『少年ケニヤ』は和製ターザン

 その昔、私の小学生時代、アフリカは現在の宇宙と同じように未知の世界であった。
強い獣が弱い獣を食べて生きる弱肉強食の世界。草原にはライオンやチータ、水辺に
はカバやワニ、密林には豹やゴリラが獲物をねらって待ち構えている。人間は素手で
は彼らとは闘えない。かといって、ライフルで遠くから狙い射つのは卑怯だ。ナイフもし
くは槍で、猛獣とサシで勝負しなけりゃ男じゃない。そんな私の思いを満足させてくれた
のが、『ターザン』だった。人間が誰も踏み込んだことのない秘宝の谷、行く手を阻む言
葉の通じない首狩り族や凶暴な野獣、欲望のままに行動する悪い白人、ジャングルの
平和を守って戦うターザン。それがテレビで見られる。ターザンは白人だが、同じような
活躍を日本の少年が行う。『少年ケニヤ』は、最も期待した番組だった。

 『少年ケニヤ』の原作は山川惣治。私が生まれる前年の1947年に、紙芝居から絵
物語にして単行本化した『少年王者』を発表し、35万部を超える大ヒットを生み出した。
これにより絵物語ブームが起こり、密林冒険物が巷にあふれた。『少年ケニヤ』は、『少
年王者』に続く、少年ターザン物の第二弾だった。

 少年ケニヤの本当の名は村上ワタル。動物調査のためケニヤの奥地を調査中、密
猟業者に飛行機を撃墜され、ワタルは父の村上博士と離れ離れになる。マサイ族の
大酋長ゼガを危難から救い、悪い呪術師に利用されていた金髪の美少女ケイトを救
い、父との再会を求めてケニヤの広大な原野や、鬱蒼とした密林でワタルたちの活躍
がはじまる。

 猛獣との闘いは全くなく、使い回しによる動物たちのシーン(草食動物の群れが、何か
に驚いて一斉に駆け出すシーンや、ワニの群れが水に飛び込むシーン等)ばかりだった。
大蛇のダーナとの絡みもなく、ケニヤに率いられた象の大群が首狩り族の村を襲うシー
ンもあるはずがなく、当初の期待は完全に裏切られた。ピグミー族は、子役が黒いドーラ
ンにヒゲを付けて、セリフは大人が吹き替えるという代物で、腹を抱えて笑ってしまった。
それでも毎週見ていたのは、ケイトの魅力だった。彼女に似た女の子がクラスにいて、憧
れていたんですよ。

 少年ケニヤ役は山川ワタル。原作者の山川惣治の山川と、ケニヤの村上ワタルのワ
タルを取って命名。子役時代の谷隼人が出ていたのを知ったのは、ずっと後のこと。
山川ワタルは、1966年の東映映画『黄金バット』(監督:佐藤肇)でお目にかかったが、
ケイト(関みどり)には、他の番組では全くお目にかかっていない。ブクブク太ったオバハ
ンが出てきたら幻滅するので、かえってその方がよかったのかもしれないね。

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