王子というところで生まれた僕 は、当然のことながら王子小学校 へ通うことになるんですが、小学 校の正門の前に『よだ屋』という 飲み屋があったんですね。学校の 前が飲み屋という、とてもいい環 境の学校だったわけです。 さらによいことは、ランドセル を背負って正門を出てくるとすで にお酒の匂いがプーンとしてくる。 小学校ですから、遅くたって4時 頃には「みなさん、早く帰りまし ょう」なんぞという放送が流れて 下校しなければならない。その頃 すでに開いてる、非常によい飲み 屋だったわけです。 さすがに冬は表の引き戸を開け ておくことはなかったけど、夏は 引き戸を開けっ放しにしておくん ですね。学校の帰り、縄のれん越 |
しに中を盗み見すると決まって一 人のオヤジが、それも同じ席でい つも飲んでいるんです。このオヤ ジを小学校の生徒たちはみんな知 っていました。なぜ知ってるかと いうと、僕たちの学校の先生なの ですから。 生徒が帰る頃に、もう学校の前 の飲み屋で飲んでる。なんて素晴 らしい先生なんでしょう。朝など、 教室に入ってくるとお酒くさいと きもあったそうです。ただお酒を 飲んでも問題を起こさないところ がプロフェッショナルですね。 で、この先生、野田先生という のですが、『よだ屋』でひたすら 飲んでいたのがホッピーでありま した。 「おーい、ホッピーまだかぁ!」 通りまで先生の声が聞こえまし |
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た。 こんな先生、今じゃすぐPTA が問題にするんでしょうね。『よ だ屋』で飲んだくれてる先生を見 ても、親たちは「また、やってる よ」とニヤニヤ笑ってた古きよき 時代のお話でした。 |
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