2634.路面電車を崩壊させた米自動車メーカー



路面電車を崩壊させた米自動車メーカーGEN
            
 ここ滋賀でも桜が満開のときを迎えました。
 今日は、行き過ぎた資本主義の実例を報告させてください。

 路面電車を崩壊させた米自動車メーカー
              平成19年(2007)4月14日(土)
               「地球に謙虚に」運動代表 仲津 英治 
 以前、「米国でも結構走っていた鉄道が、自動車会社などに買収され
て廃止されてしまった」との話を伺ったことがあります。このほどご縁
を頂いたトッテン、ビル氏((株)アシスト社長、最近米国より帰化)
からその経緯をお伺いすることが出来ました。同氏は京都在住で、日本
全国をまたに企業活動されていますが、自動車と飛行機は一切使わない
ほど徹底した鉄道利用者です。
 同氏は出身国の米国に批判的で、米国の人口は世界の5%ですが、エネ
ルギー消費量は世界の25%を占め、一人あたりの炭酸ガス排出量は年間
6トンと世界最高で、世界最大の環境汚染国であると強調しています。
この主たる要因の一つに人の移動に99%自動車と航空機に依存している
実態があります。日本では30%が鉄道の分担です。
トッテン氏によれば、環境汚染の主因として中でも燃料消費が多く大
気汚染をもたらす自家用車を主に利用していることがあげられるとの
ことです。そして以下はトッテン氏からいただいた文章の要約です。
同氏の了承を得て御紹介します。

トッテン、ビル氏
「あんなに普及していた路面電車がなくなったのはなぜなのか」と、私
の父はよくこれと同じような疑問を口にしていました。

 私は最近になって、『Corporate Crime & Violence』(企業犯罪と暴
力)という本の中に偶然その答えを発見しました。そこには、ゼネラル
モータース(General Motors以下GM)とその共謀者達が結託して、自
動車や石油、タイヤの販売によって膨大な利益を獲得しようと公共交通
機関を破壊して行った過程が、詳細に記述されていたのです。企業やそ
の経営者が私利を優先させるために行なったあくどい手口によって、社
会全体がいかに大きな損害を被ったのかが分かる一例だと思います。例
として大気汚染です。上記本の文章を紹介しながら記述を進めます。

 1970年代ロサンゼルス地域の住民の間に病気が増加してきました。心
臓や肺への悪影響はもちろん、最近の研究結果では大気中のNOxのレ
ベルと、乳癌や肺癌を含むあらゆる癌の発生率の間に相関関係があるこ
とが分かっています。

 1930年代、ロサンゼルスの空気は年間を通じていつも澄んでいました。
当時は静かで汚れを出さない3,000両の路面電車が各都市へ8,000万人の
人々を輸送していたのです。ロサンゼルスは自動車ではなく電車が発達
していたために、今よりもきれいな環境の中で栄えていたといえましょ
う。
 当時パシフィック エレクトリックという公共サービス会社が所有して
いた公害を出さない路面電車システムは、ロサンゼルスと他の56都市の
間を何千人もの通勤者を運び走っていました。現在、この鉄道はもはや
存在しません。線路は取り外され、舗装され、車体は破壊されました。
その結果、澄んだ空気は排気ガスに取って代わられたのです。

 その鉄道システムを崩壊させたのは誰かといえば、GMをリーダーと
する、石油会社、タイヤ会社、自動車メーカーなど、つまりそれによっ
て利益を受けることになった企業なのです。

 一家に一台という自動車業界の夢を実現させるためには、電気鉄道は
目の上の瘤でしかなかったのです。自動車業界は鉄道がなくなりさえす
れば、全米の都市住民が代替の交通手段を探さざるを得なくなると考え
ました。そこでGMは乗用車とバスの販売台数を増やすために、鉄道路
線の破壊を決意したのです。

 1932年GMが主導して、おおっぴらに子会社を作って鉄道会社の買収
事業を始めたので、公的機関から非難を受け、頓挫しました。しかしそ
れで引き下がるようなGMではありません。その活動を水面下で行うこ
とにしたのです。今度は外部の会社、オムニバス社と協力体制を取るこ
とにしました。また、中都市ではなくニューヨークという最大の獲物に
照準を合わせたのです。経営陣の兼任によってGMはオムニバスに多大
な影響力を与えました。ニューヨーク市の路面電車がGM製バスへ切り
替わるには18カ月しかかからなかったと言います。そして、このニュ
ーヨークが米国の電気鉄道業界の運命を決したのでした。

 この後GMは全米の何百もの電気鉄道を廃止させようとしました。そ
して、ミネソタ州でバス会社を経営する辣腕のフィッツジェラルド兄
弟に資金援助し、ガレスバーグという都市の路面電車をGM製バスに
切り替えさせたのです。フィッツジェラルド兄弟のやり方は迅速で、
効率のよいものでした。彼等はバスを走らせるためにその路面電車会
社を買収するのではなく、完全にバスに切り替えるという条件を市が
呑んだ場合に限り、路面電車の会社を買収するやり方でした。こうし
て全米の路面電車が次々とGMの餌食に係り、バスに切り替えられて
行きました。

その過程で資金難のため、路面電車の会社の買収が困難になったと
きに(何百という鉄道会社が標的になっていました)。フィッツジ
ェラルド兄弟はGMと代替策を話し合いあい、この策略で利益を得
る企業を巻き込むことにしたのです。スタンダード石油、タイヤ
会社のファイヤーストーンそしてGMの競合相手であるバス製造会
社、マックトラックが加わったところで、買収事業を進める米国都
市路線会社(National City Lines, Inc.(以下NCL)の経営基盤が整い、
次々と買収が進められて行ったのです。

彼等共謀者達は、この新しいNCLという交通機関会社を誰が操って
いるのか悟られぬように苦心しました。ファイヤーストーンは社員
の名義で投資を行ない、スタンダード石油も同様に投資会社の名義
に違う会社の名前を使用しました。

 1949年までに、ニューヨーク、フィラデルフィア、ボルティモア、
セントルイス、オークランド、ソルトレークシティ、ロサンゼルス
、サンフランシスコを含む45以上の都市で、GMは表に出ないで
100以上の路面電車をGMのバスに切り替えに成功しました。

しかし共謀者達は司直の手にかかっています。同年の4月には、全米
中の電気輸送手段をガソリンやディーゼルで動くバスに切り替え、
その交通機関へのバスや関連製品の販売を独占するために共謀罪を
働いたかどで、シカゴの大陪審はGM、スタンダード石油、ファイ
ヤーストーン、フィッツジェラルドなどを起訴し、また陪審は彼ら
に有罪判決を下しました。しかし極軽い罰です。GMと他の有罪企
業は各社5,000ドルの罰金、フィッツジェラルドと他の有罪人はそ
れぞれ1ドルの罰金で済まされ、刑務所に送られた者は一人もいな
かったのです。

 この交通機関に関するこの共謀行為により、何百万人もの市民に
利益を与えるはずだった大量交通網が破壊されました。公共の交通
機関が発達していれば、石油の海外依存度を縮小し、国家安全保障
をも高めることになったかもしれないのです。これだけ国民に大き
な影響を及ぼした犯罪者たちは、自己の利益のためだけにその行為
を行なったのです。

 GMの元社長、チャールス ウィルソンが豪語した「GMにとって
良いことは米国にとっても良いことだ」という言葉はあまりにも有
名です。しかし、公共の交通機関の発達について言えば、GMにと
って良かったことは実際には、米国に取り返しのつかない損害をも
たらしたと言えましょう。

再度以下仲津 
日本は世界最大の旅客鉄道王国です。1日6400万人も利用客があり、
世界の4割を占めます。そして私の知る限り自動車メーカーや石油
会社が鉄道会社を買収して路線を廃止させたという話は寡聞にして
聞きません。

しかし、自動車税、石油税の税収は道路特定財源に回され、自動車
依存、石油依存症の米国に近づく努力が今も続けられ、地球温暖化
を加速させています。これからの都市中心部は自動車を乗入れさせ
ない政策に変更し、乗入れしなくても済む軽便鉄道システムを整備
すべきでしょう。その財源は道路特定財源が充てられるべきです。
今鉄道会社はその公共的役割を果たしているにも関わらず、自己資
金で多くは投資を行っています。

また貨物輸送に目を転じてみますと米国は鉄道のシェアーが高く
31%もあります。日本では僅か4%です。地球温暖化防止という
視点からも配慮がなされるべきところです。
 皆様いかが思われますか。

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仲津英治
「地球に謙虚に」運動代表



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