はじめに

■ゲームブックとは?

1980年代半ば、世界的に【ゲームブック】というものがブームになりました。 日本でもかなり出版されまして、当時本屋さんに行ったら必ずと言っていいほど【ゲームブック】コーナーが設置されていたものです。 当時中学生だった僕や友人たちも、お小遣いで購入しては貸し出しあったりして楽しんでました。

さて、ゲームブックとは何か?
大雑把な言い方をすると、ストーリー分岐型の冒険小説(みたいなもの)です。 物語の舞台はさまざまですが、だいたいは剣と魔法と怪物達が登場するファンタジー世界です。 読者はその主人公になりきって物語を読み進めるのですが、途中何らかの事件が発生すると、それに対してとることのできる行動が複数の選択肢として提示されます。 読者(主人公)はこれら選択肢の中から自分のとりたい行動を選び、指示されたページ(パラグラフ)を読みます。 これを繰り返してハッピーエンドを目指すわけです。

また多くのゲームブックでは選択肢による物語の分岐という要素だけではなく、ゲームとしてのルールも決められていました。 簡単な例をあげると、主人公に【体力点】という概念をもたせ、ゲーム開始時に決められた点数を設定しておきます。 冒険中の行動によって【体力点】は減点・加点させられ、0点になるとその場でゲームオーバーというようなルールです。 これによって、ただの読書とは違った緊張感を楽しめたのです。

今でこそ家庭用ゲーム機でもいろんなタイプのゲームはできますが、当時コンピュータを持ってない子供達にとってゲームブックは安価で、新鮮で、とても刺激的な娯楽だったのです。

■ファイティングファンタジーとは?

ゲームブックは様々な出版社から様々なジャンルの作品・シリーズが出版されましたが、 その中でも草分け的存在であり、人気が高かったのは「ファイティングファンタジー」シリーズです。

これは英国のゲーム作家である、スティーブ・ジャクソンおよびイアン・リビングストンの著作/監修した一連の作品群で、 今で言う "テーブルトークRPG" というものを1人で簡単なルールで遊べるように、という発想から生まれたもののようです。

ファイティングファンタジー・シリーズは、日本では社会思想社と東京創元社から、あわせて30作品以上が文庫として翻訳/出版されました。 本国では約60作品が出版されているようです。

「ファイティングファンタジー」シリーズは、 ファンタジー世界の不可思議さを演出する描写、雰囲気のある挿し絵、 シリーズを通して共通のシンプルかつ練られたゲームルール等、 クオリティも高く定評がありました。また「タイタン」という一つの架空世界を創造し、ファンを魅了しました。

■その後

日本でコンピュータRPGが誰もに認知されることになったのは、ファミコンで「ドラゴンクエスト」がヒットしてから、というのは多くの人が認めるところでしょう。 しかし、その少し前の時期にゲームブック・ブームのピークはありました。 ゲームブックによって「ファンタジー世界での冒険」が日本のゲームファンにとって身近なものになっていた土壌が、 「ドラクエ」以降コンピュータRPGのブームに繋がったと考えてもおかしくないと思います (まぁ「ドラクエ」の先祖をたどって行くと、ゲームブックのそれと一致してるのですが)。

最近流行ってる「ポケットモンスター」にしても「ファイナルファンタジー」にしても、 「ドラクエ」タイプのゲームであることを考えると、 ゲームブックが日本のゲーム界に与えていた影響は意外に大きいと言うのは、考えすぎでしょうか?

一方、非コンピュータゲームである ”テーブルトークRPG”もその後、流行ったようですが、 それは明らかにゲームブック・ブームの延長線上にあるものでしょう(ただし、テーブルトークRPGこそ、ゲームブックの先祖にあたるわけですが)。

それと、トレーディングカードゲーム「マジック・ザ・ギャザリング」。 あの何とも雰囲気のあるイラストと文章は、 僕らが「ファイティングファンタジー」シリーズで感じていたものと同質の味わいがあると思います。

■ゲームブックとの再会

現在、"名作"と言われたゲームブック達は普通の書店では入手困難な状況です (もしかしたら取り寄せできるかもしれませんが、店頭で目にすることはまずありません)。
僕は2〜3年前に、出張先のホテル近くの古本屋でゲームブック達と再開し、 懐かしさのあまり購入してしまいました。 そして最近になってインターネット上で、まだまだこの世には根強くゲームブックファンが存在してることを知りました。

そんな皆さんの心のやすらぎ(と僕自身の自己満足)のために、このページをつくり始めました。

1998年5月22日
1998年8月14日 一部加筆、修正


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Written by. Akibon