺された父親の遺体(いたい)を見つめる少女は何を思っている?

 

  

なぜこのような事が起こるのかを考えてみなくてはならない。

  

だからといってテロが正しい事にはならない。

 

「やられたからやり返す」という事では同じだ。

 

そこを止めなければならない。

 

テロという気の狂ったやり方でしか,自分たちの苦しみを世界に言い表せなかった人々の事情を,想像しなくてはならない。

 

 

 

確かに愚(おろ)かな人類,悲しい人類は行く所まで行かなくてはわからない,という所がある。

 

痛い目を見なければ分からないという所がある。

 

だが今回のテロ,そして報復戦争(ほうふくせんそう),さらに報復テロ。

それが行くところまで行ったということだ。

 

痛い目を見たという事だ。

 

ここで「話し合い」という,もっとも面倒くさく,時間のかかる,なかなか実の結ばない方法をもう一度選ばなくてはならない。

 

 

人間は愚かで弱い。

それをしっかりとふまえた上で,もう一度理想と夢を語ろう。

 

話し合いが無理だから「戦争」で解決するのではなく,その時にこそもう一度話し合いをする。

 

 

もめ事を戦争で解決しない。

日本は自衛隊は出さないのだ。

 

アメリカの後方支援(こうほうしえん)もしない。

それは戦争と同じことだ。

 

日本は戦争が起こらない努力と,起きてしまった後の復興(ふっこう)に力を尽(つ)くす。

戦争に参加はしない。

戦争はしない。

 

そう小泉さんが国連という場で演説をする。

提案をする。

 

湾岸戦争(わんがんせんそう)で評価(ひょうか)されなかったからと,今度は乗り遅れないよう,バタバタするのではなく,日本独自(どくじ)の立場を明らかにする。

 

 

それは無理なのだろうか。

まとめよう。

そしてみんなも考えてほしい。

 

◆日本は自衛隊を出さない。

 

自衛隊は本土防衛(ほんどぼうえい   日本の国を守ること)に徹(てっ)する。

 

自衛隊は日本の領土(りょうど)を明らかに攻撃するものに対しては,徹底抗戦(てっていこうせん  さいごまでたたかうこと)する。

 

だがそれは専守防衛(せんしゅぼうえい  せめて出ていくのではなく,まもるだけ)であり,自国(じこく 自分の国)を守るための戦いに限る。

 

日本の領土(りょうど)の外には出ない。

 

 

非武装中立(ひぶそうちゅうりつ  軍隊を持たず,どの国の味方,敵にもならないこと)が理想だ。

 

しかし人間とは愚(おろ)かで,まちがいを犯(おか)すという考えから,軍備(ぐんび)は悲しい事だが必要だ。

 

 

そして日本を攻撃をすれば逆にその倍の反撃を受けるから,攻めるのは危険だ。

そう世界に思わせる。

 

それは悲しい事だが,必要な事だ。

だがその武力を,政治のもめごとの解決のためには絶対に使わない。

 

 

 

絶対に他国に攻め込まない自衛隊。

 

そして次に先生が考える事。

 

自衛隊(指揮権も)を国連軍へのあずける。

 

同様に,ほかの国の軍隊も国連軍とする(国連の指揮下 しきか  に置く)

 

世界中から軍隊を持つ国をなくす。

 

最後に国連から,国連軍をなくす。

 

世界から軍隊を廃止(はいし  なくす)する。

 

それが理想だ。

 

 

 

話を戻(もど)そう。

 

今回のアメリカ同時多発テロに際(さい)し,アメリカが攻められたからアメリカといっしょに自衛隊も戦う事という事は,しない。

 

集団的自衛権(しゅうだんてきじえいけん)は認(みと)めない。

 

後方支援(こうほうしえん)という形でアメリカが戦争をしているときに,武器,弾薬(だんやく)の輸送(ゆそう)もしない。

 

相手から見れば,日本もアメリカと同じ敵国となる。

 

あるいは戦争で負傷(ふしょう)したアメリカ兵,イギリス兵,あるいはフランス兵,ドイツ兵にしても,助けるということはしない。

 

それも武力の支援(しえん)と同じだからだ。

 

だが自衛隊が外国に出ていて,目の前で負傷したなら人として助けざるを得ない。

 

であれば最初から戦場には出て行かない。

 

政治のもめごとを軍事力で解決はしないと憲法で決めた以上,外には出ていかないからだ。

 

攻められた時には100%国土(こくど)を守りきる。

一人といえども日本人の戦死者は出さない。

 

それが日本の自衛隊の務(つと)めだ。

それが自衛隊員の誇(ほこ)りだ。

 

自衛隊の日の丸は外国では見せない。

 

それが必要だと思う。

 

では日本にできる事とは?

ODAを続ける。

 

ODAとは「政府開発援助(せいふかいはつえんじょ)」のことで,経済的(けいざいてき)に困(こま)っている国に,国がお金を出して助ける事。

 

 

今回のテロは「金持ちの国」と「貧乏な国」との差がありすぎることが原因の一つだった。

 

「金持ちの国」とは,アメリカやヨーロッパ,日本,のこと。

 

「貧乏な国」とは中東の国々,アフガニスタンやイラク,パキスタン,パレスチナの人々など。

 

 

もともと中東の国々には石油が豊かにあった。

 

その石油をもとにヨーロッパ,アメリカ,日本は工業を発展(はってん)」させ,生活を便利(べんり)にし,快適(かいてき)な暮らしを手にすることができた。

 

 

自動車を走らせ,冬は暖かく,夏は涼しく,食べるものにも困(こま)らない。

 

コンビニは真夜中でも煌々(こうこう)と明るく輝き,そこでは何でも買える。

 

テレビでは,一日中歌やスポーツやバラエティを楽しむことができる。

 

子供たちは自分の生活を心配することなく,学校で勉強ができる。

 

病気になっても病院で治療(ちりょう)が受けられる。

 

 

 

だがそうした生活は中東(ちゅうとう)の石油の上に成り立っている。

 

 しかし石油を持つ国は,持つ事で豊かにはならなかった。

 

 自分たちの庭にドカドカ入られ,大事なものを持っていかれ,庭は荒らされた。

荒らした人間は気にもかけず,持って行った大事なものでいい思いをしている。

 

中東の人々の感じとはそんなものなのだろう。

 

さらに国の中では,「金持ちの国」と取引をする,国の「えらい人」は「金持ち」になった。

 

自家用(じかよう)のジェット機,庭には豪華(ごうか)なプール。

 

しかしそれは国のほんの一部の人たちで,ほとんどの人は,小さな石造りの家と,その日暮らしの貧しい生活。

 

不公平だ。

おかしい。

なぜ自分たちだけが貧乏なのだ?

これも神の思し召し(おぼしめし)なのか?

 

ちがう。

石油を持っていく国が悪い。

石油を持っていく「金持ちの国」と手を結ぶ国の「偉い人(えらいひと」)たち」が悪い。

 

 

そうアラブの国の普通の人たちは思っただろう。

当り前だ。

だれでも思う。

 

だれが悪い?

「金持ちの国」のリーダー「アメリカ」だ。

 

「アメリカ」がすべて悪い。

というわけではもちろん,ない。

 

だが長い間にそんな感情(かんじょう)がアラブの人々,イスラムの人々に生まれていたのも事実だ。

 

  

アラブの民,イスラム教徒のパレスチナ人を撃つイスラエル。

後ろで支えるアメリカ。

 

10年前の湾岸戦争(わんがん)でイラクを攻めたアメリカ。

 

20年前のイラン革命(かくめい)は「金持ちの国」アメリカと手を結んだ国の「えらい人」をたおした革命だった。

 

 

豊かな国。

 

貧しい国。

 

世界がその二つに分かれていく。

 

資本主義(しほんしゅぎ)という仕組みは,その二つをどうしても作っていく。

 

資本主義というルールそのものを変えることが必要だ。

 

だがそれはとてつもなく大変な事だし,先生にはわからない。

 

 今世界ができる事は,豊かな国が貧しい国を援助することだろう。

 

ODA。

政府開発援助(せいふかいはつえんじょ)。

 

日本はこれまでに多くの国へ多くの援助をしてきた。

 

中東の国々へもだ。

日本は過去8年間ODA(せいふかいはつえんじょ)の支出額(ししゅつがく)では世界第1位を続けている。

 

もちろんこの不況(ふきょう)だ。

この夏小泉さんは日本も不況でしんどい,額(がく)を減らさざるを得ないが,わかってくれと,各国を回っていた。

 

 

しかし多くのお金を世界中の貧しい国に出している。

 

港を作る。飛行場を作る。道路を発電所(はつでんしょ)を作る。

病院を,学校を建てる。食糧(しょくりょう)を送る。

 

工業,農業,などの技術指導(ぎじゅつしどう)・技術協力(ぎじゅつきょうりょく)をする。

 

 

これまで続けてことをこれからも続けていく。

 

 このことは日本のためにもなる。

 

援助している相手国は中東(ちゅうとう)やアジアなど,石油,天然(てんねん)ガスなどの天然資源(てんねんしげん)が豊(ゆた)かにある国々だ。

 

 

そうした国は援助の見返り(みかえり)に資源の輸入(ゆにゅう)を期待(きたい)することができる。

 

お互い様(おたがいさま)なのだ。

 

 

どうしても出てしまう「金持ち」と「貧乏人」との差。

 

資本主義(しほんしゅぎ)の世の中では「金持ち」はもっと「金持ち」になり,「貧乏人」はもっと「貧乏人」になる。

 

そんな仕組みなのだ。

 

であれば持っている者は持っていない者を助ける。

 

その事が必要だ。

 

 戦争が起こる原因となる,貧富(ひんぷ)の差を無くす。

 

日本はODAという形で力を尽(つ)くす。

 

 

戦争が起きないための努力。

それば日本にできることの一つだ。

 

ただその時,日本はどこの国に,どんな援助をどれくらいしたのかをはっきりしなければならない。

 

日本のODAには色々と問題がある。

必要な国に必要なお金や物を送らなければならない。

 

送るだけではなく,フォローをきちんとしなければならない。

 

 

国民の一人一人がODAの動きがすべてわかっていなければならない。

 

国民の税金(ぜいきん)を使っているのだ。

 

自分たちのお金が,相手の国に役立っている。

 

その実感(じっかん)が日本人としての誇(ほこ)りも生む。