夢日記 2001.11〜31。 11月2日.金曜日. 手術室. 僕が頭を右にして横たわっている. 熱い. 「熱は?」 「45℃です.」 声が聞こえる. 確かに熱い.熱すぎる. 「すぐおさまる.」 その声に僕はホッとする.正面に立つ医者が右手を動かした. その右手に何かが渡った. こちらからは見えないが,ぼくの右手に静脈注射をするのだ. はりの痛み. 液が入っていくのがわかる. それとともに熱が下がっていく.助かった. 助かったのだ. 11月3日.土曜日. 鏡に映る自分.はっきりと右のこめかみに味付け海苔大の紫の痣ができているのが見える.. 両腕を上げる.地面と平行に真直ぐ上げる. 二の腕から付け根にかけて紫に乾いていてぱさぱさしている.紫の痣.死病だ,と思う. ぼくは大きなヘルメットをかぶりソファに座っている. 動かない.動けない.実際ぼくは死んでいく. 大きなヘルメットの中でしかぼくは生きていけない. 何人もの人がくる.話す.ぼくは動けない.座ったままだ.大きなヘルメットの中でじっとしている.死んでいくだけだ. ヘルメットの中を何かが動く.動いていく.ゆっくりと回っている.何か効果があるのか.これが治療なのか. じっとこらえなければならない。 ここでじっとする事だ. 首を真直ぐに伸ばさなければならない。 じっとしていなくてはならない。 ぼくはソファから立ち上がる. ヘルメットを取る. 両腕を伸ばす。 二の腕から付け根にかけての紫色のぱさぱさが消えている. ぼくはしっかりと伸ばす。何もない.しっかりと伸ばす。 治った. 治ったのだ! 両腕をまっすくに伸ばす。 ぼくはしっかり立っている. 11月4日.日曜日. 6畳2間.そこに5人の子供たちがいる.男の子3人女の子2人だ. 雑然とした部屋. 蚊が飛んでいる. ぼくはそこで寝る.そのつもりだ. だが部屋は落ち着いていず,蚊がうるさい. ハエもいる. どこで寝るのか考える.場所がないのだ.イライラしてくる. ぼくは早く寝たいのだが,どうやらみんなぼくを寝かさないように考えているようだ. 奥の暗い部屋でみんなが僕を見ているような気がする. なかなか寝られそうにない. 嫌な雰囲気だと思う. 胸が重い. 11月8日.木曜日. 大きな網にからめ捕られている. 宙吊りだ. 網は白い細い糸でとても丈夫で強い.幾本も体に食い込んできて痛い.ぐっと上に上がる.天井が近づく. その網を引き上げているのが父親だ. 笑いながら全身の力を込めて引き上げている. 壁には長さ30センチ,幅5センチほどの薄い赤い線が何本も書かれている.床から3mほどの高さまで広がっている.薪が何本積み上げられたような感じだ. その赤は血だと思う. その血は父親の血だとも思う. 姉も同じように吊り上げられている.(姉はいない.) 11月9日.金曜日. これからゆっくり眠れる. 敷かれた布団に飛び込んでいく.ちょうどその時その布団と逆にもう一組布団があることに気付く.そこにぼくの好きな女の人がいるのに気付く.ドキッとする.布団から体を起こそうとした時,ガヤガヤと大きな体をした高校生の不良の集団がくる.思わず体を戻し目をつぶる.このままでは彼女が危ないと思いながらだ. その時誰かがやってきた.彼女を守ろうとやって来たのだ. ぼくは怖くて目をつぶったままなのでわからない.何が起きているのわからない. 大きな声が聞こえ,鈍い音が聞こえ,すぐに静かになる. ぼくは目を開け体を起こす.誰もいない.一足の靴だけが落ちている.茶色のなめし皮の靴だ.ぼくはそれを拾い何度もなでる. 階段を下りる.むこうに不良たちがいる.ぼくは靴を抱きながら近づいていく.何をするということもなく,近づいていく. 靴を抱きしめ何度もなでている.何をしに行くのかわからない. ただ行かなければならない。そう思い,あせっている. 茶色の大きな靴. ずんぐりとした南京豆の形の靴. ざらざらした感触を確める. 11月10日.土曜日. 六本木でバイトがあるという.行かなくては.かなりあせっている. ぼくは急いで家を出る.だがどこで何をするのかがわからない.メモがあったはずだ.メモを見る.メモには電話番号があった.でた.だが早口でわからない.大体の場所まで行くとそこに警官がいるので聞くと,「やりたトンネルの向こうだ」 という. 日本料理店だ. そこで各部屋の修理,掃除の仕事だった.ギリギリで間にあったのだ. 朝礼が始まった. ぼくが一番年上だ,社長はえらく品が無く偉そうにしている.しかしぼくは気にしない.問題なく頭を下げている. 各部屋を回る. 部屋ではみんなが車座になって笑い声が上がっている. あぐらを書いた胡麻塩頭のオジサンがぼくに向かっていい笑顔を見せる. ぼくの仕事はウエイターだった. 黒のチョッキをつけホールに行く. そこには行列があり,男達,女達が別々に並んでいる. 長い行列の先にはドアがありそこに一人ずつ入っていく. そこでセックスをしているのだ.ベッドがあるらしい. そう思ってみるとみんなどこかぎらぎらしている.女たちもだ. ぼくは二つの行列の間で,落ち着くよう声をかけている. 何で俺が,と思いながら二つの行列に声をかけている. 一日が終わる. 社長が給料を渡してくれる. おどけた仕草で給料袋を差し出す.同じ仕草をしろと言う. ぼくは別に気にもせず同じようにジャンプして,手を出して,ちょうどさんまのシットルケの感じだ. 時給450円だ. 結構いい金になるな,とぼくは思っている. 11月12日.月曜日. 海の突堤に車を突っ込む. 車は傾くが運転手は満足そうだ.すぐに降りる.隣の倉庫に入っていく.狭い.階段にもズラリと人がならび座っている. そこで何かをしたのだ. 何かを探していたと思うが思い出せない. モノレール.近未来の都市を下にかなりのスピードで走っている.大きく右に曲がる.ぼくは満員の社内で倒れないように重心を移す.ビルのひさしに向かってカーブし,ぼくは背中がそのひさしに突っ込みがしないかと体を反らす. 夢 広々とした屋上. その片隅でぼくは組み立て式の本棚をばらしている. 長い間使ったので古ぼけている.一本一本はずしていく. ほぼ終わった.ぼくは痛くなった腰を伸ばしながら振り返る. おやじが同じような組み立て式のパイプの何かを作っている. 屋上の1つの辺を全部使っているので,かなりの広さだ. かなりしゃれている. 黒と白を基調にして,パイプオルガンのように高低をつけ,横に伸びている.その前にカウンターがあり,そこがバーである事に気がつく. そのカウンターの前に椅子が置かれるのだろう. おやじはどうだという感じでぼくを見た. 階段の上から見下ろす. そこは元は歴史と格のある老舗の料理屋だった. 今は何も無い. 巨大な空間だ. 初老の頑固そうな料理人たちがずらりと並んだ. そろって頭を下げた. 次の瞬間彼方から5,6mの柱が飛んでくる.カーブを描き飛んできて,ぴたりと中に止まった. また男たちが頭を下げた. また柱が飛んできた.前の柱につながった. また男たちが頭を下げる.柱が飛んでくる. そうやって船ができていく.舟のへさきから胴体ができていく. そこが新しい店なのだ. そのイベントなのだ. 料理人たちは頭を下げつづけている. 店はかなり立派にできていく.ぼくは感心している. 地下の商店街.そこでぼくは食事をした.うまかった思う. 通路に出て天井を見上げる.明るい天井だ. 外に出る. ぼくは走っている. ランニングとランパンで走っている. 走っているうちにパンツが裏返しなのに気がつきあわてる.急いでさっきの地下商店街への階段を降りる. そこでランパンを下ろした時男が4人現れた. ホモの連中だ. 一番凶暴な顔をしたやつが顔を寄せてくる. 頭突きをしようとするので頭を下げる.苦笑いを男がする.また頭突きをしようとする.また頭を下げ防ぐ.こいつにやられたあとむこうの3人がくるのだ. ぼくは金的蹴りで男を倒し,3人を階段から突き落とす. そしてまた地上にで走り始めた. かどうかはわからない. 思っただけかもしれない.覚えていない. 11月14日。水曜日。 込んだ電車のホーム。ぼくは窮屈な中でホームを見ている。 ホームには反対側で電車を待つ人でいっぱいだ。その中で着物の女の人が男の膝の上でリズムを取って動いているのに気付く。妙な景色だと重い体をずらし方向をやや帰る。 女の腰が上がるたびに勃起した男根が見える。 そそり立っている男根が見える。 高い家の屋根。とんがった所にロープが張られ,その下に幅30センチほどの溝があり,水が相当な勢いで流れている。 そのロープにぶら下がり,裸の子供たち(全員が男で金髪の少年)が逆さにぶら下がりレンジャー部隊のように両手両足で前進していく。下を流れる水に乗っているのか,下の水に背中が会うと流されてしまうのか良くわからない。 とにかくどこまでも続く屋根の上を逆さになった少年たちが進んでいく。 なんとも綺麗な首の長い犬だ。 まだ子犬だろう。 長い首を左右に揺らし,うっとりと目を閉じている。 そしてからだが綺麗に半分に色分けされている。 左が白。 右が緑。 緑がとても綺麗だ。薄いが鮮やかだ。 とても綺麗な緑と白だ。 下からの風にゆっくりと揺れている。 いい感じだ。 11月15日。木曜日。 小さな校庭でサッカーの試合。 ぼくはキーパーをやっている。 ごちゃごちゃとした校庭だ。 ボールをつかむ。空気が入っていない。ペコペコだ。つまみながら投げてパスしようとするが,味方が誰だかわからない。 「味方手を挙げろ」 2,3人しか手を上げない。 しかも顔には自信がない。弱々しげな横顔。 ルールをわかっていないのだ。ボールを受けたくない。 ぼくは味方をチェックした。裏で遊んでいる。昼食だ。ぼくはフライパンで焼きソバを作り皿に盛り付ける。あちこちから手がでてくる。 「ふざけるな!」 ぼくは怒り,全員を正座させる。 小さな箱に彼らは入り,横4段,縦2段重ねになる。そして全員で申し訳ありませんと頭を下げ,組み立て体操のピラミッド崩しのように崩れようとしている。そしてわ〜と騒ごうというのだ。 ぼくはそれがわかったので,姿勢を崩すなと言おうとするがその前にすいませんでした〜と言って箱ごと8人が崩れ落ちてくる。 ぼくは味方を連れて校庭の試合へ戻る。 センターリングのボールを上げる。 11月17日.金曜日. 横浜の駅前.広場にガラスで覆われた大きな掲示板が並んでいる.僕は日に反射する掲示板を端から見て回る.僕の名前を探しているのだ.ない. 高杉ジュタロウ そんな前を見つける. 境内. 端から端まで10メートルちょっとか. 六角形に仕切られたスペース.その中にまた六角形の建物がある.そこには何かが祭られている. 次第に人が集まってくる.きちっとした正装の男や女達だ. やがてその中の一人が畏まって言う. 「ヒツグノミコトサマニモウシアゲマス…」 僕たちは頭を下げ拍手を打つ.音が境内に響く. その場所でミニコンサートが始まる. ワイルドワンズがでてくる.加瀬邦彦が僕がまるで鏡でもあるかのように、顔をぐっと僕に寄せてくる. テレビで見るよりもずっと若くて迫力がある. 演奏が終わると小さな声で、飛び入り歓迎です.と言った. 安さンがそうでなくちゃと言って、ギターを抱えて出て行った. 相変わらず下手だが、一生懸命歌っている.僕は感心する. 斜め後ろから安さんをずっと見ている. 誰も聞いていない観客に少し苛立ちながら、投げやりなところも見える.集中力が欠けている感じだ. 通るだろうか. 突然アメリカ人の少女が安さんの前に出歌い始めた. 一人2曲ずつなのだ. 安さんは残念そうに戻ってくる. メジャーデビューを狙っているのだ. 悔しそうに戻ってくる. 慰めようと思ったが目が合わない. 11月18日. 妹と自転車に乗っている. その自転車は特殊なかたちをしていて、その調整に手間取る.光が反射して調整用のボードが見えにくい.顔を傾けて、何度か表示の文字を読み、セッティングを終える. 妹をうしろに乗せる.妹は立ってまま僕の後ろに乗っている. ほんの頭の上、4.50センチを巨大な黒い蝶が飛んでいる. 羽を広げれば50センチを超える蝶だ.僕は手を伸ばす. 蝶の細い張ばねのような足をつかむ.蝶は足を動かし、チクチクトした感触が続く.でもそれほどいやな感じはない. そこで僕はつかんだ蝶を引き寄せようとするが、蝶は空に戻ろうと頑張る.僕は引っ張る. 蝶の大きな腹部が引っ張る足とともに、伸びる. ぐっと伸びる. 伸びすぎてはちきれそうになり、僕は手を離す. 蝶はゆっくりと空へと戻っていく。 11月20日.火曜日. 僕のアパートに同僚の先生3人が入ってくる. もう夜も遅いのですぐ寝ることにするのが、3人にその様子はない.何か飲み物でもと思った時、ドアがノックされ、女の先生が3人入ってくる. 子供達がずらずらと列を作って入ってき、先生達は夜は何をやってもいいのかと口を尖らせる. 僕はよく事情がわからなかったが、どうやら男の先生達が女の先生を呼び、これから何かしようということらしい. 僕はそれは禁じられていることだから、女の先生が来たのは別の理由で関係ない.あなた達は帰りなさいと返す. 女の先生たちも私たちも帰るからといって出て行く. その時一人の女の先生が、男の先生にウインクして男の先生もそれにウインクで返したので、僕はかっとなって男を問い詰めた. 男は照れ隠しなのか、ニヤニヤと笑って、ちゃんと答えようとしない. へらへらと体をよじりながら、僕の目を見ようとしない. その店は中央を直径10メートルの吹き抜けになっていて、螺旋の階段の内側にテーブルが置かれ、そこで何人もの客が酒を飲んでいる. 僕の席からは3階、2階、と見下ろせる. 3階にはスーツ姿の男が二人、楽しそうに飲んでいる. 僕は「384の炭酸入りのレモン酒」というのを飲んでいる. 瓶から直接飲んでいる.もう残り少ない. この数字は覚えておかなくてはならない. 飲み干して僕は勘定を済まそうと出口に向かうが、出口がわからない. 広いフロア−だ. 伝票がない. あの酒の番号を覚えていないと勘定ができない. 僕は戻って、うろうろしている。 11月23日. 視界一杯に耳の長い男がこちらを見ている. 静かに笑っている. こんなに鮮明に人の顔を夢で見たことがないので、僕は驚いている. 男は顔が大きい。4頭身だ.髪は伸ばし放題だが、きれいに洗ってあり、左肩でカールしゆらゆら揺れている. 声が聞こえている.男の声ではない. その声の調子として、この男が怪しい者ではないことを弁明している響きがある. こいつは俺の昔からの幼なじみで、気のいい奴だ. だから心配しなくていい. そして男は静かに僕を見て笑っている. 僕はいつか見たNHKの大河ドラマ「源義経」の役者と似ていると思う.尾上なんとか、とかいう役者だ.ただそれをもっと怪しくしたような感じだ. 男の耳は決して福耳というようなふっくらとしたものではなく、普通の耳のまま耳たぶが異様に伸びているのだ. 少し気味が悪い. それが揺れている. 長さは男の顔の半分ほどもある.20cmは超えている. 肩の下、ゆれる髪の下でその耳は揺れている. その耳の後ろにもう一つ同じように耳がたれているので、それが右耳だと僕は思っている. 男が黙って笑ったまま僕を見ている. ナレーションに聞き入っているようにも見える. 賢者か. ずる賢い悪魔か. 僕は考えている.
11月27日火曜日。 今中1の女の子の卒業式。 どこかの玄関で母親と話している。あっという間でしたね、とかだいぶ大人に成りましたねとか話している。 思っていたほどの感情はわいていない。 卒業式の踊りがあるという。 僕は夕方グランドに向かう。 卒業式というアーチがグランドに架かっていて、僕は誰もいないグランドを歩いている。今はみんな体育館の中だ。 その子の虹を指差して笑っている顔を思い浮かべている。 大学の考古学の女教授のアシスタントをしている。田中真紀子みたいな教授だ。 他にも一人若い男がいて僕はライバル意識を少し持っている。 これからどこかの町に発掘に行くのだが、その準備を二人任されている。資料を紙袋にいかに効率よく入れるかだ。 僕は順番を決め丁寧に気を使い入れた。 もう一人は資料を薄い紙袋に分けて入れていて、僕はその方がいいな負けたなと思った。 だが紙袋の中身が問題なのだ。 思い出せない。 11月31日.金曜日. 目の前に4,50cmほどの太い棒状のものが見える. 微妙に左右に揺れている. すぐに僕はそれが僕の両手であることに気づいた. 右手で左腕をつかみ、左手で右をつかんで、互いに引き合っている. 右に引かれたり左に引かれたり、しかしいやな感じはない. バランスよく微妙に左右に揺れている. 両腕は体から離れていて、宙に浮いている. |