夢日記 2001.10.1—30.

 

1016日。火曜日。

北山修だ。

司会者はなつかしのあとの人と紹介する。

聴衆は自分の事誰も知らないだろうという顔で,北山修が恥ずかしげにステージに出てくる。

ウッドベースを普通のギターのように平気に横に抱え叩きつけるように弾く。軽々と持つ彼の姿にホッとする。

その音は硬くびんびんと響く。電気を通しているようだ。

「イムジン河」だ。誰が祖国を二つに分けた。

 

いい感じだ。ノッテイル。後ろには吉田拓郎が仲間と肩を組んで歌っている。北山修は少し痩せているが,いい感じが続く。聴衆も立ち上がり舞台は盛り上がっている。見ていてうれしい。

 

デパートの一角。2,3人の固まりが10近くあり,みんな何枚かのカードを見ている。カードにはストーリーが書いてある。続きのカードを集める。静かで穏やかな雰囲気。

みんな楽しそうに次の続きのストーリーを考えている。

その中に中1の女の子がお父さんと一緒に参加している。

子供のようにお父さんの横でニコニコしている。

いいナと思う。うらやましく思う。

 

その日の教室。その女の子はお化粧をしてやってくる。睫毛が濃くなっている。ちょっと似合わない。

でも可愛いことは可愛い。ホッとする。

 

 

えらく大きな金の携帯。

鳴っている。

僕のではない事は分かっている。

向かいの男が網棚からかばんをおろし携帯を出した。

僕は携帯を開け,すぐにぱちんと音を立て閉じる。

隣の男が君のじゃないなと言う。僕は誰かからかかってこないかなと思うが,かかってこないのにこんな金の携帯を持っていておかしいなとも思う。手のひらを超える正方形の携帯だ。

 

10月18日木曜日。

新宿マイアミのような喫茶店。

ぐるりと親戚一同並んで会話。誰かの入社祝い。誰かはわからない。

 

「いい会社入ったね。よかったよかった。」

とみんな喜んでいる。

 

「でも先坂電気の方がよかっただろうにね。」

「いいや。」

 

まだ髪の毛の黒い父親が言う。

 

「いや先坂電機はだめだ。あそこは業界では評判が悪い。」

と少し怒りながら言う。

 

僕は少し驚く。僕は斜め30度高度3mあたりで見下ろしている。

 

「でも遠いネ。」

 

ホワイトボードに誰かが書き出す。

4時半出勤===7時。伊香保温泉。===8時半。東京。

 

「いいね。朝から温泉いけるね。」

おばさんが言う。

「行けるわけないだろ。」

 

とにかくこれから始まるぞという賑やかな雰囲気。

 

10月20日。土曜日。

夏の日のプール。太陽がまぶしい。

いい感じ。

,6人の小学生といっしょにワイワイ階段を上っている。

小学生の弟と一緒だ。(弟などいない。)

「2人とも似てるよね。」

女の子が言う。

僕と弟は顔を見合わせてにっこりと笑う。

 

「いくつに見える?」

「30」

「35」

別の女の子が言う。

 

僕は弟とまた顔を見合す。

僕は47だから,若く見られてうれしい。

 

みんなでソフトボールをやっている。

僕はさっきからホームランを連続している。

白いボールがゆっくりとやってくる。それを確実にとらえて場外に白球が飛んでいく。

 

三度目,僕は打った瞬間ボールを追う。

金網を乗り越え,草むらに飛び込む。ボールを拾い振り向きざまみんなのいる所へ投げかえす。

 

ボールは金網の下のわずかな隙間に吸い込まれ,向こうのみんなの手の中に入っていく。

 

気になるのはフランス語の単位だ。

授業には全然出てない。

テストだけでも受ければ単位はもらえるかもしれないが,フランス人の先生に何か言われたらどうしよう。さっぱりわからない。恥をかく。だから行けない。

 

どうしよう,また留年してしまうのか。

やだ。テストの時間が迫っている。

落ちたら来年どうしよう。バイトはこのまま続けられるだろうか。学費は自分で払えばいい。また留年でいい。いい,行かない,留年でいい。

 

1022日。月曜日。

消防車のいない消防署の前。

大勢の人が集まっている。

結婚式らしい。僕は近くの建物から見下ろしている。行こう。

階段がなく狭い廊下を降りる。新郎がもうすぐくるそうだ。

6回目。何でも扮装を変え,挨拶するらしい。

来た。

今度は野球のユニホームだ。バットを上げた。拍手が起こる。一言何か言ってすぐに裏に消えた。あっ気ない。

 

部屋に戻る。昔の友人がいる。会社を辞めた男だ。にこにこと横になっている。

「クイズ出して」と言う。

 

ぼくは手元にあった法律関係の本をめくる。

 

その時新婦が入ってきた。真っ白なTシャツ。左腕の部分がくちゃくちゃとなっている。左腕がないのだ。

 

痩せた体に違和感はない。長い髪。綺麗な人だ。

 

 

 

左が木造の家,右がコンクリート建ての家。

木造の家から右に通路の階段が出ているが,届いていない。繋げ様として結局やめたのだ。

「木とコンクリだと繋げにくいのさ」

隣で誰かが言った。

 

1022日。火曜日。

視界いっぱいに女子達が飛び跳ねている。15人ほどだ。

小学生と中学生だろう。

みんな向こうを向いている。僕から見えるのは後姿だけだ。

みんなうれしそう。ぴょんぴょん跳ねている。

手を振っている。誰にだろう。

僕も少しはうれしいが,5,6m後ろでしゃがんだままだ。

太い足だな,と思っている。

 

1023日。水曜日。

ワニと後ろから羽交い絞めにする少年。

背中に乗った少年はワニの体を後ろに反らす。白いワニの腹が見える。次の瞬間,少年は手刀で腹を縦にサーと裂きおろし,白い内臓を次々と引き出す。ワニは目を丸くしてかたまっている。

 

実に手際の良い仕事だ。

僕の真正面で行われている。

 

1025日。木曜日。

巨大な腕で腰を右左に触られる。

その度に体が右左と動く。体の向きが変わる。

ゆっくりと左右にころがる。

僕は別に怖くも気持ち悪くもないが,何かが起きるので起こしてくれているのだと思い,起きる。

きっと誰かが部屋に入ってくるのだと思い,棒を持って,玄関,ベランダを見に行く。

5時半。

外は明るくなっている。

 

小さな広場での集会。パイプ椅子に2,30人の人。

一人の男が中心となり,険しい顔で周囲を見渡している。

僕は反対している。

男の話に対し,反論をしようと待ち構えている。しかし男は何も言わない。

前に座っている若いアメリカ人が立ち上がり抗議を始めた。すぐに取り押さえられ連れ出される。

僕は声を上げる。

「僕たちの世代は,と僕たちといっていいと思うが,組織を信じていない。組織と個人とは相反する。あなたはどう思うか。

それにこれからの行動の指針がはっきりしていない。説明をしてほしい。」

 

男は険しい顔のまま何も言わずうつむいている。

僕は意外と冷静なまま男を見ている。

 

1026日。金曜日。

池が干上がった。だが底や側面はまだ濡れている。細かく地層が走っている。一筋一筋が光っている。

なぜ池の水がなくなったのか。

白髪の老婆が説明している。

池の底から横穴がありその中で老婆が熱心に説明しているのだ。

一人の男が聞いている。

江戸時代の農民の男。破れた着物,禿げ上がった頭。髪がザンバラになっている。

男は老婆の説明がわからず困ったまま笑っている。申し訳無さそうにずっと笑っている。

 

1029日。月曜日。

タリバンへの義勇兵だという言う。

僕たちが借りた部屋のとなりは居酒屋になっていて,騒がしい。その隣のはやには20人近い男達が静かにしわっている。その中に昔のバイトの先輩がいた。髪を腰まで伸ばし,古い一軒家を借り女の人と暮らしていた。いっぽんどっこで独学でデザインを勉強し,仕事もきちんとした。寡黙で笑う顔が,良かった。ちょっと尊敬していた。

 

彼がいた。

僕は名前を言い,がんばってくださいと行った。

彼はその名前を否定した。当然だと思った。

強く握手した。

どこに住んでるの?と聞かれた。

ぼくは自分のすんでいる所を言おうと思ったが,思い出せない。あせったぼくは必死で思い出そうとするが,住所と昔の教室の場所がごっちゃになり照れ笑いでごまかす。

 

自分たちの部屋に戻る。

見知らぬ人がたくさんいる。だが和気藹々とした雰囲気だ。

早く溶け込もうと思う。

食事の後の片付けだ。

僕が食器を洗おうとすると誰かがそれを取り上げて洗ってくれる。嬉しい。だが顔がわからない。

 

テーブルに戻ると若い男が僕に自分の持ち物を渡そうとする。彼も義勇兵だ。

ノートがあった。

日記だという。処分してくれという。

女の住所があった。ここへ届けるのだと思った。

 

 

1030.水曜日.

どこかのホール,緑の電話で話している.周りの騒音がひどく良く聞こえない.しかし相手が上司であることはわかる.酔っているのか泣き声のようにも聞こえる.僕はいい加減うんざりし,別の上司に受話器を渡す.××のようです.

その上司は話の内容がわかっていたのかすぐに真剣な顔になった.うんざりしたことが悪かったかなと一瞬思う.

 

ドアを開け,中に入る.会社の何年かぶりの集まりだ.ぼく達のグループは全員立ったままなのですぐに見つけられた.

そろそろ始まる.だがぼく達の座る所がない.みんなプログラムは持っている.ただ席表にぼく達の名前がない.

 

突然若い女の子達がステージに現れた.チアガールの姿をしている.みんな緊張していて,笑い顔が不自然だ.「今年入社の女子社員です.」とアナウンスが入る.

 

プログラムが始まった.

ぼくたちはウロウロしている.

そしてわかった.

僕たちには席がないのだ.

 

みんな同時にわかった.

ホールに出た.

誰かが手に持ってきた書類を投げ上げた.

 

僕は信じられず,ソファに座った.

信じられなかった.

 

 

緑のA4の大きな液晶のノートパソコン.本当のノートのように薄く軽い.タッチペンで手書き入力をする.昔のデータが入っている.僕は父親にどうすれば消えない?と聞く.

4,電池を入れ替えればいい.という.僕は納得する.

 

大きなマントヒヒが目の前をゆっくり歩いている.

ゆっくりと止まり,ゆっくりと振り返り,またゆっくりと前を見,歩いて行く.

伴淳だ.伴淳三郎.

顔は違うが,伴淳だと思っている.

そのマントヒヒの形態模写をする.実にうまい.そのゆっくりさがそっくりなのだ.僕は感心する.

マントヒヒの長い毛がゆっくりと光って揺れている.

1031.水曜日.

公園で乳母車を押している.

かなり速いスピードで公園内を走り回っている.

曲乗りとかいって,くるくる回ったりもしている.

乳母車にには小さな粘土で焼いた象,とり,ふくろうが乗せられている.

となりには会社の同僚の女の子もいて,その子も乳母車をおしている.僕はそのこの肩を抱こうとして断られる.

少しがっかりする.

芝生で少し休むと坂を降りていく.

降りた所で高校の友達を見つけさよならと声をかけるが,友だちと話していて気がつかない.

僕はくねくねとしたしかし夜店のように活気のある通りを乳母車を押して帰っていく.