独り言をはじめたわけ


それは、ボイスの発言
『芸術家は、アトリエで起きた事を社会に説明する義務があるんだ』
にはじまっている。

芸術家は自分の好き勝手な事(わがまま)をしているのではない、と僕は思っている。
芸術家は、社会的な義務と責任を負った、れっきとした職業だ。

日本では芸術家が語る事を嫌う空気があるように思う。
「作品で勝負しないのは卑怯だ」といった空気だ。
だがそれはおかしな事だと思う。
芸術家が喋る事は、社会人としてあたりまえの事の様にさえ思う。
日本の芸術家の社会的な地位の低さ(特に現代芸術家の)は、
社会に説明する義務を怠っている事から起きているように感じる。

大学時代、あまり喋らされる機会も無かったから、うまく説明の出来ないところが多いと思う。
ただ、くり返せば人間は大抵うまくなる(と思う)。
アトリエで起きた事をうまく説明できるようになるためには、喋ってみるしか無い。
芸術とは試みることである、と信じている。

ぼくがこんな事をするのも、
ボイスが言うように、『あらゆる人が芸術家である』ためにである。
それは結局、いま芸術を職業としている人達のためにもなることだ。

1998年6月29日