青い金魚,そしてくり抜かれた体. −9

 

冬、受験組の顔つきが変わってきた。

時々授業中、ほおを引きつらせているやつがいる。内緒でやってる塾の宿題の算数の特殊算が解けないのだ。でも何か違う気がする。

 

中高一貫のいい中学に入り、一生懸命勉強していい大学に入る。でもそうやっていい会社に入って、やりたい仕事もわからずオウムとかに引っ張られてサリンまいたり、逆にきちっと仕事してリストラされたり、それになんか情報革命だかなんだかで世の中変わっていくのに変わんない勉強を毎日学校でしてるのもおかしい。

といってぼくには何もない。母さんや先生や友達に望まれていることをやっていく。それだけだ。おかしな世の中なら自分もおかしくやっていくしかない。その中でいい位置をキープしていくしかないのだ。教室の中で、家の中で、やがては会社や家庭の中でうまくやっていく。なのに最近はそれが重ったい。

 

幸一のせいだ。あいつはいつも自然に振る舞い、何の努力もしないでみんなから認められている。これからもそんな風に生きていくのなら、許せない。ぼくはそう思いだしていた。