4872.欧米が自信を無くしている



欧米の知識人たちは、脱工業化で高付加価値産業論とグローバル化
を理想として提言してきた。その結果は、欧米諸国に製造業がなく
なり、中産階級の崩壊を起こしている。

国民の10%程度の高知識人と投資家だけしか、高収入を得ること
ができずに、単に大学を卒業しただけの普通の知識人もインドなど
新興国の大学卒の知識人に置き換えられて、職を失っている。

このため、労働年齢にある米国人男性の賃金は1970年以降、インフ
レ調整後ベースで19%下落しているという。反対に、この時期、所
得階層の最上位5%の所得が急増したのである。

「金持ちがもっと金持ちになるのを容易にし、金のない人は行き場
を失うような政策が多数ある」と米国民は思い始めている。このた
め、アメリカン・ドリームについて「今はこの国の誰もが夢見られ
るものではない」となる。

米国民が貧乏になった結果、橋やハイウェイの老朽化は歴然として
いるが、問題はこれにとどまらない。アメリカの航空管制システム
も電力供給ネットワーク、飲料水供給システムも老朽化している。
米政府は財政問題を起こし、基礎インフラにも投資できないのであ
る。

このため、米国のバラク・オバマ大統領が先週行ったスピーチの内
容は、大統領就任後では最も暗い部類に入るものだった。オバマ氏
は、不平等の拡大と社会的流動性の低下について容赦なく指摘し、
それらが「アメリカンドリームを、私たちの生活様式を、そして私
たちが世界各地で支持しているものを根底から揺さぶる脅威をもた
らしている」と述べた。

脱工業化とグローバル化が原因であるが、それを逆転させる方法は
1つしかない。為替で通貨安を実現するしかないことである。

それを実現できているドイツは、製造業が元気である。通貨が安い
東南アジアや中国は、製造業が元気である。その分、米国やドイツ
以外の欧州が被害を受けている。

しかし、米国はシェール・ガスと石油の生産が拡大して息を吹き返
し始めているが、それだけでは不足のようである。

このため、米国の州知事が中国の企業へ誘致を行っているという。
中国は米国の支持を得るために、積極的に工場を米国に立て始めて
いる。その仲介に米国トップ層の政治家OBを立て、その人に金が入
るようにしている。

大変なことになり始めた。

さあ、どうなりますか?
この詳細分析を有料版で行う予定です。ご期待下さい。

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アメリカンドリーム遠のく-金持ちがもっと金持ちになる政策で
  12月11日(ブルームバーグ):誰もに平等なチャンスがある−。
そんな「アメリカン・ドリーム」への信頼が、貧富の差の拡大に伴
って失われつつある。
ブルームバーグが6日から9日にかけて実施した調査によると、成
功のチャンスはもはや平等に「与えられていない」と回答した米国
民は64%。「与えられている」とした33%の倍近かった。政府の責
任を問う声も聞かれた。
ロードアイランド州ウェスタリーに住む機械技術者のライアン・セ
カック氏(26)は「金持ちがもっと金持ちになるのを容易にし、金
のない人は行き場を失うような政策が多数ある」と話した。
カリフォルニア大学バークレー校のエマニュエル・サエズ教授によ
れば、昨年の米国民の全所得の半分以上を上位10%の富裕層が稼い
だ。
セカック氏はアメリカン・ドリームについて「今はこの国の誰もが
夢見られるものではない」と語った。
それでも、所得格差を縮めるために政府が行動すべきだとの回答は
全体の45%で、貧富の差が拡大するとしても市場に任せるべきだと
答えた46%とほぼ同じ割合だった。
更新日時: 2013/12/12 07:00 JST
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先進民主国家体制の危機
―― 改革と投資を阻む硬直化した政治
Can America Be Fixed?
ファリード・ザカリア  国際政治分析者
 フォーリン・アフェアーズ リポート 2013年2月号
橋やハイウェイの老朽化は歴然としているが、問題はこれにとどま
らない。アメリカの航空管制システムも電力供給ネットワーク、飲
料水供給システムも老朽化している。 ・・・必要なのは政府の資
金と民間資金でファイナンスされる国家インフラ銀行を立ち上げる
ことだ。そうした銀行なら、政治家による利益誘導ではなく、メリ
ットに応じて投資プロジェクトが選ばれるようになる。
先進民主世界を悲観主義が覆い尽くしている。ヨーロッパでは、ユ
ーロ圏だけでなく、欧州連合(EU)そのものが解体するのではな
いかという声も聞かれる。日本の経済も停滞したままだ。だが、も
っとも危機的な状況にあるのはアメリカだろう。停滞する先進国が
本当に必要としているのは、競争力を高めるための構造改革、そし
て、将来の成長のための投資に他ならない。問題は政治領域にある。
政治が、効率的な改革と投資を阻んでいる。その結果、われわれが
直面しているのが民主主義体制の危機だ。予算圧力、政治的膠着、
そして人口動態が作り出す圧力という、気の萎えるほどに大きな課
題が指し示す未来は低成長と停滞に他ならない。相対的な豊かさは
維持できるかもしれないが、先進国はゆっくりとそして着実に世界
の周辺へと追いやられていくだろう。今回ばかりは、民主主義の危
機を唱える悲観論者が未来を言い当てることになるのかもしれない。
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米記者、中国でビザ延長棚上げ 報道が影響?外交問題に
2013年12月11日12時33分
 【北京=林望、ニューヨーク=中井大助】米メディアのニューヨ
ーク・タイムズ(NYT)とブルームバーグの中国特派員の在留ビ
ザ(査証)延長手続きが滞っている。両社が昨年、中国指導者の親
族の疑惑を報じたことに端を発する圧力との見方があり、米中の外
交問題にも発展した。
 NYTの報道によると、中国当局は同社とブルームバーグの特派
員計約20人のビザ更新を拒んでいる。
 海外メディアの中国特派員は、原則的に毎年年末に記者証と在留
ビザの更新が求められている。
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将来に自信が持てなくなってきた西側諸国
2013.12.11(水)  Financial Times
(2013年12月10日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
西側諸国の定義とは何か? 米国や欧州の政治家たちは価値観や制
度について語りたがる。しかし、この世界に住む何十億もの人々が
重視するポイントは、もっとシンプルで理解しやすいところにある。
彼らにとって西側諸国とは、この世界において、普通の人ですら快
適な生活を送っている一角のことなのだ。
 不法移民が自らの命を危険にさらしてでも欧州や米国に入り込も
うとするのは、自分も快適な暮らしがしたいという夢があるからに
ほかならない。
 ところが、西側諸国にはまだ人を引き寄せる魅力があるものの、
西側諸国自身は自らの将来に自信を持てなくなっている。米国のバ
ラク・オバマ大統領が先週行ったスピーチの内容は、大統領就任後
では最も暗い部類に入るものだった。
 オバマ氏は、不平等の拡大と社会的流動性の低下について容赦な
く指摘し、それらが「アメリカンドリームを、私たちの生活様式を
、そして私たちが世界各地で支持しているものを根底から揺さぶる
脅威をもたらしている」と述べた。
「子供の世代は親の世代より貧しくなる」
 調査機関ピュー・リサーチ・センターが今春に39カ国で行った世
論調査で「あなたの国の子供たちは、その親の世代よりも豊かにな
れそうですか?」と質問したところ、米国では、子供の世代の方が
豊かになれるとの回答は全体の33%にとどまり、貧しくなるとの回
答が62%を占めた。
 欧州の人々はもっと悲観的だった。子供の世代の方がそれ以前の
世代よりも豊かになるとの回答はドイツでは28%しかなく、英国で
は17%、イタリアでは14%、フランスに至っては9%にとどまった。
 こうした西側諸国の悲観論と著しく対照的なのが途上国の楽観論
だ。中国では82%、インドでは59%、ナイジェリアでは65%の回答
者が、将来はさらに繁栄すると考えている。
 西側諸国の生活水準が下がっていくという話はホラにすぎない――。
そう信じることができたらどんなにいいかと思う。残念なことに、
一般の人々が真相に気づいていることはいろいろな数字からうかが
える。
 ブルッキングス研究所の研究員たちが調べたところによれば、労
働年齢にある米国人男性の賃金は1970年以降、インフレ調整後ベー
スで19%下落しているという。所得階層の最上位5%の所得が急増し
たまさにその時期に、かつてアメリカンドリームの象徴とされた「
ジョー・アベレージ」は転落の憂き目に遭っているのだ。
 これには保守派の政治家も懸念を覚えている。2016年の大統領選
挙で共和党の候補になることを目指しているマルコ・ルビオ上院議
員は、自分の両親はバーテンダーやメードというあまり高級とは言
えない仕事をしながら「中流階級に入ることができた」と述べたう
えで、今ではそういうことはもう不可能だと認めている。
 欧州における絶望感と不安感も、現実的な根拠に基づいている。
将来の社会福祉・退職関連の給付金はこれまでほど手厚いものには
なりそうにないとの認識は特にそうだ。繁栄を脅かす圧力は、債務
危機でひどく苦しんでいる国々では非常に強く、ギリシャやポルト
ガルなどでは賃金や年金が実際に減額されている。
 だが、比較的うまくやってきた欧州諸国ですら、生活水準を押し
下げる圧力にさらされている。本紙(フィナンシャル・タイムズ)
の調べによれば、英国の1985年生まれの世代は、その10年前に生ま
れた世代よりも高い生活水準を経験していない。これは過去100年間
で初めてのことだ。
 西側諸国の中で最も成功している経済大国と称されることの多い
ドイツでさえ、「メルケルの奇跡」の恩恵は主に所得階層の最上位
が享受している。現在の輸出ブームの基礎を築いた経済改革では、
賃金の引き下げと社会保障給付の切り下げ、そして非正規従業員の
採用拡大が進められていた。






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