5997.米朝首脳会談の準備としての南北首脳会談



朝鮮の南北首脳会談は平和裏に行われた。東アジアに平和をもたら
す会談になったようだ。今後の米朝会談とそれ以降を検討しよう。
               津田より

0.南北首脳会談から米朝首脳会談へ
南北首脳会談で、朝鮮戦争の休戦条約から終戦を確定した恒久的な
平和条約、北朝鮮が得る可能性のある安全保障(この意味するとこ
ろは問題)、北朝鮮の持つ核廃棄を意味する「非核化」などの話し
合いができたようである。

北朝鮮の金正恩委員長はどのレベルの「非核化」で経済制裁解除に
できるかの情報を文大統領から得ることが、この南北首脳会談の目
的であり、30分の首脳二人だけの会話のほとんどが、その「非核
化」で、どのレベルまで米トランプ大統領は望んでいるかという会
話であったはず。日本の安倍首相が要求する中距離ミサイルまでの
破棄が条件も金正恩委員長には伝えられたし、拉致問題解決が日本
からの戦時賠償の条件も言ったはずである。

それほど、経済制裁が効いている。特に現時点、中国との貿易がで
きないことで大きな経済的な苦難になっている。金正恩の統治資金
である党39号室の資金確保も十分できないでいる。銅像づくりに
よりアフリカで資金を稼いでいた工芸社も活動できない事態になっ
ている。海外の労働力輸出もできない事態で合法的な資金確保がで
きず、仮想通貨を盗む非合法的な資金確保しかできていない。

もう1つ、米朝会談の準備のための南北首脳会談という一面があっ
た。トランプ大統領の行動が予測できないことで、北朝鮮も困惑し
ているのようだ。

先の中朝首脳会談で、北朝鮮の金正恩委員長は、中国が提唱する非
核化や改革開放を実施することを約束している。中国は6ケ国協議
で「非核化」を話すというので、条件的には北朝鮮は合意できた。

また、中国も休戦条約締結国であり、平和条約には中国が必要にな
る。金正恩委員長は、中国と米国の中間でどう国体を維持するか、
自分の一族をどう守るのかが問われている。それと北朝鮮の経済的
な発展には、経済制裁解除と西側諸国の企業の力が必要であること
も実感しているはず。

すでに、北朝鮮国内では、資本主義的な制度を入れて経済活性化を
金正恩委員長は行っているので、改革開放を行っている状態だ。
しかし、中国企業は、鉱物資源や観光開発などは行うが、工場の進
出には消極的であり、韓国企業などの西側企業の工場進出が必要で
あることを金委員長は知っている。

ICBM級の核ミサイルを開発して、米国と対等になったことで、次に
平和攻勢をして北朝鮮の経済発展を推進する方向にシフトしたよう
である。

1.非核化とは何か?
しかし、南北首脳会談は、北朝鮮『労働新聞』に載っているが、ま
だ、米朝首脳会談については報じていない。この意味は、韓国とは
ある程度の合意事項が確定しているが、まだ、米国とは十分な合意
が出来ていないことを示している。ポンペオCIA長官との会談でも、
十分には合意ができていないようだ。

朝鮮半島の「非核化」とは何かということである。北朝鮮は現時点
、核実験場破棄とICBMミサイル実験はしないと2つを明言している
が、これは、トランプ大統領との交渉でのカードを持っていたいた
めに、ここまでの条件しか出さないでいる。

北朝鮮は、制約解除と引き換えに核施設破棄は行うと思う。核施設
破棄が非核化の意味として、非核化を小さくしたいのだろう。既存
の中距離核ミサイルを、ある一定の環境が揃うまでの条件で持つ可
能性がある。どこまで米国は譲歩するかが問題で、安倍首相が訪米
して、中距離核ミサイルも破棄したことが「非核化」であるとトラ
ンプ大統領に談判したが、どうなるのかわからない。

反対に停戦から終戦になるので、韓国にある米陸軍やTHAADの基地を
撤去して、大きな米海軍基地はないので米軍が朝鮮半島からいなく
なることを要求するはずである。大体、こちらは確定したようであ
る。マティス国務長官がそのように発言している。

2.三者三様の期待
中国は、朝鮮半島から米軍基地やTHAADがなくなることは、大いに歓
迎することである。そして、韓国も中国との関係を正常化できるの
で良いと思っている。米陸軍も東アジアから中東に戦力をシフトで
きるので、2正面の戦闘がなくなる。これで中東大戦争に備えるこ
とができる。

しかし、中国は北朝鮮への影響力を残すために、6ケ国協議で非核
化を協議しようとするが、米国は時間がかかるので反対するはずで
ある。前回と同じように得るものだけ取り、時間稼ぎをして、再度
核武装する可能性があるからで、北朝鮮の過去から日本も米国も大
きな教訓を受けているので、中国の提案を拒否することになる。

そして、北朝鮮も中国の強い影響下から抜け出さないと、大きな経
済発展ができない。よって、中国の影響力を削減するためにも、米
国との経済的な関係を強化して、韓国企業の力を借りて行きたいよ
うである。米国、中国、韓国、北朝鮮の思惑が三者三様であり、こ
の調整が必要になる。

しかし、平和条約の締結は、中国、米国、北朝鮮、韓国の4ケ国で
行うので日本やロシアの参加はない。このため、この時点では、日
本の思惑は考量されない。

3.日本の要求
日本の主張は、北朝鮮への戦後賠償との交換で実現させていくこと
になる。その大きな要求は、中距離核ミサイルの破棄と拉致問題の
解決であり、それがないと戦後賠償の議論ができないと要求するし
かない。

しかし、既に拉致被害者の多くは死亡している可能性がある。拉致
問題は解決しないで、戦争犯罪として戦時賠償と相殺することにな
り、北朝鮮は賠償がないので中距離ミサイルも放棄しない可能性が
ある。

そうしないためには、日本への期待値を高めていくことであり、こ
のため、日本は日朝交渉を安易に求めない方が良いと見る。そして
、拉致問題が期待はずれでも、いくばくかの賠償は行うべきである。

北朝鮮は、あくまでも米国が主導する経済制裁の解除でよく、韓国
の文大統領は、半島統一の過程として経済負担が大きいので、日本
の戦時賠償を期待する。一方、人件費が安い北朝鮮の労働力が得ら
れて、韓国の経済発展にも寄与するとみていると思う。

どちらにしても、非核化で最低のレベルの合意・核施設廃棄でも、
東アジアでの北朝鮮と米国の戦争リスクは無くなる。条件付きなど
で、後のことは交渉することになると見る。

4.日米同盟での要求
東アジアでの北朝鮮リスクはなくなるが、中国の海洋進出が一段と
加速している。南シナ海での空母大演習や台湾海峡での軍事演習な
どを行っている。

そのようなことが起こり、米国は中国に制裁関税を掛けると言い、
もう1つ、通信機器の企業への半導体売却を禁止して、中国の経済
力を削減する方向である。反対に、中国も米国先端企業の中国国内
での活動を制限し始めて、両国の貿易戦争はエスカレートしてきて
いる。米中は交渉するというが、相当に難しい交渉になる。

このために、中国の海洋進出阻止のために、日本の海上自衛隊と米
海軍は一層の増強が必要になっている。米国も中国との経済・軍事
両面で対立が激化することになるとみているので、日本との同盟を
強固にして、防衛費を2%にするように要求してくる。事実、ポン
ペオ国務長官は、EUに対して、就任後すぐに防衛費2%を要求して
いる。

日本との交渉を知っているライトハイザー通商代表部長官は、日本
との交渉では圧力が必要と、前回の日米交渉で心底知っているので
、北朝鮮の中距離核ミサイルが、日本の防衛費を増やしミサイル防
衛のイージス・アシュアを重要とすると見ているので、貿易と防衛
を一体にして、日本へ要求してくると見る。

茂木経済財政担当大臣は、覚悟していた方がよい。

4.米国経済の行方
米国経済は、10年国債金利が3%になり、直後にFRBの前と同じよ
うな不動産債権の購入で3%以下になったが、今後、車のサブプラ
イムローンの買い替えができなくなる人が多くなるようである。事
実、金利上昇で1月~3月の米消費支出は減少している。

今は、リスク・オンだと言い、金利上昇を景気が良いから当然とし
ている評論家や投資家が多いが、そのうちに、米国の景気は落ちて
くることになる。このコラムを見ている投資家はリスク中立で見て
いた方がよい。

それと同時に、米中貿易摩擦も一層熾烈になり、中国での投資が落
ちて、中国の景気も落ちてきている。事実、キャタビラーの来期予
想は、中国などの景気が落ち、かつ鉄鋼などの価格高騰で減収にな
るとしている。

米国は次の景気刺激策を徐々に準備している。それが米国福音派が
熱望している中東戦争である。イラン核合意の破棄を検討している
とトランプ大統領は米仏会談でも述べている。イランも核合意を破
棄にするなら、核開発を再開するとしている。きな臭くなってきて
いる。北朝鮮とウクライナの核・ミサイル技術者の次の就職先がイ
ランなのであろうか?

さあ、どうなりますか?



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