えば、同じヨーロッパでも、「イギリスに行く」「フランスに行く」「ドイツに行く」とかなら、「いいねー」「おみやげー」という反応はあっても、「なんで?」とは聞かれないと思うんです。が、「アイルランド行きたい」あるいは「アイルランド行って来るね」と言うと、半数以上の人に「なんでそんなとこに」とか、「危ないんじゃ」とか言われました。
それで、アイルランドの旅行記を書くにあたって、「なんでアイルランドか」ってことから書かなきゃかな、と思ったのです。

がアイルランドに興味を持った最初のきっかけは、「ケルトの装飾文様」を卒論のテーマに選んだことでした。
たまたま研究室の本棚にあった鶴岡真弓先生の「ケルト/装飾的思考」という本の背表紙に一目惚れしたのです。当時は、ケルト美術関係の日本語の文献は大変少なく、文献集めに苦労しました。昨今は「ケルトブーム」とかで固いのから柔らかいのまでさまざまに発行されてて、ついつい見つける度に購入してしまいます(柔らかいの中心に)。

の時から憧れ続けていた、ケルト美術の数々、本の図版でしか見ることの出来なかった、金工品の傑作「タラのブローチ」、装飾写本の最高峰「ケルズの書」、ケルトよりもっと古い時代の、でも不思議な渦巻き文様に覆われた「タロ・ストーン」などの数々の遺物をこの目で見たい、これがアイルランド行きの大きな動機です。

さに「どこにあるのか」「どんなとこか」全く興味なかった、旅の道連れであるあきぼんは、いろいろと吹き込んでいるうちに、私以上にアイルランドに興味を持ってくれました。また他の切り口から。つまり、「妖精の産地・棲息地」としてのアイルランドに。

ここだけは絶対見たい」というところは押さえつつ、あまりぎっちりスケジュールを立てない、無駄とも見えるような右往左往をしつつの旅にしたいなと思っていました。かっこつけていえば、「ケルト的なエグザイル」を気取って。

んなこんなのアイルランド旅行。私たちにとっての「新婚旅行第2章」。ぼちぼち綴ってまいりますので、お楽しみ下さい。


愛蘭土1999日記